帝都ヴァルハイド・夜の食堂
〈帝国首都ヴァルハイド〉
火山風が吹き下ろす夜でも街は明るく、赤い灯りが揺らめいていた。
ミュリオは重い足を引きずり、ようやく一軒の食堂に入る。
「……疲れた。飯……とにかく飯……」
火の国特有の香辛料と焼き肉の匂いが空腹を刺激する。
席に腰を下ろし、スープを頼んだ瞬間――
「ミュリオ?」
その声に、肩が跳ねた。
振り返ると、金の瞳が静かにこちらを見つめていた。
アリア・フェンリス。
「アリア……久しぶりだな。」
アリアは頷き、ため息をつく。
「あなた、来ると思っていたわ。
影の黒炎を解析できる錬金術師なんて、限られているもの。」
ミュリオは苦く笑う。
「まぁ……そういうこと。」
---
アリアと同じ席で食事をしていた数名が振り向く。
淡い微笑を浮かべた女性――クラリス。
「アリアさんのお知り合い……ということでしょうか?」
優しげな青年――**レオン(ノエル)**が穏やかに会釈する。
「はじめまして。私はノエル。絵を描きながら旅をしている。」
そのすぐ横で、椅子を逆向きに座って肘をかけている少女――イリナ。
「おー、はじめましてミュリオ!
アタシはイリナ! 七星騎士団の槍担当!……元気担当でもある!」
ミュリオ「うわ、テンション高いなこの人!?」
イリナ「褒め言葉ってことでOK!」
セリオは湯気の出るお茶を抱えながらお辞儀した。
「ぼ、僕はセリオ・カーヴァインです……! あの、よろしくお願いします……!」
カイルは控えめに会釈。
「カイル・ヴァン・ハルド。……イリナ師匠の弟子です。」
ミュリオはポカンと口を開いた。
「……すげぇメンツと一緒に食ってたな、アリア。」
アリアは淡々と返す。
「ええ。これから“炎の聖樹イグニア”へ向かう仲間たちよ。」
ミュリオの手が止まる。
「……ってことは。」
レオンが静かにうなずく。
「“影の根”は次、炎を侵す。」
ミュリオは息を吐き、真剣な目になる。
「水の聖樹ブルーリヴァーで――俺たちは一度、負けかけた。
影の黒炎は、普通の武器じゃ防げない。
解析の結果、あの炎は“生命波長の反転燃焼”だ。」
アリアは席に手を置く。
「つまり、対抗するには――」
ミュリオ「“清浄の炎”の再現が必要だ。
……俺が来た理由、それ。」
クラリスが息をのむ。
「まさか……あなたが、その術を?」
ミュリオは軽く笑った。
「“完璧”じゃない。
でも、応急処置ならできる。
影に噛まれても、即死せずに済む程度にはな。」
イリナは拳を突き上げる。
「おー! そりゃ超・重要・参加メンバーじゃん!! 最高じゃんミュリオ!!」
ミュリオ「やめて! 肩バン禁止!!」
セリオ(小声) 「……仲間が増えた……心強いです……」
レオンはゆっくりと手を差し伸べた。
「共に来てくれるか。」
ミュリオはその手を、しっかり握った。
「レイブンさんも、きっとそうすると思うからな。」
---
翌朝。
帝国軍より招集の号鐘が鳴り響く。
火の聖樹イグニアを目指す旅路――
ここから始まる。
いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、帝国南領・前線キャンプ「紅炎の壁




