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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
38章.神殿再建(3)ランデル攻防戦(1)

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984/1032

38-11.ランデル防衛戦(6)観戦武官

挿絵(By みてみん)


ラハイテスは、期限が来たら部下を連れてランデルを脱出するようジェローネに伝えた後、カタイヤの屋敷に近いサークルを見に行く。


ジェローネ達が脱出することになるということは、ランデルが陥落することを意味する。


戦力で考えれば、元々勝てる見込みのない戦いだ。

ランデルが陥落する前にトルテラが現れなければ、ランデルの負けが確定すると考えて良い。


カタイヤの屋敷、それは即ち、ラハイテスが幼少のころを過ごした場所でもある。

元から良く知る場所だが、最近も何度も確認している。

が、これといって変化はないように見える。


わざわざ何度も見に来るのは、そろそろ何か変化が起きる可能性があると思ったからだ。


開戦が迫り、トルテラが戻る前兆でも出るのではないかと期待したのだが、何もなかった。

ジョシュアは、このサークルを死守しなければならないと言う。

何も無ければ勝ち目がないこの戦、サークルを死守することが可能だとすれば、トルテラの帰還くらいしか思い当たらない。


ラハイテスはジョシュアを避難させようとしたが、このサークルを手放せないなら、結局ランデルを死守する必要がある。


だが、トルテラ帰還以外に手段が無いように思える。


やはり、この戦いが起きてしまった時点で詰んでいたのではないかと思える。


ちゅうかまん迎撃戦の後の集まりで、スワレンがハスクバハルに対し喧嘩を売らなければ、こんなことにはならなかったのだ。

ラハイテスは、あのときスワレンを連れて行かなければよかったと後悔するが仕方ない。


あの場にスワレンを連れて行ったのは、スワレンが連合からランデルに合流したことを周知する意図があったからだ。

理由があって連れて行った。

元はスワレンが売った喧嘩……とはいえ、スワレンはランデル防衛戦に参加している。


そして、スワレンにすべてを押し付けるわけにいかなくなっている理由が、ラハイテスの母、カタイヤの存在だ。ランデルが孤立したのはカタイヤが原因だ。

あのタイミングでわざわざ連合側にも喧嘩を売った。


あれが無ければ少なくとも、連合と敵対することは無かった。


ラハイテス的には精神的な問題もあった。

皆がラハイテスに詰め寄ればまだ救いがあるのだが、もうすぐ攻撃を受けるこの段階に至っても、ラハイテスを恨む者はあまり多くなかった。

むしろ、後押しする者が多いくらいだ。

カタイヤの盟友であり、スバリヤの母であるエンバリエは、喧嘩を売ったラハイテスを褒めた。


ラハイテスは、致命的な外交失敗だと思っているのに褒められる。


今になって思う。

”もしかして、狙っても居ない、自分が失敗だと思ったことを褒められている今の気持ちはトルテラ様に近いのではないだろうか?”


独り言をつぶやく。

「トルテラ様も、こんな気持ちになることがあったのかもしれないな……」


※いっぱいありました!

 おっさんのラハイテスさんに対する親近感が大幅にアップしました!


