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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第三章

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142/165

飛行滑空艇ヴァーミリオン・ウィング》

〈帝国領・紅炎上空〉

赤熱した地平を見下ろしながら、滑空艇は滑るように飛行していた。


甲板の前方では――

アリアとミュリオが並んで風を受けていた。


アリアは落ち着いた声で、船体振動の周期を指で示した。


「……やっぱり、前回と同じね。  火の魔石が推力層を作って、風の魔石が揚力と姿勢制御を補ってる。」


ミュリオは興味深げに頷く。


「つまり魔石の“熱膨張差”が推進力……。  でも、あの速度で安定してるのは――」


「――船体骨格内部に、地脈の流れを模倣した魔導回路があるから。」


「おお……やっぱりキミは天才だな、アリア。」


アリアは照れもせず、さらりと続ける。


「ただし欠点がひとつ。  この設計、影の乱流に弱い。」


ミュリオもすぐに理解し、目を細める。


「推進層が乱れると、揚力が崩れる……つまり――」


「――墜落ね。」


その瞬間、

背後から落ち着いた声がした。


「優秀だな。」


振り返ると、

帝国使節団筆頭 ライゼン・ヴァルハルト卿が立っていた。

その隣には黒衣の魔導士 ミュゼ・ファランカ。


ミュゼはアリアを真っ直ぐ見つめる。


「あなた。以前、氷の聖樹で“虚界の波紋”を解析したと聞いたわ。」


アリアは軽く頷いた。


「ええ。あれは“影核”由来の歪みだった。  ……たぶん、炎の聖樹にも同じ現象が来る。」


ミュリオが付け足す。


「影が“火の地脈”に干渉すれば、

 噴火の形で外界に噴き出すはずだ。

 その前に止めなきゃいけない。」


ライゼンは腕を組む。


「――帝国軍もそう見ている。  だが、我々には“影に対応できる兵装”がない。」


ミュゼが静かにレオンへ視線を向けた。


「だから――あなたたちが必要。

 “虚界と影”に対抗できる者。」


レオンは風に揺れる黒髪を押さえ、淡く笑った。


「ならば、共に進もう。」


クラリスが優雅に一礼する。


「旦那様の剣は、必ず影を断ちますわ。」


イリナは星槍を肩に担ぎながら、にひっと笑う。


「いいじゃん!

 一緒に燃えるシチュエーションってヤツだね!」


セリオは甲板の端で震えていた。


「ボクは燃えたくないですぅぅぅ……!」


カイルが背中を支える。


「……生きるぞ、セリオ。」



---


そして――


アリアが、風の流れがわずかに乱れるのを感じた瞬間。


セリオの肩が跳ねる。


「……くる。

 影、上空から――!」


滑空艇に沈黙が落ちた。


影乱流、近い。


空の戦場がもうすぐ幕を開ける。



いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、緊急着陸 ― 火裂谷キャンプ、灼熱の前線へ

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