30-30.ルルシアを助けに来た老人、その後(23)”最後の手段”と呼ばれる酒
”俺の国”でも女性の方が少し長生きする傾向がある。
”俺の国”に限らず、地球上にある、主要な国で全般的に同じ傾向があると思う。
だが、男女でそれほど寿命に大差は無い。ここみたいに2倍も差があるなんてことはない。
そして、生まれる人数にも大差は無い。
そのあたりを説明する。
「女の方が少し長生きだが大差はない。男女で、170期(85歳)と180期(90歳)の差くらいしかない。
生まれる子供の性別も、男女でだいたい同じくらい。同じくらいの数生まれる」
「170期(85歳)と180期(90歳)? そんなに長く生きるのですか?」
「働けなくなってからも、しばらく生き続けるのが普通だからな……」
俺は、これをあまり良いことだとは思っていない。健康で長生きするなら悪くは無い。
だが、ほとんどの場合、最後は、病院通いが最大のイベントというような状態になる。
「そうでしたか。私達とは比べ物にならないほど長生きなのですね。
寿命だけでなく、人数も同じくらいなら納得です」
ああ、男女比の話をしてなかったか。
俺的には男女比ほぼ1:1が当たり前なので、その前提で話をしてしまう。
この世界は、寿命にも男女差が大きいが、どういうわけか、男の方が生まれる数自体少ない。
生まれる比率で男1に対して女2と言う感じで、だいたい2倍くらい違う。
ところが、実際に目に見える男女比は3倍とか5倍とか、そんなレベルに見える。
一夫一婦制だと、数少ない男を、多くの女が取り合うことになり、破綻する。
なので、多くの女が子を持とうとすると、一人の男を他の女と分け合うような形になる。
そして、男は子供を作れば寿命は縮まる。さっさと死んでしまい、男の人数はとても少なく感じる。
若い男を見るのは稀と言っても過言ではないレベルだ。
人間社会がある程度子孫を残し維持するためには、自動的に男は短期間で死ぬ。
そういう結果にしかならない。
俺の世界のように、経済的負担等を考えなければ1組の夫婦が10人の子供を残せるということにはならない。男の数で、子供の数は制限される。一度減ったら一気に人口を増やすことが難しい。
「俺の世界では、子供も、2人で協力して育てる。子育ての期間中は、2人とも生きてるから。
だから、男女一組で2人は、一生を共にするパートナーとなることができる」
まあ、そういう世界だというだけで、俺がそうだったというわけでは無いのだが。
俺の世界の場合、恐らく、”子供を非常に多く残すことが可能である”ということが、逆に子供の数が減っていく原因にも思える。
俺の世界では体力……能力的な都合で言ったら、子供を作る能力は余りまくっている。
今生きている人たちが全力で子供を増やすと、たちまち飢餓で地獄になる。
そして、子供を何人作ろうと自由だ。
ところが、費用の問題で子供が少ない。とても裕福な暮らしをしているようにも思えるが、その反面、子供を育てるための金が足りない。
文明が高度化すると、人の価格が上がっていく。育てるためのコストが上がっていく。
凄く頑張って稼いでも、十分な収入が得られない場合、子供に恨まれる可能性がある。
貧乏なくせに子供作るな!!と。
人並みの……と言うときの人並みレベルは、多くの人には達成が難しい高みに有ったりする。
コストが高すぎて、ある程度の金持ちしか安心して子供を作れない。
理由は違うものの、この世界と俺の世界は、貧乏人は子供を持てないという点では同じだ。
俺が子供の頃は、人口が増えすぎて、食料の取り合いになると考えられていた。
ところが、農業の技術革新で思ったほど食料が不足しなかった。
そして、人口の方も、どこまでも増え続けるわけでは無く、人口は自然と縮小に向かう傾向が見え始めた。
生んで良くても”生まない自由”を選ぶ人が増えた。
俺の国では、女性1人あたりが産む子供の数は2を大きく下回っている。
男女比がほぼ1:1の俺の世界では女性1人が産む子供の数を半分にしたのが、男女含めた全員の残した子供の数とほぼ同じ結果になる。女性1人あたり2を下回るということは、男女合わせて1人1を下回る子供しか残していない。
2を下回っているどころか1.5も下回っているので、人口急減と言える状況だ。
1世代で2/3に減る。67%として、次の世代は44%。
これは未来の推測ではなく確定した数字だ。
第二次世界大戦後に発生した第一次ベビーブームが250万人、その人たちが大人になったとき起きた第二次ベビーブームが200万人越え。このとき生まれたのが俺たちだ。
俺の同級生は200万人以上も存在した。
そして、俺たちが子供を残すはずの第三次ベビーブームは来なかった。
俺がここに来る前は1年に生まれる子供の数は90万人を下回っていた。
そして、老人はやたらと長生きし、社会の重荷に。
俺の世代は、熾烈な競争の中生き、結果、活躍する機会も、子供を残す機会も無いまま、恐らく、老後の保障も手薄い。老人の自殺が大流行することだろう。
そんな世界に、俺は帰りたいのだろうか?
