表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/165

皇女アメリア視点 ― 炎都の夜、揺らぐ心

〈帝国首都ヴァルハイド・紅蓮宮/皇女私室〉

夜。窓の外では火山風が赤い砂を巻き上げ、

遠くの噴火口が低く唸っていた。


アメリアは薄い外套をまとい、

静かに炎水晶の灯りを見つめていた。



---


――ノエル殿。


あの人は確かに笑っていた。

穏やかに、優しく、誰かを導く者の笑みで。


けれどその瞳には、

燃え尽きない“影”が宿っていた。


長い旅の果てに

多くを失い、それでも歩く者の目。


私は知っている。

炎を背負う者ほど、独りになる。


父も。兄も。

帝国の玉座は、いつだって孤独を強いる。


だから私は――

「引きずり下ろす」でも「縋りつく」でもなく。


隣に立ちたい。



---


アメリアは机に広げられた古地図に目を落とす。


炎の聖樹イグニア。

その大地を今、影が侵しつつある。


国土は広い。

軍勢は強い。

威光も資源もある。


だが――


“影”は、力では砕けない。


あの黒い浸食は、

人の心の隙間に染みるように広がる。


炎で焼こうとすれば、より深く沈み、

刃で切れば、断面から広がる。


帝国は強い。

けれど、強さだけでは届かない領域がある。


そのことを、私は初めて理解した。



---


――だから、ノエル殿は必要。


あの剣は「正しさ」のためでなく、

「赦し」と「救済」のために振るわれる剣。


あの人は、それを知っている人だ。


彼が“本当は誰なのか”

私は、薄々感づいている。


王国でも語られる、神話の残り火。

影と対の存在。


不死王レオン。


けれど、名前は問題ではない。


それが彼の「呪い」であるなら。

私は、その名ではなく――


今を生きる “ノエル” を見続ける。



---


アメリアはそっと目を閉じ、

胸の前で手を組んだ。


「……お願いです。

 炎の聖樹を……この国を救いたい。」


そして、声にならない言葉を続ける。


「どうか……

 あなたが、また独りで抱え込まぬように。」


燃え続ける火の都の夜に、

静かな祈りが溶けていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