10話 敦盛 (其ノ弍)
敦盛の舞が一区切りついたところで、権六が声を上げた。
「信長様。若君をお連れ申した。」
「であるか。」
「若君は、出陣前の信長様にご挨拶されたいとのこと。」
「であるか。権六。人払いをいたせ。儂は奇妙丸と2人で話がしたい」
権六は、近くに居た小姓たちに声をかけて、奥の間へと去っていった。
俺は、信長の部屋に入れずにいると、声をかけられた。
「部屋に入るが良い」
俺は、黙って、部屋に入った。
「して、お主は何者じゃ?」
俺は、一瞬頭が真っ白になって、何を問われているのか、さっぱり分からなかった。
信長は重ねて問う。
「お主は何者じゃ?」
「わ、わ、私は、私は、き、き、奇妙丸で、御座います」
「ほう。奇妙なことを申す。奇妙な事を申す者が奇妙丸であれば、その通りであろう」
もしかして、信長は俺が転生して来た事を知っている????
いや、そんなはずはない。転生のことを今まで気づかれたことはなかった。。。。。
俺は、全身に汗が滲み出るのが分かった。。。。
俺は、これ以上隠し立てすることは出来ずに、
「わた、わた、私は、、、、未来から生まれ変わって来ました。。。。」
言ってしまった。。。。。。
「であるか」
信長は、特段驚いた様子もなく、ただ、真っ直ぐこちらを見ている。
「儂は、どうなる?」
唐突な問いに、答えが見つからない。。。。。
今川と戦のことを聞いているのだろうか。
「勝ちます。」
咄嗟に出て来た答えが、それだった。
「儂は、いつ死ぬ?」
「本能寺で、、、、50歳を前にして、、、明智光秀に殺されると、、、、歴史の授業で習いました。。。」
「であるか」
信長は、部屋の天井に視線を移すと、しばらく、天井を見つめていたが、
おもむろに立ち上がり、再び敦盛を舞いはじめた。
「人間五十年〜〜下天のうちを比ぶれば〜〜滅せぬもののあるべきや〜〜」
俺は、ただ、繰り返し続けられる舞を、そばでじっと見ていた。




