帝国南領・前線キャンプ「紅炎の壁」
夜明け。
赤い朝日が火山地帯を照らし、乾いた風が布陣された陣幕を揺らしていた。
帝国軍の前線拠点――紅炎の壁。
黒鉄で造られた城壁と、火山灰で黒く染まった旗が並ぶ。
レオン一行は、帝国軍指揮幕へ案内された。
ミュゼが軍用地図を広げながら説明する。
「この先は“火の裂谷”地帯。
聖樹イグニアはその中心――《紅炎冠の聖堂》に眠っている。」
クラリスは一同の装備を確認しつつ静かに言う。
「旦那様。熱風が強まっております。
水分補給と呼吸法を忘れずに。」
「大丈夫だ。心配してくれてありがとう。」
クラリスはほのかに頬を染める。
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ミュリオは携行ケースを開き、何種類もの瓶と触媒を並べる。
「これが例の応急処置用――
影の黒炎の侵食を“遅らせる”効果がある。
飲んだら喉が焼けるけど、死ぬよりマシ。」
セリオ、震えながら瓶を見る。
「の、喉が焼ける……ですか……?」
イリナ、既に二本目を口にしている。
「オーッ! カラダの中あっつい!! これ強くなれる感じ!!」
ミュリオ
「ちょ、待って! 一日一本!! 馬鹿か君は!!!」
イリナ
「だいじょうぶだいじょうぶ☆」
クラリス(殺気微増)
「だいじょうばないでしょう?」
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レオンは、ミュリオが触媒の配置を終えたのを見計らい、穏やかに声をかけた。
「昨日……“レイブンさんもそうする”と言っていたな。」
ミュリオは手を止め、少しだけ表情を曇らせる。
「……ああ。」
「彼は、強い仲間なのだろう?」
ミュリオは息を吐く。
「レイブンさんは“七星騎士団《暁刃》”。
――最前線で戦ってきた人だ。」
イリナ、誇らしげに胸を張る。
「七星の中でもガチの本物だヨ。
レイブン様は“斬り伏せた数”じゃたぶんトップクラス。」
カイルは少し目を伏せる。
「でも……今回の水の聖樹では……」
ミュリオは言葉を継いだ。
「負けたんだ。
“十二魔導将・第八位 ヴェル=オルグ”に。
その時……レイブンさんの弟子が重傷を負った。」
レオンのまなざしが深く沈む。
(戦いの果てに、また“奪われる”ものが出たのか……)
アリアは短く補足する。
「その“十二魔導将”は、氷の地であなたたちが遭遇したイスカリオスと同じ階級。
――つまり、“影の根”は確実に覚醒へ向かっている。」
クラリスが剣の柄に手を添え、静かに誓う。
「旦那様……今度こそ、影を断ちましょう。」
レオンはうなずいた。
「必ずだ。」
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外から、低く重い太鼓の音が鳴り響いた。
帝国軍兵
「前線部隊、出陣準備――! 火裂谷に展開せよ!」
イリナは槍を肩に担ぎ、
「よっしゃあああ!! 影ぶっ飛ばしツアー開始ぃ!!」
セリオ
「それ観光みたいに言うのやめてぇぇ!!」
カイル
「……師匠、声デカいです……」
レオンはマントを翻し、前を向いた。
炎の聖樹イグニアへ――
影の根を断つために。
いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、飛行滑空艇ヴァーミリオン・ウィング》




