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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
38章.神殿再建(3)ランデル攻防戦(1)

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38-08.ランデル防衛戦(3)ジェローネ(1)

挿絵(By みてみん)


問題は山積みだ。


事前に準備は進めていたが、やはり実際にやると、問題が具体化する。

一番は西門だ。ここに敵を引き付けたい。


ランデル中枢部は元々守りに向く地形ではない。

なんとか、堀と土手と柵で防御を固めているが、攻めようと思えばどこからでも攻めることができてしまう。

そして、敵がどこから来るかわからない状態では守りにくい。


一方で、いくら兵の数に大差が有るからと言って、敵が全方位から一度に攻めてくることは無い。

全方向から同時に来ても、薄く広がっただけで突破力の無い戦い方になる。

防御施設を突破して突入するためには、ある程度兵を集めて連続して同じ場所を攻め続ける必要がある。

なので、弱い部分、攻めやすい部分を集中的に狙ってくるはずだ。


今回は西門に敢えて壁を開け、突破できそうな状況に置く。

そうすることによって、敵がここを集中的に攻めてくる。


壁が開けてあるかわりに、そこに、重装兵で壁を作る。


元々はランデルに重装兵は存在しなかった。

そもそも防御特化の重装兵は、強固な防御拠点で運用されるものであって、こんな場所では使われない。


敵はそう思っているので、ランデルが重装兵を正面に配置することを想定して準備をしている可能性は低い。


そう考えて、この戦いに備えて用意したものだ。


ランデルの軽装兵相手で有効な武器と、重装兵に有効な武器は全く異なる。

重装兵に対して効果的な攻撃はしにくいだろう。


重装兵の鎧も、長弓が当たれば貫通する可能性がある。

だが、混戦の中で敵は長弓は使えないし、直接長弓で狙えないように土手を作ってある。


重装兵を壁にして、敵の兵を周囲から囲むように攻撃する。

軽装の敵は周囲からの攻撃に弱いため、敵も重装兵を出してくるかもしれない。

そうなると、こちらの面な迎撃兵器では倒せなくなる。


とはいえ、重装兵は守り側が圧倒的に有利だ。

重装兵の移動力は低い。

相手を食い止める壁として使うには便利だが、突撃にはあまり適していない。


防御側は重装兵を有利に使えるが、攻めに耐えるだけでは済まないのが難しいところだ。

完全に攻略困難だと相手は別の場所から侵入を試みる。

そのため加減が必要だ。


敵がここを突破したくなる程度に固める必要がある。


ところが、肝心のその加減が良くわからない。

スワレンはその加減がわからず困っていた。


重装兵に詳しいのは、重装兵の隊長ビオネッタだが、ビオネッタは重装兵を指揮する現場指揮官であり、

戦闘が始まれば、ここを守るだけで手一杯になるはずだ。

ここが本当に落ちてしまえば、その時点で敗けが確定するのだ。

手加減など考える余裕はない。


※ビオネッタさんは、スワレンさんよりは詳しいかもしれませんが、

 この重装は騎士隊で使うものとは異なるため、ビオネッタさんも、

 あまり詳しくありません。


指示を出すのは本来であればスワレンだが、スワレンには、この装備でどれだけ戦えるのか分からない。

そのため、具体的な指示が出せないのだ。


スワレンは具体的な作戦を考えるのを諦めた。


騎士隊は頭の良い者が多い。

下手な指示を出すよりは、部下に考えて動いてもらった方が良い。

そう考えたのだ。


「ここを固めるのが重装兵の仕事。なるべく長く敵を引き付ける。

 そのために有利に戦える方法を考えてくれ」


これだけでも、ある程度まともな作戦を練るだろうが、

スワレンが期待する動きとは異なるものになる可能性が高い。


おそらく、過剰に敵を引き付けようとするにちがいない。


まあ、この場にいない者を含めても、この重装での元騎士隊を効果的に動かせる指揮官など、思い当たる人物は一人しかいないのだが。


※騎士隊の隊員は軍学校を士官候補として出ています。

 なので、教科書レベルのことは知識としては知っています。

 厳密には騎士隊には主となる騎士と補助要員が居ます。

 補助要員は士官候補では無い者が多いです。


