11話 敦盛 (其ノ参)
日暮れ、パラパラと小雨が降って来た。
「藤吉郎と、権六はおるか!!、他の者は下がって良い」
信長が縁側に出ると、館の庭から、藤吉郎が出て来た。藤吉郎は、かしこまった様子で、庭の砂場に片膝を付いている。
権六も、控えの間から縁側を伝って、信長のそばに参上して来た。
「うむ」
信長はうなずくと、権六と藤吉郎に向かって話し始めた。
「実は、この藤吉郎は今川の間者でな。」
え?????? そもそも、何を言っているんだ、、、、藤吉郎が今川の間者〜〜〜〜?????
権六がすかさず、脇差に手をかけて、藤吉郎に斬りかかろうとした。
それを、手で静止する信長。
「あいや!これは参りましたな!お見通しとは恐れ入りだぎゃー!!」
藤吉郎は悪びれもせず、額をこすりながら、信長を真っ直ぐ見つめた。
「そなたに一仕事与えようと思ってな」
信長は、藤吉郎の反応に驚く様子もなく、話し始めた。が、
流石に、権六が割って入った。
「殿! うつけげ過ぎまするぞ! 敵方の間者に仕事を任せるなど!このお国の一大事に、言語道断でござる!!!」
信長は眉一つ動かさず、権六をスルーして、話を続けた。
「今川義元は、沓掛城まで来ておる。我らは、少数の兵力しか持たぬ故、奇襲にて今川義元を討ち取りたい。
そのために最適な場所は『桶狭間』じゃ。桶狭間は隘路ゆえ、多くの兵が通れない。ただ、海道一の弓取と言われた、今川義元がそんな隘路に陣を移すとは考えにくい。今川義元を隘路におびき出す餌が必要じゃ」
信長は、最高軍事機密とも言うべき作戦内容を、敵方の間者である藤吉郎に話し始めた。
(マジか。。。。。やっぱ、信長って、、、頭おかしいのか。。。。。)
藤吉郎は、黙って、話を聞いているが、話を聞くうちに、その目が爛々と輝いて来た。
「藤吉郎よ、そこで、お主が『餌』を持って、桶狭間に行き、義元をおびき出すのだ」
信長は、『餌』と言うところで、なぜか、俺の方を指差した。
え?????? ん??????
ええええええええええ
まさか、餌と言うのは、俺のこと??????
「面白そうだぎゃー一世一代の大芝居、この藤吉郎、しかと大役仰せ使った!!!」
こらこらこらこら、、、、なぜ、そこでOKする????
「若様!!!流石は信長様の御子息で御座いますな!!!!自ら囮の役を買って出られるとは!この権六、地獄までお供つかまつります!!!」
ちょっと待て、なぜ、誰も止めない??????
「では、藤吉郎、権六、そなたたち2人にこの奇妙を預ける故、桶狭間に丑の刻に義元をおびき出して参れ」
藤吉郎と、権六の二人はかしこまった様子で、
藤吉郎は今川方の侍の格好に着替え、権六は今川方の足軽に変装し、権六が俺を担いで、
今川の陣に向かい始めた。
俺は何とか逃げようと足掻いてみたが、3歳児の肉体で逃げ切れるはずもなく、
体力が尽き、グッたりした状態で、敵陣に運ばれて行った。




