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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第三章

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夜の囁き ― 焦熱の大地で揺らぐ影

〈帝国領・火裂谷外縁前線キャンプ / 深夜〉


火山灰が降り続ける夜。

赤黒い空気はゆらりと揺れ、まるで大地そのものが呼吸しているかのようだった。


焚き火の灯りが揺れ、兵士たちが交代で見張りに立つ。


レオン(ノエル)は一人、キャンプ外縁の高台に立っていた。


風は熱く、夜であるはずなのに空気は冷えない。


クラリスが静かに近づき、薄い外套を肩にかける。


「旦那様……いえ、ノエル様。

 眠ってはおりませんの?」


レオンは火山の影へ視線を向けたまま答える。


「眠れそうにない。」


クラリスは彼の横に並ぶ。


「……影、ですか?」


レオンは短く息を吐いた。


「影は、ここでも“呼んで”いる。」


火山風に混じる黒い囁き声が、ほんの一瞬、耳に触れた。


> ――きこえているのだろう、不死の王。 ――また会える。深き炎の底で。




クラリスの指が、剣の柄に触れた。


「……声が?」


「ああ。

 氷鎖峡谷の時と同じだ。

 だが――今回は“明確に俺を呼んでいる”。」


クラリスの瞳が揺れる。


「旦那様……

 影はあなたを奪おうとしているのでは?」


レオンは静かに首を振る。


「奪うつもりなら、あの夜で十分だった。

 今回は――“誘っている”。」


クラリス: 「……まるで。」


レオン: 「まるで、俺に“見せたいものがある”かのようだ。」


焚き火の明かりが揺れ、

“影”が地の底からうねり上がるように見えた。



---


「おーい! ノエル様ー! クラリースー!」


イリナが片手にぐでんぐでんに溶けた氷袋を持って駆けてくる。


「水、冷やしてきたヨ! ほらほら、飲んで!!

 ただし半分蒸発してるヨ!!」


クラリス(小声): 「……本当に空気を変えるのが得意な人ですね。」


レオンは小さく笑い、受け取った水袋を口に運ぶ。


「助かる。」


イリナの顔が一気に輝く。


「でしょ!?」


クラリス(じと目): 「はいはい、良かったですわね。」


イリナ(むーっ): 「なんでいつもそういう感じなの~!!」


二人のいつものやり取り。


だが――

その瞬間。


レオンの視線は、火山の中心を射抜いたまま動かない。


クラリスとイリナは、気づく。


「あ……また、“見てる”んだ。」


「呼ばれてる。だよね?」


レオンは、静かに頷いた。



---


「明朝、火裂谷第二層へ進む前に――

 影の発生点を一度探る。」


クラリス: 「危険です。」


レオン: 「わかっている。だがこれは、俺にしかできない。」


イリナは笑わなかった。


「……ついてくヨ。

 ノエル様を一人でそういうところに行かせるとか、ないから。」


クラリスもうなずき、微笑む。


「当然ですわ。」


三人の影が、赤い夜に伸びる。


その光景は、

まるで 運命に挑む“英雄の背中” そのものだった。


いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、帝国首都ヴァルハイド・飛行滑空艇格納庫前

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