この世界に残るという選択もアリではないだろうか?
……………………
「仕事は、どうするのですか?」
ガスパール(テリオス)は変なことを訊く。
2人とも同程度の寿命を持ち、男女の人口比率も大差無いなら俺的には答えは1つしかない。
「もちろん、男も働く。むしろ、男の方が外に働きに出て金を稼ぐ」
「ほう。何故でしょう?」
こう思うのも仕方が無いのかもしれない。この世界、男に仕事は無い。
でも、それには理由がある。
手間かけて教えても、戦力になる期間が少ない。働ける期間もわからない。
俺の世界では、男も長生きするし、ずっと働けるのだ。
だから当然働く。俺の感覚では普通のことだ。
……………………
ただ、本人の意思と、社会の需要が一致するとは限らない。
俺の世界でも、良い職を得られない場合、歳と共に、どんどん仕事が得にくくなっていく。
そしていつか仕事がみつからなくなり、諦めて家に閉じ籠ってしまう人が居る。
中高年ひきこもりとか言われてたが、こうなるのは数十年前からわかっていた。
8050問題とか言われていた。親が80歳、子供が50歳で引きこもり。
雇う側は、ずっと引き籠っていた50歳を積極的に採用したいとは思わない。
中には、そりゃ”掘り出し物”みたいな人も居るかもしれないが、期待値が低すぎる。
元々競争に敗れたか、社会に適応できなかったことが原因で引き籠り生活に入ってしまった可能性が高い。
素の能力の期待値が低いことに加え、長期に渡る社会との断絶で、当時よりも適応能力は下がっている可能性が高い。実際どうであるかは別として、期待値としてはそうなる。
その上、その人は30年後まで働けない人だ。将来性を見込んでというのも無いのだ。
社会復帰の第一歩のハードルが猛烈に上がってしまっている。
なので、今更働くのは難しい。
そろそろ親が歳。親が死んだらどうなるかと言う話だが、今更騒いでもどうにもならない。
こうなることは、ずっと前から、わかっていて、その時手を打たなければ、手遅れになることもわかっていた。
騒ぐならその時騒ぐべきだ。
今更騒いでも意味は無い。もう、そのチャンスを逃してしまったのだから。
10年前は7040問題だった。さらに10年前は6030問題だった。
今は8050問題としてリミットが来てしまっただけだ。
6030問題のときに手を打たないとダメだったのだ。
有効な手段には莫大なコストが必要になるだろうが、それを渋れば将来、さらに大きな負債となる。
諦めて引き籠ってしまった人は、目立たないだけで、ものすごい人数存在するだろう。
俺の国だけでも、この世界の全人口より多いかもしれない。
この世界は、若い男にも、手伝い仕事しか無いが、俺の世界はむしろ、外で仕事をするのが男だった。
俺が若かったころ、そろそろ就職の時期に差し掛かったころ、世の中は景気が良くて、女性の声が大きかった。
政治でもマドンナ旋風とか言って、女性の進出が目立った時代だった。
女性の社会進出とか言って、働きに出る女性が増えたが、幸せになったのだろうか?
