皇女アメリアの謁見 ― 炎の玉座と静かな対話
〈帝国首都ヴァルハイド・紅蓮宮〉
火山石と金の柱で飾られた、帝国でもっとも荘厳な宮殿。
ノエルたちの準備が整ったその日の夕刻、
宮廷より一通の使令が届いた。
「帝国皇女アメリア殿下より、ノエル殿への謁見要請です。」
クラリスがピタリと動きを止める。
「……殿下“お一人に”ですの?」
使令官は淡々と頷いた。
「はい。他の方はお控えください。」
イリナの眉が跳ね上がる。
「えっ、いやいやいや!?
レオン様――じゃなくてノエルはウチらの隊長だよ!?
単独って何それ危険じゃない!?」
クラリスは笑顔のまま殺意100%。
「殿下が何をお考えでも、旦那様は渡しませんわ。」
セリオ(震えながら)
「なんか……女子の戦場のほうが怖いですぅ……」
アリアは小声で分析する。
「……“個別に会いたい”ということは、
ノエル様の正体に“薄く気づいている”可能性が高いわ。」
レオンは静かに頷き、皆をなだめる。
「心配するな。すぐ戻る。
待っていてくれ。」
クラリス & イリナ(完全に同時)
「もちろんですわ / もちろんダヨ!!」
再び火花。
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紅蓮宮・高天井の回廊を進むと、
奥の広間で一人の少女が佇んでいた。
白銀の髪。炎を宿した琥珀の瞳。
気品はあるが、威圧感ではなく“静かな強さ”を纏っている。
帝国皇女――アメリア・ヴァルハイド。
彼女は振り向き、微笑んだ。
「初めまして、ノエル殿。」
ノエル(レオン)は丁寧に礼を返す。
「こちらこそ、光栄です。殿下。」
アメリアは近くの炎水晶に触れながら言った。
「……あなたは、“ただの画家”ではありませんね。」
レオンは微笑を崩さずに返す。
「人には、過去も事情もあるものです。」
「ええ。私も、そう思います。」
アメリアの視線は、刺すような観察ではなく――
“知ろうとしている”人のものだった。
「この国は今、炎の聖樹が軋むことで揺らいでいます。
ですが……それでも私は、“守りたい”のです。
帝国という家を。ここに生きる人々を。」
そして、真っ直ぐに告げる。
「だからお願いです。
――私の手を借りてください。」
レオンの瞳がわずかに揺れる。
「……帝国は、王国を敵と見ているはずでは?」
アメリアは、首を横に振った。
「戦う理由は、もうありません。
“影”という共通の敵がいるのだから。」
静かに広場の炎が揺れ、影が淡く伸びる。
「私は、力や名声より――未来を選びたい。」
レオンは、短く息を整え、応える。
「……その願い、確かに受け取った。
共に行こう。殿下。」
アメリアはほっと微笑んだ。
「ああ……よかった。
やっぱり、あなたは“光”の側の人だ。」
その言葉は、“不死王”ではなく
“人”としてのレオンに向けられたものだった。
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謁見を終え、外へ戻ると――
クラリスとイリナが、並んで待っていた。
(※仲良く待っていたわけではない)
クラリス(優雅な微笑・背後炎のオーラ)
「遅かったですわね、旦那様?」
イリナ(ジト目・尻尾はないのにブワッと膨らんだ感)
「なーに話してたのかなー? あれかなー? 内緒話かなー?」
レオンはため息のように、静かに笑う。
「……準備が整った。明日、出発する。」
クラリス & イリナ
「はい、旦那様! / 了解だヨ!!」
セリオ(小声)
「……マジで頑張ってください……」
アリア(真顔)
「これもう魔族より人間関係のほうが試練よね。」
火の都に夜が降りる。
炎は揺れ、影もまた揺れる。
だが、一行の進む先は定まっていた。
> ――炎の聖樹イグニア。影の根の震源へ。
いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、皇女アメリア視点 ― 炎都の夜、揺らぐ心




