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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
38章.神殿再建(3)ランデル攻防戦(1)

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38-09.ランデル防衛戦(4)ジェローネ(2)

挿絵(By みてみん)


リーディアが近くまで来ている。

おそらく噂だけではなく、実際に来ているか、少なくとも来ようとしている可能性が高い。

ここには、元リーディア配下の元騎士隊が居るのだ。


元騎士隊の連中が移籍した理由はリーディアにある。

だから、必ず来る。

ジェローネはそう考えていた。


※実際はジェローネさんに会いに来るのですが。


いろいろ難はあるが、なんだかんだ言いつつも、リーディアは部下思いの指揮官ではあった。

ジェローネの知るリーディアは、多くの者が言うような聡明な人物とは懸け離れた不器用な人物だった。

今ではそう思っている。


ジェローネも、以前はリーディアを完ぺきに近い存在だと思っていた。

冷静で、時には部下を切り捨てる選択もできる。

それは指揮官にとって重要な素質だ。情で作戦失敗したり、損害を増やすようなことはあってはならない。

少なくとも軍学ではそれが鉄則。全ての士官がそう習う。


対巨人戦の前までは、ジェローネはあまり良い任務が得られなかった。

上司の派閥の旗色が悪く、あまり目立つ活躍ができない地味な任務が多かった。

ところが、巨人の一件から一気に注目される存在となった。


特に、巨人退治で貢献したリーディアは、あの戦いでの一番の功績者だった。

勇者伝承で、巨人を倒すのは勇者なのだ。

兵たちの間では、既にリーディアが勇者であるという認識が広まっていた。

当然、軍に勇者などという階級や役職が存在するわけはないのだが、誰もがリーディアが勇者だと認識していた。


共に肩を並べて戦ったのに、リーディアと大差が出たことは残念ではあるが、ジェローネの評価も高く、受勲は確実と言われていた。


2人で同時に受勲できれば良い。そう思っていた。

平和が続くこの時代、勲章の大安売りは存在しない。

勲章持ちの(若い)下士官は珍しく、大変な名誉であった。

リーディアも当然喜んで受勲する。ジェローネはそう確信していた。


だが、実際にはそうでは無かった。


ジェローネがそれを知ったのはだいぶ遅い時期だった。


あの戦いでは、ダルガンイストは大損害を出しており、緊張が続いているわけでも無い状況では、早々に式典を開き、損害が軽微であったように演出することが上層部の仕事になる。