……………………


ラハイテスがサークルを見ていると、年寄連中が寄ってくる。

「わしらは死んでも構わん。死ぬ前にハスクバハルの顔に

 泥を塗ってやれたのを見れただけで十分じゃ」


他の年寄り連中も同じ気持ちだった。


エンバリエは、喧嘩を売ったラハイテスを褒めた。

他の年寄り連中も同じ気持ちだった。


だが、ラハイテスは褒められても困る。

ハスクバハルと戦おうなどとは少しも思っていなかった。

なのに、こうなってしまう。

これも神様の罠……あるいは試練かもしれないと思う。


……………………

……………………


ラハイテスは、陣地を再度見て回る。

もう何度も見た。

この陣地を作ったスバリヤの意図はすぐにわかる。


この陣地を生かす作戦は、陣地を見るなり理解できた。

敵もすぐに意図に気付くだろう。それでもおそらくは乗って来る。

スワレン配下の重装兵が居れば、かなり有利に戦える。


守備は、カヤハルとスワレンで基本方針を決めたが、実行するのは主に元騎士隊。

元騎士隊を重装で出入り口に配置して、蓋にする。

この蓋が突破されないように、迫る敵を周囲から槍と矢で攻撃する。

相手を一か所に集めるためにここを空けているのだ。

その部分に集まった敵は壁となる騎士隊を狙ってくる。


その仕掛けは外から見ても、意図が明白にわかるはずだ。

それでも、ここを攻める。

わざと敵を引き付ける仕掛けではあるが、実際にそこが弱点でもあるからだ。


少数の騎士隊を排除できれば大人数で突入可能になる。

ここから一度入り込めば一気にカタイヤのところまで攻め入ることができる。

それで決着が着く。早ければ半日で陥落だ。


さらには、突破できなくても、ランデル側に損害を与え、包囲したまま疲弊を待てばいつかは勝てる。

敵は一気に攻め落とさなくても構わないのだ。


敵は損害が増えれば兵糧攻めを狙うはずだ。

待てば自滅する相手に、損害を出してまで強引に打ち破る必要はない。


弱るのを待ってから、攻めても良い。


ラハイテスの狙いは時間稼ぎ。そして相手は短期戦に拘る必要はない。

なので、相手が諦めて長期戦を選ぶところまで持って行けば、作戦の第一段階は成功となる。


だが、この周囲は明らかに異常だ。人が多すぎる。

世界中から様子を見に来ているのだ。


こんな小国に注目が集まる理由。

世界中の国の人々がトルテラが戻る可能性があると思っているのだ。

寿命で死んだと言いながら、これだけ人を送り込んでくる。


ラハイテスは思う。やはりあれは神なのだと。

その場に居なくても、これだけの人を集める力を持つのだ。


「それにしても、人が多い。戦争前の方が人が多いとはな……」


近頃しばらく人の往来の多い場所に居たから人の多さには慣れていたが、

ランデルで、これだけの人を見るとは思わなかった。


もちろん、攻めてくる敵軍はもっと多いが、戦闘中でも無いのにこれだけの人を見るのは妙に感じる。

そのくらい日頃は人の少ない場所なのだ。


……………………

……………………


一方で、ランデルの陣地の外側はというと、ラハイテスが感じたように人が多い。

この戦いを見ておこうと、各地から大量に人が集まっていた。


監視人は数が多すぎて、どれがどこの国の者だかわからない。

ランデルが落ちれば普通だが、竜でも出てしまえば大変なことになる。


勢力図が一気に塗り替わるかもしれない。

そんな大イベントなので監視しているものが極めて多い。

だからこそ、ますますハスクバハルは勝たなければならなくなる。

あんな場で喧嘩を売られて、ランデルのような小国に勝てないとなると、今後の外交に支障が出る。


実際のところ、あの老人は既に寿命で死んでいるとみられている。

この局面になっても姿を現さないのだ。


既に死んでいる。そう考えるのはおかしなことではないが、

本当に死んでいるのであれば、ランデルが勝つはずはない。

わざわざ見に来る価値など無い。

ランデルが負けたという知らせを待っていれば良い……のだが、100%とは思えない。


だから、これだけ人が集まっているのだ。


そんな見物人の中に、観戦武官として北ハスクバハルから、ベッケンとナスカリトマが来ていた。

観戦武官。戦闘には直接関与せず、より近い場所で観戦する許可を与えられた者。

リーディアの紹介があって実現したことだった。


観戦武官は直接戦闘には参加せず、危険の少ない場所で観戦するが、万が一巻き添えで死んでも文句は言えない。見るのも命がけ。


見た内容は、退去時に自身で北ハスクバハルに持ち帰るだけで、戦闘終了までは、見た内容を漏らしてはいけない。

北ハスクバハルが攻め込まないかわりに、公式に見ても良いというもので、完全な中立の立場で見ることを許されている。これでハスクバハル側に情報が漏れたりすれば、北ハスクバハルの信用が落ちる。