騎士隊から不満の声が出る。

「前から言ってる通り、この編成では補助要員が足りない」


スワレンは違和感を持つ。

その話は聞いたので、既に補助要員を追加で割り当てたはずだ。

「追加したはずだが?」


「通常の重装だったら、この人数で行けるが、この装備だとほとんど動けません。

 我々は立って壁になる。そういう戦い方なら補助要員がもっとたくさん必要だ」


騎士隊メンバーの言う意味はスワレンにも理解できた。

重装と聞いて、必要だと思った人数と、実際にこの戦いかたをしたときの労力に大差があるということだろう。


スワレンも訓練の様子を見ていたが、戦いが長引いたら補助要員は足りなくなりそうだ。


「確かに、先ほどの動きを見ていて分かった。ここを突破されるわけには行かない。

 補助要員を増やそう」


そうは言ったものの、スワレンが出せる兵は居ない。

ランデルの兵を出してもらうしかない。

だが、ランデル兵は、補助要員をやるのを嫌うだろう。

自分たちの国を守るための戦いで、連合から来た合流組の補助をしたいとは思わないだろう。


そう考えると、スワレンは気が重くなる。


----


その頃、ラハイテスは、まだ陣地の様子を外から見ていた。

敵の目線で考える。


自分がランデル攻めをするなら、どこを攻めるか。


ほかの場所も検討したが、やはり西門だ。

大人数を生かすには、敵は、ここを突破しようとするはずだ。

突破できれば、勝負はほぼ決まる。


他の場所は、大軍で一気に侵入しにくい。

広い範囲に堀があり、堀を超えて侵入するのは難しい。

邪魔されなくても突破は難しいのに、ろくに身動きできないところを上から突かれては、堀を超えての侵入は相当難しい。


ラハイテスが敵の指揮官であれば、西門を本命にする。


西門は今も重装での戦いに備えて準備をしている。

その中には、スワレンの姿も見える。


少し近付くと、スワレンもこちらに気付く。

スワレンは、口を開くなりいきなり言う。

「こういう戦にも、この装備にも不慣れでな」


もちろんラハイテスもそれは知っている。

この様子を見れば、既に理解していると思うものの、ラハイテスは、スワレンに

改めてこの作戦での役割を説明する。


その話は、元騎士隊のメンバーも聞いていたが、思った通りの内容であった。

こんな装備で、ここで戦えと言うのだから、説明を聞かずとも想像は付く。


「悪いな。本来なら我らが率先して守るべきだが」

スワレンは即座に答える。

「守っている間に、トルテラ様が戻るなら異存はない」


これは正直気が重い。

ラハイテスはトルテラがいつ戻るか全く知らないのだ。


だが、やるしかない。

敵を集める囮として、重装兵を使う。この重装兵は絶対に突破されてはいけない。

ランデル防衛の要になる部隊が、連合から編入された元騎士隊なのだ。


元連合兵士は、トルテラが居るからラハイテスの指揮下に入っただけで、ランデルに対する忠義はあまり無い。

ラハイテスとしてもランデルのために最後の一兵まで戦えとは言えない。

当然、戦闘があれば死者が出るのは想定内ではあるが、ある程度消耗したら、戦線離脱させる必要がある。


ラハイテスはそう考えていた。


ランデルの兵も、ランデルの運命を連合から来た隊に任せるのは不安がある。

そして、重装兵を効果的に使うには、サポートが重要になる。


戦闘中に抵抗する重装兵を殺すのは非常に難しい。

一方で、動けない重装編を仕留めることはできる。

そのため、重装兵が戦闘不能になる前に救出しなければならない。


重装兵は抵抗するだけで、基本攻撃力はほとんど無い。

敵は重装兵を排除して、陣地内に侵入しようとするので、重装兵を狙ってくる敵を、他の兵が、長い槍などを使って排除する。


重装兵を囮にして、実際に敵を叩くのは別の兵。


ランデルには騎士隊の重装に匹敵する重装部隊は存在しない。

金がかかって攻撃力を持たない壁にしかならないような兵種を維持する国力は無い。


一方で、元騎士隊は、実際に重装で戦った経験は全く無い。

重装兵は敵が攻めてこない限り戦う機会が無い。

平和が続いたこの時代に重装で戦った経験を持つものは世界中探しても居るかわからないレベルだ。


装備自体はリーディアがどこかから集めてきて(軍の横流し品)全員分揃っているが、補助要員も足りず、兵を集めて訓練を繰り返すが、開戦までにどれだけまともになるかはわからないような状況だった。