好景気の時は、人手不足もあって女性の社会進出が進んだ。
ところが、一気に不景気が訪れ就職難になると、女性に人気の職業は専業主婦になった。
景気の良い時は、就職市場を荒らしておいて、不景気になったら就職しない道が大人気。
だが、男は不景気になったからと言って、専業主夫になるのは、女性が専業主婦になるのと比較して遥かに難しい。
男女平等と言うなら、専業主夫率も上げるべきだ。
だが、何故か専業主夫率を専業主婦並みに上げるための活動はしない。
だから、不景気になっても、男は働くしか選択肢がない。
世界的に、自殺率には男女差が大きい。男の方が追い詰められたときの、保護が手薄なのだ。
結果死を選ぶ率が上がる。男は稼げないと詰む可能性が高い。
女性の社会進出は、不景気の労働市場では人余りを促進する要因の一つになった。
その結果、ブラック企業が増えた。余ると値が一気に落ちる。
結局のところ、値が下がったからと言って、働かないわけにも行かない。
俺の世界には生活保護と言う、救済策がある。
そして、凄く困ったときに窓口に行くと、”働け”と言われる。
まあ、そんな国だった。
となると、ブラックであろうと何であろうと、働くしかないわけで、その結果、働けない状態になると無事、生活保護を受けられるようになる。
体力ゲージが少なくなって、超必殺技が使えそうなときに窓口に行くと門前払い。
体力が0になってから行かないとダメなのだ。もう終わった後の話で底から逆転は狙えない。
もう、生活保護から抜け出せない。抜け出せる力があるうちに、保護すれば助かったかもしれないのに。
人材が潰れて社会保障を必要とするようになっても企業には負担は無いので、どんどん使い潰した。
それが解消したのは、労働者不足に陥ってからだ。
労働力が不足しても、既にある程度の年齢に達している人は仕事をもらえない。
俺はこの世界で老人扱いされて無職だったと思うが、俺の世界でも、定職を持てないまま、この年齢に達していたら年齢制限で仕事が持てなくなっていたかもしれない。
そう考えると、俺の世界でも案外似た状況になる可能性はあったのだ。
だが、俺は当分年金貰えないのだ。
……………………
ガスパール(テリオス)に、俺の国の社会保障の話をしても仕方ないので、男女の働き方の基本的なところを話す。
「仕事は、男女両方働くけれど、ここと逆に近いな。本腰入れて外で働くのが男。
外に働きに出ない女性も居る。逆はほとんどいない。
子供を産むことができるのは女性だけだし、母乳が出るのも女性だけだ。
だから、子供が生まれてしばらくは、女性は仕事を休むことになることが多い。
でも、ここの女は強いな。子供産んですぐ働くだろ」
「はあ」
相槌は打つものの、ガスパール(テリオス)には理解が追い付かなかった。
この世界の女性は子供を産んでも働く。子供を産んでしばらく休むというのがわからなかった。
でも、これはわかる。男女共に、寿命が長いなら、生涯を同じ相手と共に一緒に過ごすことができる。
「100期(50年)以上も共に生きるのであれば、一緒に生きると言えますな。ここでは無理ですからな」
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そう。だが、俺には無理だった。
「ああ。俺の世界ではそれが普通だ。
でも、俺は、帰っても一緒の時を過ごす人は居ない。
仕事で話をする人は居るし、周りに人はたくさん居たけれど。
仕事は、俺が居なくなったら、少し困る人は居るかもしれないけれど、代わりはいくらでもいる。
あの世界から俺が居なくなっても、誰も困らないし、俺も困らない。
だから、どこか居場所を探していたのかもしれない。ここは男は短命だろ」
「そうですね。私ももう、寿命が近いです」
「もうすぐ死んでしまうとわかっていても、あまり残念そうにも見えないんだよな」
そう言うと、ガスパール(テリオス)はこう答えた。
「今は少しだけ残念です」
ガスパール(テリオス)にも、何か心残りはあるようだ。
俺は長生きしたくは無いが、大事な人と一緒に暮してみたかった。
俺はここで、短い間だけ誰かと生きて、さっさと死にたかったのかもしれない。そう思う。
ただ、この年で来ても遅い気がする。
満足して死ねない気がするのだ。
そんなことを考えていると、ガスパール(テリオス)が言う。
「ですが、あなたは、ここでもまだ長く生きそうです」
「だとしたら、イマイチだよな」
この反応は、ガスパール(テリオス)には奇妙なものに見えた。
ルルシアを妻に迎え、延々生き続けるようにも見えるのに、まるで男の寿命が短い世界に望んでやってきて、さっさと寿命で死にたがっているように見えるのだ。
そこで、シートの言っていたことを思い出す。
この神様は、すぐに逃げてしまう。
だが、人間の女を愛でる性質があり、愛でる女が多くなると逃げることができなくなる。
愛でる女が増えたら、死を望まなくなるかもしれない。
長生きしたがるのかもしれない。
幸い、この神様は孤独を感じている。
”石”は女に会わせるために、この神様を呼び出す道具なのかもしれない。
一緒に暮す女を探しに来たわけでは無いのだろうか?
