38-04.カリオ神殿跡地復活(4)後発組、関所通過
カリオ神殿跡地が復活してすぐにイグニスが現れ、そのどさくさに紛れてリーディアとリナが出発した。
女たちの出発は、竜が城壁下に現れるのを見届けてからという約束だったはずが、混乱している隙に、リーディアとリナが脱出することに成功した。
末端にはランデル行きの許可が出たのか出ていないのかがよくわからず、なんだかんだやっているうちに突破されてしまった。
(実際に、翌日に竜が来ているので、問題視されなくなりますが、リーディアが通過した時点では、通過の許可は出ていませんでした)
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■解説:ダルガンイストが女たちの領外進出を阻む理由
ダルガンイストが女たちを外に出さないのは、
”城下町とダルガンイストが協力関係にあると思われるのを阻止すること”が目的です。
ラハイテスの手勢の半分は元連合兵士という特殊な事情もあり、
事情をよく知らない者から見ると、ダルガンイストがランデルを支援しているように
見えやすいのです。
またリーディアさんはダルガンイスト公認の勇者であり、リーディアさんがランデルに
出入りすれば、ますます、ダルガンイストの関与が疑われることになります。
ダルガンイストから見るとランデルには、ハスクバハルとの関係を悪化させてまで
配慮する理由が無い。
ダルガンイストは、しばらく前まで要塞近くにランデル軍が駐留することを
許していましたが、あれは、あくまでもトルテラが居たからです。
何が起きてもおっさんが何とかする。そもそも、ダルガンイストが何を言っても、
どうせあのおっさんは従わない(ランデルを自分の配下だと思っていないので
仕方ありません)。
元は、ランデルを束ねる事実上の責任者としておっさんが居たため、
不都合なことが起きても、おっさんのせいにできたので、
『ダルガンイストでは制御不能です』という態度で通せば済んだ。
トルテラ不在でそれが出来なくなってしまった。
結局のところ、根拠を『トルテラには逆らえないから』に頼っていたので、
トルテラ不在になると、積極的に切り離す必要が生じた。
現在は、ランデルとは無関係であるということを証明するために、
城下町とランデルの交流を妨害しています。
地理的な問題があり、城下町は連合内にあり、城下町とハスクバハルが
もめるとデルデ陣営と連合全体が戦争状態に陥る可能性があるためです。
とはいえ、ハスクバハル側も、わざわざダルガンイストと戦争したいとは
思っていません。
ランデルは地理的にハスクバハルからは遠く、ダルガンイストからは近い。
ダルガンイストは難攻不落の要塞なので、ランデルで戦うのは、
連合にとっては便利で、デルデ陣営はここで戦うのは非常に不利な場所です。
いくら小国とは言え、ランデル攻略と、ダルガンイスト戦を同時に進めるのは、
非常に負荷が大きい。
とはいえ、同時に、連合に、女たちを領外に出すのを妨害する義務は無い。
そして、トルテラが戻ってくる可能性が高くなると、逆に、女たちの行動を
妨害したことをあとで責められるのも困る。
……となると、トルテラが戻る可能性が高くなったら、トルテラの不興を買うのを
恐れて、一気に対応が変わる。
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城下町としては、”トルテラが居ないならエスティアを残せ”くらいの話で、後発組の4人が残っていれば、あまり文句はない。
さらには、トルテラがランデルに出現するなら、連れ戻すために向かうのは当然と思っている人が多い。
今まではトルテラが戻る証拠が弱かったので、エスティアだけでも確保しておきたかった。
ところが森の神殿跡地が復活し、竜が出現すればトルテラが戻ってきている可能性が高いと考える。
そうなると、町の総意は、トルテラを連れ帰れに変わる。