※ランデル側に加勢すると、ハスクバハル本国と北ハスクバハルの関係が壊滅的打撃を受けます。

 なので、完全な中立である必要があります。


中立としてふるまわなければならないものの、北ハスクバハルとしては、

”あまり簡単にランデルが陥落してしまうと立場が弱くなる”という都合がある。

どちらかというと、北ハスクバハルはランデルに簡単には負けて欲しくない。


到着した当日に、ラハイテスに挨拶をしに行く。

出迎えは思ったより少なく、将はラハイテスと、カヤハルだけだった。


「ランデル族長カタイヤの娘、ラハイテスだ。こちらが副官のカヤハル、

 遠いところ、よく来ていただいた」


ナスカリトマは、カヤハルの顔には見覚えがあったが、だいぶ老けていた。

それだけの時が経ったのだ。

ラハイテスは想像通りという感じの成長だった。

腕力ではナスカリトマの方が上だろう。


次は北ハスクバハル側の紹介だ。

まずはベッケンから。

「私が今回の作戦を指揮する北ハスクバハルの……」


ラハイテスは目の前の人物をよく観察する。武人と役人の中間くらいのように見える。

事前のやり取りで知ってはいたが、やはり、目の前にいるこの人物が、鎧に放り投げられて空高くまで上がったと言われる人物だ。


エスティアを怒らせたために、鎧に投げ飛ばされたという。

わざわざ投げ飛ばされた本人がここまで来たのだ。


何かが起きるのかもしれない。ラハイテスは改めてそう思った。


----


ナスカリトマは、こちら(北ハスクバハル側)の紹介をする間、様子を窺っていたが、ラハイテスからもエスティア同様に殺気を感じない。

軍人臭の無さに違和感を持つ。


エスティアから軍人臭がしないのは理解できる。軍人ではないからだ。

だが、ラハイテスは紛れもない軍人だ。

こんな雰囲気の軍人が、エスティアに匹敵するほどの武勇を持つとは、見た目からは信じがたい。

まあ、エスティアの例を考えれば、見た目で判断は危険だ。


ナスカリトマの順番が来たので、自己紹介をする。


「観戦武官として派遣されたナスカリトマであります。

 ラハイテス殿……子供のころ会っておりますが覚えておられますか?」


ラハイテスには見覚えがあった。確かに会ったことがある。


「ナスカリトマ殿。覚えている。顔を合わすのは子供のころ以来か」


懐かしいという気も無くは無いが、再会して嬉しいと思うような間柄ではない。


----


「ラハイテス殿が20期(10歳)か25期(12.5歳)の頃以来でしょうな」

ナスカリトマはそう答えつつラハイテスを見るが、やはりエスティアから聞いたのとはイメージが合わない。


ラハイテスは当時のことを少し思い出す。

カタイヤに連れられて、会合に行ったときにナスカリトマとは会っている。

当時も年の割に体格は良かったが、今はさらに屈強に見える。

見ただけでわかる。強い。


武勇ではそれなり有名だが、エスティアには負けたと聞いた。

ラハイテスにはあの話は少々意外だった。

ナスカリトマが弱かったり手を抜いていたわけではなく、純粋にエスティアが強いのだという。

ラハイテスの聞いていた話では、女たちの中で強いのはリーディアとリナとアイスの3人。

その3人にはラハイテスでも勝てない。

そして、それに次ぐのがエスティアだとは聞いていたが、扱いとしては強い3人と、そうではない3人という感じで、エスティアは常に強くない方に入っていた。


もちろん決して弱くないことはラハイテスも知っていた。

それでも、腕に自信のある現役の戦闘隊長クラスとエスティアでは、エスティアが勝つようには思えない。

目の前のこの女がエスティアに負けるようには見えない。


少し話を振ってみる。

「話によれば、エスティア様と試合をしたとか」


「見事ですな。あの体格で剣でも及ばず。

 弓を使われたら、私など近づくことも叶わない」


”弓”の言葉に引っかかる。

ラハイテスは、試合で弓を使うのは見たことも無い。


”バッカでは試合に弓を使う風習もあるのだろうか?”と疑問を持つ。

※ベッケンさんの砦のあるあたり一帯がバッカ地方です


「エスティア様の弓?」

「あの達人技をご存じないとはもったいない」


エスティアの弓の話など、ラハイテスはろくに聞いたことが無い。

何か特別な意味でもあるのかと疑ってみるが、この時点ではわからなかった。

話をごまかす。

「エスティア様は貴殿の武勇を高く評価しておられたようですが」


「専業の軍人ですからな。それなりには戦えると思いましたが、勝てなかった。

 それはそうと、ラハイテス殿は、エスティア様とは試合をしていない……と?」


「ああ。私はエスティア様とは試合をする機会が無かった。

 てっきり剣は得意では無いと思っていた」


「では、ラハイテス殿と私ではどちらが強いか、やってみるまでわからないと」

ここでようやくラハイテスは気付いた。

ラハイテスとどっちが強いかという話をしているのだ。

これは友好的な意味であると考えられる。

敵対していては試合もできない。