「ここに来た理由は、ルルシアに会うためにではありませんか?」
「ルルに?」
「はい」
「ここに来た理由はわからない。
”石を探せ”と、”テラを助けてはいけない”それしかヒントが無い」
「テラを助けてはいけない?」
「実際、テラだと聞いた時、動けなくなった」
あのときのことだ。ガスパール(テリオス)はすぐ思い当たる。
「すみません。私が嘘を言ったせいで」
「まあ、あれで地震のことがわかったし、悪いことばかりでも無かった」
「そう言っていただけると助かります」
「でも、俺のヒントはそれだけだった。他には何もない」
本当に、笑えるほどヒントが無かった。
「ですが、ルルシアと会うまで時間が止まっていました」
確かに、その通りだと思う。俺は一晩しか経っていないと思っていた。
なのに、翌日にはルルは、ずいぶん大きくなっていた。
この状況で、ルルは関係無いと考えるのには無理がある。
「それを考えると、ルルに何かあるんだろうな」
この老人は、何かありそうなことには気付いているようだ。
ルルシアを妻にする気はあるのだろうか?
今言うべきか? ガスパール(テリオス)は、切り出すタイミングを見計らっていた。
すると、老人も、核心に迫る話をはじめる。
「俺は、石に呼ばれて、ここにきたと思う。ガスパール(テリオス)も石に導かれて生きてきた。
石が子供を作らせたなら、俺はその子供とも会うのかもしれない」
上の子の話か、テリシアも含めての話か?
「石に導かれて……そうなのかもしれません。
私は若い頃、子を残さずに待つものと思っていたので、寿命が足りなくなって、
てっきりもう竜には会えないと思ってました。
シートとテリシアには悪いことをしてしまったかもしれません」
「悪いこと?」
「シートとテリシアは、あなたが来るのを待っていました。2人はあなたが来ると信じていて。
ところが、実際に来たのは、ルルシアのところで、テリシアを助けてはいけない?」
「ああ。”テラ”を助けてはいけないと聞いた」
「はい。実際に、ルルシアを助け、またルルシアの前に現れました」
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俺は、”テラを助けてはいけない”と言うヒントを得て来た。
助けたのはルルシアの方で、今日またルルシアの前に現れた。まあ、俺にとっては、昨日助けて、今日も会っただけだが。
理由は不明だが、確かにその通りなのだ。
俺が来るのを待っているのは、テリシアだった。
ところが、俺はテラを助けてはいけない。
でも、会うのは構わないのだろうか?
上の子に会うなら、下の子に会っても良いと思うが、例えば、テラが怪我をしていたら、重症だったら、俺は助けようと思うはずだ。
だが、俺はテラを助けてはいけない。
どうするべきか。
それより、俺は凄く気になっていることがあるのだ。
何よりその謎の石だ。
ガスパール(テリオス)は、1回目に竜に会ったとき、石の話を聞き、
2回目に会ったのが”竜のガスパール”。”竜のガスパール”は石をくれた。
また竜と会うと思ったけど、予定より子供が増えて、ガスパール(テリオス)は、竜に会う前に死ぬと思っていた。
ところが会えた。その竜というのは俺のことで、俺を竜にカウントするのはどうかと思うのだが、ここの普通の人間ではない存在と会ったという意味であれば、そうかもしれない。
で、竜も俺も、どうもその”石”と関係がありそうだ。
もっと言ってしまうと、これって、その”石”が俺を呼んだってパターンだよな?