※町の住人は、おっさんは町の財産だと思っているからです。
だいたい人間は自分勝手で、おっさんが居る町に住んでいた人たちは、
おっさんが居るのが当たり前だと思うので、こんな感じになります。
後発組も、竜が出現したことが確認でき次第ランデルに向かう。
後発組には、かなり大きな規模の護衛が付くので、準備が始まればすぐにわかる。
後発の4人が出発準備を進めると、ダルガンイスト兵は関所の通行を阻止するように関所に移動した。
リーディアとリナは、少数の護衛しかつけなかったため、脱出できたが、後発組はそうはいかない。
エスティア達4人がランデルに行くには大量の護衛が付く。
大量の護衛を伴ってランデルに行くには、関所を通る。
少人数なら他のルートも無くは無いが、大人数で最短距離を進むなら関所を通る。
一時は城下町近くまで来ていたダルガンイスト軍は、元は、女たちをランデルに行かせないように威圧することが目的であったが、それでも動きがあるとなると、そこに居る意味が無くなる。
そのため、ダルガンイストに近く、交通の要衝である関所に陣取った。
ダルガンイストから遠く、抜け道の多い城下町付近よりも、関所の方が動きやすい。
一方で、エスティアたちから見ると、竜が出れば道は開くという単純な話になっていた。
町の人たちもダルガンイストが女たちを妨害している理由をよくわかっていないので、近くに陣どっていたダルガンイスト兵が、森が回復したら去っていったくらいにしか見えず、トルテラが戻ることがわかったから去って行ったくらいにしか思っていなかった。
ダルガンイスト軍の接近は、城下町の4軍にとっては、非常に厳しい状況だったのだが、結果的になんとかなった。森で神殿の力が回復したらダルガンイスト軍が去る。
やはり、結局のところ、その場に居なくても森の神様の影響が大きいことを再認識させられる結果となった。
城下町の4軍は、本来は共同して城下町を守ることが目的ではなく、城下町に駐留する自軍以外の3軍と城下町を監視するために駐留している。
城下町を監視すると言っても、実際には監視対象はトルテラとリーディアと女たち。
外から攻められることを想定していない。
ただし、外から攻められた場合は4軍で応戦する。
4軍は、合わせればそれなりの人数居るとはいえ、基本、敵同士という完全な烏合の衆であることに加え、城下町は防御のことなど全く考えられていない。防壁の1枚も無い、あまりにも攻めやすく守りにくい地形となっている。
そして、攻めてくるのがダルガンイストだとすると、4軍の一角はダルガンイスト軍であり、同士討ちとなり士気が落ちる。
トルテラのいない城下町など簡単に落ちる。
ダルガンイストが兵を退いたので、町の4軍は一安心した。
とはいえ、ダルガンイスト軍は威圧のために出てきただけで、町を攻める気は全く無かった。
(町の4軍も、攻めないはずだと言うことを知ってはいます)
後発の4人にとっては、どこにどの軍が陣取っているなどということはあまり興味が無く、
どっちにしろ、竜が出ればランデルに行って良いと認識していた。
竜が出なければ、どうせ関所を通ることはできないので、竜出現の連絡を待たずに出発する。
(元は『竜が出たらランデルに行っても良い ≒ 竜が出るまで出発するな』でした)
竜は既に、城壁下に出たはずだが、その報告が入るのに数日の時差がある。
城下町を出た後発組一行は、関所に到着する前に、竜出現の連絡を受ける。
「エスティア様、竜が現れたとのことです」
エスティアが、連絡を受ける。
「ありがとう。これであっさり通してもらえるかしら?」
そこでテーラが反応する。
「なんで?」
「え?」
エスティアは、城壁下のサークルに竜が現れれば、関所を通してもらえるはずという話は、テーラも含めて話したはずなので、なぜ今、”なんで”などと言い出すのかが分からなかった。
ところが、テーラの”なんで”の意味は、そうではなかった。
「なんでエスティアのところに連絡が行くの?
