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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
38章.神殿再建(3)ランデル攻防戦(1)

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38-16.ランデル防衛戦(11)防衛戦(4)西門攻防戦(2)投石器接近

挿絵(By みてみん)


この日、夜遅くに、遂にラハイテスの元に敵の大型兵器らしきものが接近中の情報が入った。

急遽、指揮官クラスを集め、緊急対策会議を開く。


大型兵器と思われる物は、もう既に隣国まで来ている。

※隣国と書いてますが、ランデル同様小国なので、かなり近いところまで来ています。


場合によっては、即出撃の必要が発生する可能性がある。


こんな夜中でも短時間で皆集まる。


ランデルの指揮官達は、ここ数日の敵の消極的とも思える攻撃に違和感を持っていたので、当然、何かが起きても不思議は無いと考えていた。


メンバーが集まると、いきなりラハイテスは本題に入る。

「偵察隊から報告があった。大型の兵器のようなものが運ばれてくるようだ。

 見たものを説明してくれ」


偵察兵が説明を始める。

「なんらかの攻城兵器と思われる何か、おそらく投石器のようなものを運んでいます。

 数は不明ですが4基以上と思われます」


その後も直接見た偵察兵に話を聞くが、”丸太で作られた大型の何か”であること、”なんらかの攻城兵器と思われるもの”であり、”おそらく投石器”というだけで変わらなかった。


見た目は加工された丸太。

ただの丸太を手間隙かけて運ぶ意味は無いので、丸太で作られた何かということになるが、丸太の建物なら現地で作った方が早い。


わざわざ運ぶからには運ぶ価値のあるものとなる。


----


それが何であるかは別として、ラハイテスやカヤハルのような地元組には目撃地点がすぐに特定できる。


隣国は警備が甘く、偵察しやすいが、その先までは進めないため、発見地点はある範囲に限られる。

必然的に比較的近い場所となる。


大きなものが運ばれてきたとしても、結局、気付くのはその付近まで来たときとなってしまう。

それでも、このタイミングで発見できただけ良かったと考えるべきか。


ランデルも、少し前まではデルデ陣営だった程なので、ランデルより西側の国は、基本、デルデ陣営に属している。

デルデ陣営は、連合に対抗するためにハスクバハルを中心として作られた同盟で、ランデルを含む辺境国家は、基本、デルデ側か連合側の勢力に属している。


辺境国家は、”連合とデルデのどちらに属す方が安全か”というのが主な判断基準であり、辺境国家同士は異なる勢力に属していても、それを理由に積極的に戦うことは無い。

※自国を守りたいだけ。見逃した方が平和であれば見逃すという選択をします。


なので、隣国はランデルとの戦闘で被害が出るのを嫌い、少数の偵察兵をしつこく追い回しはしない。

そのおかげで、隣国のある程度のところまでは侵入できるが、偵察兵が行けるのはそこまで。


その先まで行って挟み撃ちになると詰むので、そこまでしか進まない。

※確実に捕まるか殺されるかする……と言うほどでは無いのですが、

 通常の偵察では、その可能性が高い場所までは行きません。


----


”偵察兵が攻城兵器、おそらく投石器のようなものを運んでいるのを見た”。

ここまでは単なる事実だとして、このタイミングで投石器が届いてしまうというのは、ランデル側の指揮官たちにとっては完全な想定外だった。


「投石機だとしたら厄介だ」


「あの空き地が、それを置くためのスペースだとしたら……」


そう考えた方がつじつまが合う。


普通に考えて、ランデル攻めに攻城兵器は必要無い。

頑丈な城壁など無い小国家に対して、手間をかけてそんなものを持って来る意味が無い。

だが、持ってくるとすれば、投石器だろう。

スワレンはそう考えた。

「投石器だろうな」


「あの距離から届くのか?」


スワレンは、大型の物であれば300歩(おっさん基準で200m程度)と聞いていたが、そこまで大きなものでは無いようなので、その飛距離は無いだろうと考えるとともに、比較的小さめの石を飛ばすものであれば、