転倒した重装兵を無理やり綱で引き起こす訓練をしているのを見て不安が増す。


「すまんな。重装兵は私にもわからん」

そう言ったのは、重装兵を指揮する立場のスワレンだった。

それに対してラハイテスが答える。

「一番負担のかかる役を、連合から合流した者に丸投げするのは心苦しく思っている」


ラハイテスは軽装の奇襲を得意としている。重装兵の扱いには全く慣れていない。


ダルガンイストは要塞であり、ダルガンイストから来た連合の兵は基本、拠点防御には慣れている。

とは言え、スワレンは、丘上の警備担当。

元々治安維持を担当で、重装兵とは全く縁が無い人物だ。連合出身という都合でスワレンの指揮下に元騎士隊が組み込まれているだけで、スワレン自身は重装の訓練すらしたことが無い。


元騎士隊のビオネッタに任せるしかない。

元騎士隊と地元組の連携は、カヤハルが入ってなんとか進めている。


「結局、カヤハル頼りになるな……」

ラハイテスははじめてトルテラと遭遇したとき、無謀にもトルテラに挑み、撤退は結局カヤハルが指揮したことを思い出す。頼りになる叔母だ。

この時期まで現役でいてくれて助かった。


現在のランデルには、戦闘経験豊富な指揮官はカヤハルしかいないのだ。

ラハイテスも戦闘経験自体はあるものの、牽制、小競り合いといった戦いばかりで、真正面からぶつかる戦いの経験はほとんどない。


陣地をうまく使って、なんとか時間稼ぎができるよう、方針だけ伝えて、あとは各隊の指揮官に任せるしかない。


……………………

……………………


ジェローネは、連合から合流した部隊のうちの約半数、元騎士隊ではない方の指揮官として、ランデル防衛戦参加する。

想定外ではあったが、ランデル防衛戦に駆り出されることになったことは後悔していない。

ただ、できればトルテラの役に立ちたいと思っていた。


トルテラが指揮する軍団の指揮官として戦いに臨みたかった。


トルテラと共に戦える日を待ち望んでいたが、それはそうとう実現しなかった。


巨人退治のとき、トルテラは巨人と相打ちで死んだと思われていた。


ジェローネはトルテラの死は残念に思ったが、巨人を退治することに成功し、

巨人排除後に加勢に来たリーディアのおかげで、デルデ陣営を排除することに成功した。

そう思っていた。


その老人は以前森からやってきて、そのときは巨人のことでリーディアのところにやってきたことを知った。

ただ、リーディアと老人の関係は当時はまだわからなかった。

何のためにやってきて、リーディアとはどんな関係だったのか。


……………………

……………………


ところが、死んだと思われていた巨大な老人が沼地に住んでいるといううわさが広がった。

ジェローネは、生きているなら一目見たいと思った。

(本当にあの老人なのか自分の目で確認したかった)