トルテラは私に会うために帰って来るんだよ?」
「そんなこと言われても……」
城下町の人間はほとんどの場合、リーディアが不在ならエスティアに連絡をしてくる。
エスティアが返答に困っていると、テーラが動いた。
「ひゃっ!」
テーラがエスティアの服に手を突っ込んで、エスティアの背中に生えたトルテラの尻尾の毛のようなものを触る。
「私が調べようとしたら除け者にしたくせに、やっぱり生えてた!」
テーラがエスティアの服を脱がして調べようとしたから護衛の兵に連れていかれたのだ。
その直後、毛があることにアイスが気付いた。
あのときエスティアが抵抗しなければ、エスティアにも毛があったで済む話だったのだ。
※とテーラさんは思ってますが、実際は生えてることが確認できても揉めそうな気がします。
「だって、そんなに急に生えると思わなくて」
「もう!」
そう言ってテーラは見えない毛を引っ張ったが、エスティアは無反応だ。
さらに引っ張るが、無反応。強く引っ張っても抜けたりはしないようだ。
「……」
「なに?」
「痛くない?」
「え?」
「毛を引っ張ったの!」
「痛くないけど?」
テーラが毛を引っ張ったのに、何も感じていないのでがっかりする。
エスティアは自分が悪いわけではないと思いつつも、気持ちが沈む。
……が、すぐに気が逸れる。
「いいなぁ、エスティア触りやすいところに生えて」
アイスが触ると逆毛でゾリゾリするのがわかる。
「逆毛は、ちょっと嫌かも」
「そうか? さわり心地良いぞ」
さわり心地はそうかもしれないが、触られる方としては嫌なのだ。
「触り心地はそうなのかもしれないけれど」
それを聞くと、テーラがまた動き出す。
逆毛でゾリゾリしはじめる。
「それ嫌だって言った」
「聞いてたよ?」
テーラがにこやかに答えつつゾリゾリする。
エスティアは、相手がテーラなので、迂闊なことを言うと、余計悪化すると思い、何を言うか考える。
すると、ルルがぼそっと言った一言が、エスティアの救いになる。
「こうしてみると、触りやすい場所に生えるのも、ちょっと問題ありなのね」
それを聞くとテーラが急にルルの服をめくってパンツに手を突っ込む。
「違う、触られにくいって言ったのよ、触りにくいのに無理やり触らないで!」
エスティアは、それを見てテーラはどうせどこにあっても触るから、触りやすいだけまだマシかと思い直す。
アイスは相変わらずエスティアの背中をゾリゾリする。
「逆毛はやめてくれる?」
「いいなぁ、俺もこの毛生えないかな?」
その気持ちはわからないでもない。
死んだ記憶が生まれる前、記憶が生まれていないのはエスティアとリナだけだった。
おそらく自分にも記憶が生まれるとは思っていた。でも、あのときエスティアはとても心細かった。
だから、既にリーディアとルルとエスティアに毛が生えた状況で、自分には生えていないとすごく心細くなる。
この毛は手触りがトルテラの尻尾の毛ととても良く似ている。
目にも見えない毛が触るとそこにあるのが分かるという超常現象。
どう考えても、あの神様と関係が無いとは思えない。
「アイスはルルの毛は触らないの?」
「うん。もう、生えてるのは確認できたから」
それを言ったらエスティアも同じだ。
既に、生えていることは確認できているので確認する必要が無い。
「私のだって確認できてるでしょ」
「エスティアの方が触りやすい。それにルルはパンツの中だろ」
エスティアの方が触りやすいから、ルルのを触る必要はないと言っているのだ。
まあ、確かに他人のパンツの中なんて普通触りたくないだろう。
エスティアは、アイスがエスティアの毛を触ろうとする理由には納得した。
「そうねー」
エスティアは軽く流したつもりだったが、ルルが食いつく。
「何、その言い方」
普段軽く流してくれることが多いルルが、つっかかってきたので、何と言うか考えていると、テーラがフォローしてくれる。
「だいじょうぶだよ。ルルのは私が触ってあげる」
エスティアは、助かったと同時に”どういう意味だよ”と心の中で突っ込みを入れた。