遠くに飛ばせるとも聞いたことがあった。


「城壁を破壊するほどの大きな石は届かないが、人の頭ほどの大きさの石であれば届くのやもしれん」


小さめと言っても、人間の頭ほどの石。

城壁を破壊する程では無いという大きさであって、ランデルの土壁では耐えられないだろう。

土壁を壊す大きさであれば、重装兵も耐えられない。

重装兵が突破されれば、ランデルは即陥落する。


「まずいな、放置というわけには行くまい」


そう考えるのが普通だろう。


だからこそ、そこに疑問が生まれる。

「罠かもしれん」

「罠?」

「運んでいるのは投石器ではない可能性がある」


「なるほど、投石器を運んでいると見せかけて、奇襲をかけさせる」

カヤハルは”なるほど”と言ったが、指摘されて気付いたわけではなく、相槌を打っただけだ。


ラハイテスは、もう一歩進めて考える。

攻城兵器を運んでいると見せかけて、奇襲を誘い待ち伏せで打撃を与える。

確かに、あり得ない話では無いが、奇襲をかけてきたところを返り討ちにすることが目的であれば、もっと前にその存在に気付きそうだ。

もっと大々的に投石器が来るという情報が流れてくるのではないかと考えた。


おそらくは、慎重に隠しながら運んできたから、こんなに近くに来るまで気付かなかったのだ。


「奇襲を誘うにしては、発見時期が遅いように思える。

 そう考えると本物かもしれない」

ラハイテスが言うと、スワレンがこう続ける。

「その可能性があるから、罠が成立する」


確かにその通りだ。

偵察兵が見た距離からでは真贋の見分けはつかないし、そもそも本物を見た事がない。

偽物である可能性は高い。


「本物にしては、届くタイミングが妙だ」


これは皆がそう感じていた。


なぜこのタイミングで届くのか

これは完全に誤算だった。投石機に対する備えがない。


ラハイテスたちは、投石器という兵器の存在は知っているが、攻撃を受けたことはない。

ランデルは、こんなものを使わずとも落とせる。

運んでくるだけ無駄だ。


だが、今は状況が異なる。投石器が有効な状況だ。

投石機無しで20日耐える予定が、投石機が来たらそれが縮まってしまう。


「本当に投石器なのか?」


「ランデル攻略に投石器以外の兵器は必要無いだろう」


確かにそうだが、投石器無しでも攻略できると考えるはずだ。

時間をかければ、さほど大きな損害無しに落とせると考えるはずだ。


「なぜ投石器など……」

「用心して持ってきた?」

これで思い当たる。

敵が竜と戦うつもりだったとしてら?