そして、ラハイテスが死んでしまっても当然、試合する機会は失われる。


これはこれで、ナスカリトマなりの励ましの言葉なのだろうと思い受け取ることにする。

「いずれお手合わせ願いたいものですな」


「ここにはナスカリトマと世話役だけを残し、我々は外から観戦させていただく」

これも予定通り。裏切りはしないと思うが、人数が多いと邪魔だ。

だから、そう簡単には死ななそうな人物が1人残れば良い。


「承知しました」


「ではご武運を」

そう言い残してベッケンたちは去っていく。

今回は挨拶のみで、ナスカリトマもベッケンと同行する。


……………………


ベッケンたち北ハスクバハル一行は、ランデル陣地から離れた場所に作られた仮設の詰め所に戻る。


「いかかでしょう?」

ベッケンがどう思ったかを聞く。


「何か隠してるのか……いや、ラハイテスは癖が強そうには見えなかったな」


ナスカリトマは、不思議に思う。

ラハイテスが曲者だという話はあまり聞かない。


「族長の家の者の割にということですか?」

「そういうわけではない」


「戦闘を仕切っているのがラハイテスで、

 それ以外は姉のカルエハヤスがやっていると聞きますから」


「そうではない。エスティアと同じ匂いがする」


ナスカリトマもそう思う部分もあるが、どのような意味で言ったのか確認する。


「それは?(どのような意味ですか)」


「あれも、言ってることとやってることが合わない者かもしれない」


「何か裏があると?」


ベッケンは、自分が言いたいことをナスカリトマが理解していないことを知る。

ベッケンは、エスティア相手に痛い目を見た。

本人が自分の力を理解していない。自分の行動を見て相手がどう思うかを考えていない。

だから、相手に誤解を与える。


ラハイテスも、エスティアほどではないが、それに近いものがあるのではないかと思ったのだ。


「何かがズレた者に見えた」


これで何を言っているか少しわかった。

だが、ナスカリトマにはラハイテスはまともに見えた。


「ラハイテスが?」


ナスカリトマは、ラハイテスは比較的まともな人物だと思っていた。

敵ならともかくとして、味方としてはわざわざ避けたいと思う者ではない。

ナスカリトマは、ランデルに滞在する間にラハイテスに寝首を搔かれるとは思っていない。

そういう点では比較的信頼できる相手だと考えていた。


「連合の兵が居たな」

ベッケンが話を変えた。隠し事をごまかすという感じではない。


ナスカリトマは、追及はせず、ベッケンの話に答える。


「連合から合流した兵も50人ほど居ると聞いています」


連合から合流した兵が居ることは、ここに来る前からベッケンも知っていた。

問題は、一体感だ。どこまでが元連合の兵で、どこからがランデル兵かの見分けがはっきりとは付かなかった。服装から差が見えるのは当たり前で、問題は行動だ。

ランデル兵に見える兵も、連合兵のような動きをしていた。

作業に一体感があるのだ。どうすれば短期間であのようになるのか。


それを見ただけでも、ラハイテスの恐ろしさが分かる。

或いは、連合から来たスワレンという将の手腕なのか。

※だいたいジェローネさんの功績だと思います!


「あの砦は連合のものか? 見事なものだ」


”あの砦は連合のものか” これは、ランデル式、この周辺国で使われる技術とは異なる技術を使っているように見える。ナスカリトマも知らない工法に見えた。道具もあまり見たことの無い物が混じっていた。


それに何より、かなり強固な要塞が作られていること。

容易には崩せない土塁が作られていた。


「私も驚きました。

 地形的に守り切るのは難しいかと思っておりましたが、これは長期化するかもしれません」


「簡単には落ちんだろう……緊急時は自身で判断して脱出しろ。

 ただ、基本的には落ちない前提で動いてくれ」


ベッケンがどうしてそう判断したのかはわからないが、ナスカリトマは、ベッケンはランデルは落ちないと判断したように思えた。


確かに想像を遥かに超える陣地ではあるが、地形を利用した強固な砦と異なり、地の利が無い。

大軍が攻め寄せれば陥落は必至。

ナスカリトマは自分な何か見落としたかと考えてみるが、思い当たらなかった。


ナスカリトマは観戦武官として、要塞化されたランデル中枢内に滞在する。

戦闘に巻き込まれて死ぬ可能性もある。少なくとも、怪我くらいは負う可能性はある。

ナスカリトマがランデルの内側から、ベッケンたちが外部から細かく戦況を記録する。


ナスカリトマは、戦いを見て情報を持ち帰るのが仕事だ。

危なくなれば脱出する手はずになっているが、どうもベッケンは、ランデルが落ちないと考えているように見える。


となると、早目に脱出は良くないかもしれない。


興味はあるが、思っていた以上に危険な任務になりそうだとナスカリトマは思った。

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