その上層部の勢力図が一気に塗り替わったので混乱はあるにしても、式典の話が出ない。

勲章が出ることは確実であろうということは、兵の間でも噂になっており、陰謀論まで出回る勢いだった。



ところが、いつまで経っても、式典の開催日が決定しない理由は、上層部ではなく、実はリーディアにあった。

リーディアは事前に準備などせずとも、受勲内定を受け入れれば良いだけだった。

ところが、リーディアは受勲を辞退しようとしていた。


※式典開いて、リーディアさんが受勲を蹴ったら大変なことになるので、

 一応意思確認の機会があります。トーレバーナさんも、リーディアさんが

 こういう(めんどくさい)性格であることは知ってますから事前確認は欠かしません。



それを知ったジェローネも、あっさり勘違いした。

※キャロさんの陰謀のせいです。


リーディアは、ジェローネと共に戦ったあの戦闘に受勲の価値は無いと考えている。


リーディアがまさかそんなことを考えているとは知らず、その話を聞いたとき、ジェローネは無力感に襲われた。

あれが受勲に値する活躍で無かったとしたら、いったい何が受勲に値するというのか。


リーディアの基準と、ジェローネの基準にそこまで大きな開きがあるとは考えたことも無かった。

同じ講義を受けたリーディアとジェローネは近年の受勲者と、その功績については詳しい。

あの基準からすれば、今回の受勲は当然である。ジェローネはそう考えていた。


ところが、あの程度のこと、リーディアにとっては受勲に値するようなことでは無かったのだ。


※これはキャロの工作で、実際にはリーディアは通常の勲章であれば受ける意思はありました。

 特別すぎる勲章だったので受け取れなかっただけです。


結局、勲章の授与は行われ、リーディアとジェローネ、他数名が受勲した。


結果としては受勲した。

だが、ジェローネの心は晴れなかった。


あの頃は、リーディアに対して恨みを感じたこともあった。

リーディアの我儘に振り回されたように感じたのだ。


同時にリーディアとはもう価値観の共有はできないと感じてしまった。

リーディアが遠い存在になったように感じた。


……………………

……………………


ところが、その後、リーディアの行動には理由があるのではないかということに気付いた。


あの老人、トルテラが生きている可能性があるという噂が流れ始めたのだ。


巨人を倒したのは、あの老人であり、対巨人戦で死んだことになっていた。

ところが実際は生きている。

それが、リーディアが勇者の地位を辞退していることと繋がりがある。

受勲を渋ったのも、本当はそのせいだったのではないか。


ジェローネは、このとき、この仮説の可能性に気付いた。

あの老人はおそらく生きている。

だから、リーディアがあのような態度をとったのだと考えたのだ。


本来であれば、あの老人が生きていようと死んでいようと、リーディアの功績とは関係無い。


あの老人は軍関係者ではない。

共同で巨人討伐をしたと言っても、軍関係者としては、紛れも無くリーディアが討伐したのだから、勲章も、勇者の地位もリーディアが受けてしまって問題無い。

普通の将校ならそう考えるだろう。


軍籍でも無い男の老人が、どれほど大きな武勲を上げようとも、受勲することなど有り得ないのだ。


そう考えるのが普通だが、リーディアはそうでは無いようだった。



ジェローネは、以前からリーディアの動きに違和感を持つことがあった。


ジェローネはそれからリーディアのことを調べ1つの仮説に辿り着いた。

リーディアは受勲を辞退したかったわけではなく、巨人討伐の功績を横取りしたくなかっただけ。

そう考えた方が、リーディアの行動の説明がつきやすかった。


ジェローネが知る範囲でも、以前からリーディアには潔癖すぎるところがあった。

そして、実際にあの老人は生きていた。


リーディアの行動に納得した。


この頃には既に、リーディアとの関係は以前のようなものではなくなっていたので、関係の修復はできなかったが、ジェローネのリーディアに対する恨みは消えていた。

あれは誤解だったのだ。


とはいえ、それは終わった話だった。


……………………

……………………


ジェローネは軍学校を出てダルガンイスト軍に入っている。

勲章持ちでもあり、軍人生活としての一生をダルガンイストで過ごすものだと思っていた。


ところが転機がやって来る。


死んだはずのトルテラが生きていた。

トルテラ暗殺の噂が兵たちの間でまことしやかに囁かれるようになると、

トルテラに恩を感じていた兵が、暗殺計画を知らせに行ってしまう。


※このときの兵はリーディアさんの使いだと言っていますが、

 実はリーディアさんの指示で出た使いではありません。

 キャロさんが勝手に指示を出しています。


ところがトルテラは、リーディアの窮状を知り、本人がダルガンイストにやってきた。



実際、この時期のリーディアは、立場がかなり危ういものになっていた。

リーディアも、控えめに動けば、どうとでもなったのに、頑なに受け入れなかった。


傍から見ても理解するのは難しいのだが、リーディアは、トルテラが自分を勇者に選んでいたことを知ってから、軍に与えられる勇者の地位など意味のないものに思えた。

※実際、元々存在しない勇者という謎の肩書が生まれたので軍でも扱いは微妙なものだった。


そもそもリーディアの功績ではない。

命令を何度も無視したため、危うく投獄されかねないレベルに達していた。



ジェローネの時系列では、トルテラが来た後に、なぜ来たのか理由を知った。


公式にはリーディアが巨人を倒したことになっているが、実際に倒したのがトルテラであることは兵たちの間で広く知られていた。

その上で、上層部は、巨人を倒したリーディアを勇者に仕立て上げようとしていた。

それが一番平和だったからだ。


トルテラが現れたと聞いてジェローネも見に行った。

一目見ればわかる。あんな巨大で元気な老人は他に居ない。


以前老人が来たときは、大変歓迎したと聞いていたが、このときのリーディアは何故か大変不機嫌で、トルテラに剣での勝負を挑んだ。