本当にあの老人だったら、お礼の一言でも言いたい。


ジェローネ以外にも、そう思う兵が大量に居たため、トルテラの生存はあっという間に知れ渡ってしまう。


ジェローネも、本当にあの老人か確認するために行った。

隠れ住んでいると聞いていたが、小さな丘の上なので目立つように思えた。


※元は目立たなかったのですが、木などの障害物が切り倒されていたので、

 この頃は目立ったのです。


確かにあの老人だった。

噂通り、あの時一緒だった女たちと一緒だった。

人違いということは無さそうだった。


老人は、兵が礼を言いに来ることに困っているようだった。

兵が来ることに困っているのではなく、ダルガンイストに知られることを避けていた。


あれだけ盛大に国葬をして、生きていましたとなったとき問題が起きる可能性は高い。


ジェローネは感謝したが、トルテラは無かったことにして欲しいと思っている様子だった。

※お土産あげるから黙っててねと言う感じ


ジェローネは助けられたのだ。

それを感謝しにやってきて、忘れてくれと言われると、どうも納得できない。

※おっさんは、助けた自覚が無いのと、隠れ住んでるので目立ちたくないと思っていました。


……………………

……………………


そしてそれから間もなく発生したリーディア追撃戦。

リーディアが軍を抜け、老人と共に逃走した。


このときも兵達は老人と敵対したくなかった。

恩人、或いは信仰の対象であって、敵対したいとは思わない。


ただし、軍人である以上、命令が出れば出撃するしかない。


当時は、負けるとも思わないので、見つけたら捕まえるつもりだった。

戦力差が大きいので、殺さず捕らえることができると思っていた。


※なので、出撃はしたものの、戦意が低い者が多かったです。

 それも些細な夜襲で総崩れになった原因の一つです。


ところが、ジェローネの予想は外れた。

一夜にしてダルガンイスト軍が総崩れとなり、作戦行動継続不能に陥った。


ジェローネは遠くから本陣に火が上がるのを見ただけだったが、その後よくわかった。

あれだけ大勢で追撃し、大量の兵が撤退するほどの攻撃を受けたのに、トルテラの攻撃で死んだ者は誰もいないのだ。


直接交戦した者も、ほとんど居なかった。

どういうわけか、攻撃しても人を傷つけない不思議な人物だった。


その後どうなったのかよくわからないまま数十日を過ごし、その後、ダルガンイストとトルテラは和解したが、そのとき、あの老人にはなぜか尻尾が生えていた。

ジェローネが以前助けられたとき、老人にはこんなに巨大な尻尾は無かった。


ジェローネは巨人から助けられた時すでに、あの老人に好意を持っていた。

あらためて見たが、巨大な盾を持った、巨大な老人だった。

なぜか何でも盾で叩いて破壊する。

理由を聞いて納得した。

あの盾以外はすぐに壊れてしまうから。

壊れない道具をあれしか持っていない。ただそれだけの理由だった。


それからダルガンイスト内で妙な動きがあった。ランデルへの移籍の話だ。

スワレンの隊が改編になるので、行きたいものは行って良しの通達があった。

ジェローネは即決めた。

普通は、士官学校を出て士官となったジェローネが移籍する機会は無い。


スワレンの隊に移籍してからもトルテラの行動を見ていたが、

日がたつにつれ、だんだんと印象が変わってきた。

ジェローネは、あの老人は命と引き換えに自分たちを助けてくれた恩人だと思っていた。


でも、そうではなかった。

人が死ぬのをよく思わないから助けているだけ。

助けることができるから助けているだけで感謝されるようなことはしていないと思っているのだ。


ジェローネには命と引き換えに兵を守ったように見えた。


雨漏りのときも、兵が困っているから助けただけでそれ以上の意味はない。

それでもジェローネは幸運に恵まれたと思っていた。


雨漏りを止めたときは、本当に神様なのだと思った。


当時ジェローネが暮らしていた兵舎は、あまりしっかりした作りでは無かった。

もともと大雨が降り続くことのない場所だったので、そんなに強固な防水能力は無かった。


雨が降れば雨漏りすることもあった。

ところが、大雨が降り続けると、兵舎内は雨漏りだらけでどうにもならなくなった。


より大きく、作りの荒いランデルの兵舎はもっと酷かった。

ところが、雨漏りしていないと言う。


そちらに移ることになり、行ってみると、雨漏りの跡はあるのに行ったときには雨漏りは止まっていた。

普通だったら、建物自体が雨に強い作りになっているから雨漏りしない。


ところが、この建物はそうでは無かった。

神様が居る間だけ雨漏りが止まっているのだ。


そのため、神様が宿舎を出ると、そのとたんに雨漏りが始まった。

神様が外に出ると毎回大騒ぎになる。


雨は3日も降り続いたが、その3日間は兵たちにとって幸せな日々だった。

それがいつまでも続くとは思っていなかった。


ただ、想定外だったのはトルテラが消えてしまったことだった。

神様はあの時点でかなり高齢だった。だから、いつ寿命で死んでもおかしくはない。

だが、いきなり消えるというのは想定外だった。


寿命で死んだら仕方無い。それでも、かまわない……と思っていた。

だが、消息不明で生きているかもしれないという半端な状況は、辛かった。


こんな半端な気持ちで戦いたくない。

ジェローネがそんな気持ちでいるところに報告が入る。


「未確定情報ですが、リーディア様が近くまで来ていると」


リーディアが来るならトルテラが現れる可能性も上がるだろう。

これから戦争がはじまるというこんなタイミングに危険な場所に来るというのは馬鹿げたことに思える。


「来るかもしれないな。そういう女だ」


ジェローネはそう言ったが、おそらく来るだろうと思っていた。

ジェローネが知る限り、リーディアと言うのはそういう女なのだ。


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