「竜でも出ると思ったか」

「投石器で竜に対抗できるとでも?」


竜に通用するかどうかは別として、運んできた理由が竜に対抗するためであれば、それはあり得ない話でもないように思う。


ラハイテスはどうせ竜を呼ぶことはできないのに、敵は竜に備えて投石器を運んできた可能性がある。


「仮に、本物の投石器だとした場合、どうなるか」

「人間の頭ほどの石を投げられたら、重装兵は耐えられない」


「設置後に破壊できると思うか?」


投石器の射程がある程度あれば、陣地内から攻撃してくる可能性が高い。

陣地が築かれ、投石機が陣地内にある間は破壊するのは極めて難しい。


そこで、決着が着いてしまう可能性が高い。


入口を重装兵で固めていれば、重装兵は普通の攻撃には耐えるが、投石器の攻撃に対してはほとんど無力だ。

だから、重装兵対策に相手が投石器を使おうと思っても不思議はない。

ただ、重装兵を見てから準備を始めても、投石器がここに到着する頃には決着が着いた後なので、意味が無い。

心配する必要が無いと思っていた。


なぜか、そんなものが20日を待たずに到着してしまう。


「重装兵を使うことを予測できる者が居たということか」


そうとしか考えられないタイミングだったが、ハスクバハルが出撃準備をしていた時点で重装兵の存在に気付いていた者が居たとは思えない。


「竜に備えて運んできたものが、ちょうど役に立ったというだけなのかもしれないな。

 経緯がどうであれ、投石器が来るのであれば、設置される前に破壊しなければならない」


「罠かもしれん」

「ああ。それは理解している」

「元はラハイテス、お前をおびき出す為の罠だったのかもしれないな」

投石器を使う必要は無いが、輸送中の投石器をラハイテスが襲う可能性がある。


餌のつもりで運んできた攻城兵器が、ランデル攻略の本命になってしまった可能性。

だとしても行くしかない。


「今からでも準備しよう」


「行くのか? 罠かもしれんのだぞ」

「その可能性は高いだろう。だが、本当に投石器だとすると厄介だ。

 本物かどうかを確認しておく必要がある」


大きく重い物なので、運ぶには時間がかかる。

とはいえ、偵察隊が目視確認したほどの距離なので、もう狙えるチャンスは少ない。


地図を広げて、作戦を立てる。

とはいえ、もうこの段階でできることは限られている。


「攻撃を仕掛けるとすれば、ここになる」

それ自体には異論はないが、相手も、そこを狙ってくると考えて、ラハイテスを倒そうとするはずだ。


「ラハイテス、おまえに何かあればランデルは落ちる。

 ここは私が行った方が良いのではないか?」

カヤハルが代わりに行く案を出すがラハイテスは却下する。

「私の隊を一番うまく動かせるのは私だ」


それは知っている。


カヤハルも、じゃあ行ってくれと言われるとは思わなかった。

言われれば行くが、ラハイテスがそれを望まない。


……………………

……………………


ラハイテスの隊は奇襲に出るのには慣れているので、早速準備をして出発した。


斥候からの連絡が入る。

「前方に、大型兵器を輸送していると思われる部隊の存在を確認。

 ただし、守備が固く、近づくのは困難な状況です」


これでは奇襲にならない。


この時間でも、これだけ守りを固めているのは、奇襲部隊の殲滅が目的だ。

もちろん敵の待ち伏せがある。


「右後方より敵兵と思われる集団が接近してきます」


「やはり待ち伏せがあるか」


少し離れたところに兵を隠し、ラハイテスの部隊が通過するのを待って出てきたのだ。


「後方は既に塞がれました」

それは想定済みだ。


このまま突入しても、おそらく投石器を破壊するのは難しい。

「攻撃は断念する。このまま第一ルートを抜ける」


ラハイテスは、罠だった場合に備えて予め前進しつつ逃げるルートを設定していた。

速やかに、そのルートを通って、敵を回避する。


ハスクバハル側は、ラハイテスの奇襲隊が罠に嵌ったと思って包囲を狭めていくが、

ラハイテスの奇襲部隊はどこにもいなかった。


一時は確実に気配察知の範囲内に入った。にもかかわらず、どこに逃げたのかわからない。


「敵だったよな?」

「ああ、敵だった。逃げ足の速いやつめ。どこへ消えた?」


ラハイテスの奇襲隊を補足したのに、取り逃がした。

「いったいどこへ?」


最終的に逃げられる可能性はあっても、必ず交戦はするはずだと思っていた。

ところが、交戦にも至らず。全くの想定外だった。


「いったいどうなってやがる! 手柄を上げ損ねた」

挟み撃ちが成功すれば圧倒的に有利だが、確固部隊で当たった場合、圧倒的有利とは言えない状況であったが、この中隊を率いる指揮官は、ラハイテスに負ける気がしなかった。

もう一方の部隊を率いていた指揮官は、いくらなんでも敵を舐め過ぎだと思う。

「まあ、落ち着いて。投石器が無事なら我々の任務は失敗ではないのだから」


「そうだな。奇襲隊の行方がわからないのであれば、

 護衛対象の近くで警戒に当たった方が良いだろう」


「ああ。そうするべきだろうな」


こうして、ランデルの奇襲を防ぐことには成功したが、包囲したはずのラハイテス率いる奇襲隊にはまんまと逃げられてしまった。


その後は、慎重に朝まで投石器を守備の任務を果たした。

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