老人の言ってることもおかしかった。


「ここで良いのか? たくさん人いるぞ。

 俺、死んでるからあんまり目立ちたくないんだが」


リーディアが負けるところを見られてしまうが良いかと言っているように聞こえた。


老人は勝負にはあまり乗り気では無かったようだが、

勝負が始まった瞬間、終わっていた。


ジェローネは今目の前で見ていたのに信じられなかった。

いきなりのことで見逃した。

気付いた時には、あの巨体で瞬時にリーディアに迫り、盾で倒し抑えつけた。

トルテラの「はじめていいのか?」に対してリーディアは「いつでもいいぞ」と答えた。

そのやりとりはジェローネもはっきりと見ていた。

だが、次の瞬間にはリーディアは無様に押さえつけられていた。


その後のリーディアの反応を見てジェローネは理解した。


老人は「人に言う前に、お前が真面目にやれ」と言う。

リーディアは、たしか「そうだな、済まなかった」と返した。

老人の能力に驚いたわけではなく、緊張感が足りていないことを指摘されて素直に受け入れたように見えた。


リーディアははじめからこの老人に勝つことができないのは知っていた。

リーディア本人が、自分がどれだけ弱いのかを証明したかったのだ。


ジェローネは知らなかったが、ここまで圧倒的な差があったのだ。

元から。


巨人を偶然倒し、沼地に潜伏していたのではない。

ジェローネが、頼もしく感じていたあの老人の姿は、手を抜いていた状態だったのだ。


命を懸けて守っている姿では無かったのだ。

あのとき、この老人が助けてくれたのは紛れもない事実だ。

あのときこの老人が現れなければジェローネも今生きているかはわからない。

そんな状況だった。


手加減しつつ兵を助けた。


あんな巨人、リーディアのところまで行かずとも倒せたのだ。

リーディアは、トルテラが巨人を倒すのを見ていた。

そして生きてると知れば怒るかもしれない。


だから、実際にこの日も不機嫌だったのだろう。


そのあとの勝負は、リーディアの動きの切れが良くなり、十分善戦した。

ジェローネには、”あれは真似できない”そう思えるくらいには健闘した。

リーディアは、苦戦しつつも盾を避けて懐に潜り込んだ。

トルテラは防げたのに防がなかったようにも見えた。

リーディアに華を持たせるつもりかと思った次の瞬間には、リーディアが吹き飛ばされていた。


回りの兵たちは絶望した。


たった1発だった。リーディアは起き上がれない。


リーディアが倒れているのに、トルテラが迫る。

何が起きるのかと恐れたが、トルテラが

「おい、真面目に戦ったぞ。まだやるか?」と聞くと、

リーディアは「ありがとう。すっきりした」と答えた。


リーディアは、なんとか立ち上がると言った。

「これが本物の勇者だ。私に勇者の資格があると思うか?」


周囲の兵は泣きまくっていた。


あのときの言葉が心に刺さった。

リーディアが受勲を避けたとき、ジェローネは自分の功績が否定されたように思えた。

そして、仮にトルテラが上げた功績であっても、実際に生き残ってあの場を勝利に導いたのは確実にリーディアの功績なのだから遠慮する理由は無いと思っていた。


だが、これを知っていたら、勲章を辞退したくなる気持ちも分かった。


このあと、リーディアは鎧を得て軍を辞めた。

そのときはじめてジェローネは鎧は神に与えられるものだと知った。

物語の話では無かったのだ。


だから、リーディアは神に与えられたものでは無い勇者の称号を欲しがらなかったのだ。


……………………

……………………


あの事件はジェローネの人生観を大きく変えてしまった。

ジェローネは何が正しいのかわからなくなった。


休暇の時にトルテラの家に会いに行ってみたが、静かに暮らしていた。

ダルガンイストでリーディアと戦ったときと同一人物には見えなかった。


こちらが本来の老人の姿なのだろう。

そうは思ったが、軍人としては少し寂しくもあった。

これほど強い人間をジェローネは見たことが無かった。

そんな人物が静かに暮らしている。

もう年なのかもしれない。

本来、人間が元気に動けるような年齢をはるかに超えているのだ。

仕方が無い。


※まだ、ピチピチの50前です!!


……………………


そして発生したリーディア追撃戦。


このときも兵達は老人と敵対したくなかった。

恩人、或いは信仰の対象であって、敵対したいとは思わない。


ただし、命令が出れば出撃するしかない。


ただ、この数相手に反撃してくるとも思わなかったので戦闘にもならないと思っていた。


ジェローネも作戦の内容的に、戦闘目的では無いと思っていた


※なので、出撃はしたものの、戦意が低い者が多かったです。

 それも些細な夜襲で総崩れになった原因の一つです。


予想に反して、リーディア一行を見失った。

この人数で包囲して、見失うというのは通常あり得ない。

少なくとも包囲を突破するときに、目撃されるはずだ。

誰にも気付かれずに逃走したとは考え辛い。


見失ったこと自体信じがたいが、どこかに潜んでいる。

包囲網のどこかで引っかかれば、そこで捕らえ切れなくとも問題は無い。

どれだけ強い相手でも、休む時間を与えなければ数日で勝てる。


だから、相手がどれだけ強かろうと関係が無い。

それがジェローネの知る軍学であり、今まで例外を見たことは無かった。

もちろん、追跡を逃れ逃走に成功する者もいる。

隙を突かれたり、追手が少なかった場合だ。


だが、この規模の兵に囲まれて、この状況で逃走は不可能。

誰もがそう考えていた。


夜間に包囲が薄い場所を強行突破する可能性は非常に高い。

ただ、強行突破した時点で、その時点での居場所が確定してしまう。


だから、時間の問題である。


だが、事態は予想外の方向に動いた。

完全な想定外。


本陣から火が上がった。


襲撃されたのは、リーディア一行の襲撃に備えていた包囲している兵たちではなく、本陣だったのだ。


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