その”石”にはやはり、”竜のガスパール”が入っているのではないだろうか?
俺は竜のガスパールの体を運ぶ役なのでは? 俺は体を奪われる役って気もする。
いや、人間のガスパール(テリオス)は、外国にいる妻に会えと言うから、この人間のガスパール(テリオス)は、石を渡した後も、俺が自由に行動できると思っている。
俺は、石を受け取ったら、”竜のガスパール”になってしまうわけでは無いのだろうか。
”石”のことをよく聞いてみることにする。
「ガスパール(テリオス)は、その石から何か読めたり、石が指示を出したりするのか?」
「いえ。私には何も感じられませんが、ただ、妻は石の記憶と言っていたので、
石には記憶が入っているのかもしれません」
記憶が入っているが読めるわけではない?
それに操られているような感覚は無いようだ。
「石はこれです」
そう言ってガスパール(テリオス)は、首飾りを見せる。
うお、なんだよ、持ってたのかよ!!
思ってたより、凄く小さなものだった。
「これを受け取る前に、約束して欲しいことがあります」
約束と言われても、俺は石を貰った後、どうなるかわからないので先に言っておく。
「外国の妻のところには、行けるかわからない。
俺はすぐに、俺の世界に帰るかもしれない」
「いえ、ルルシアのことです」
「ルルが?」
「妻のシートは、テリシアを……」
シートとテリシア? あ、そうだ!!
「そうだ、奥さんは、いつ帰ってくるって?」
「奥さん?」
あ、ここだと通じないのか。
「シートはいつ帰ってくる?」
「今日と明日はいません。
すみません。実は、妻とは顔を合わせて欲しくないのです」
会わせたくなかった。そんな気はしていたが、やはりそうだったか。
「俺も、テラと会うべきか迷っていて」
「2人は一緒に戻って来ます」
「なら、2人には会わずに帰ろう。明日いっぱいは居ないんだな」
「はい」
「そうか、じゃあ明日いっぱいは滞在しても良いわけだ。
で、ルルがなんだって?」
「その話は明日にしましょう。今日は良い話をたくさん聞けました」
良い話には、妥協のことも含まれているのだろう。
あれは、それが効率的と言う、あんまり人に誇れない話なのだが。
「ああ。まあ、明日も時間はあるようだし」
「もう、酒も無くなってしまいました」
イソ〇ン味の何かも空か。
今日のところは解散だな。……いや、どこにも行かないが。
明日飲む分の酒が無くなってしまったか。
俺が金持ってれば、酒買ってくるんだが、ここは町から離れてるので買うのが難しい。
いや、でも、空の樽はあるから、入れ物はある。
ハチミツ酒とかは、町で完成品が買えるのだが、容器は別なのだ。
ハチミツ酒の値段は高いが、容器の値段もすごく高い。
森で酒を買った記憶はあまり無いが、ハチミツ酒より安い酒がある。
あれはなんだったか?
アルコール度数が低そうなやつだった。
それと、”最後の手段”的な感じで、大芋を一度干して粉にしたものから作る酒があったはずだ。
あれなら、何か獲物捕まえて売れば、そのくらいの金でも買えるか。
あ、あれ? 思い出した。
大芋の酒は通称”最後の手段”だった。
「さっきのイソ〇ン、大芋酒か?」
「あれはイソ〇ンと呼ぶのですか。大芋の酒です。
森にきてはじめて飲みましたが、凄い味ですね。
あれでも、長く寝かせてだいぶ丸い味になったものなのですが」
うわぁ。やっぱアレだったか。
”最後の手段”って呼ばれてたのもよくわかる味わいだった。
やっぱり、ガスパールにとっても不味い酒だったか。
でも、あれでも、丸い味って、作り立ては凄いことになってそうだ。
あ、いや、そういえば、飲んだことある気がする。
なんか、もっと”最後の手段”的なものを飲んだことがある気がしてきた。
こんなにイソ〇ンじゃ無かったから気付かなかったが、確かにクソまずい酒があった。
冒険者が持ってる酒は危険なのだ。
あいつら、はじめっから、”最後の手段”みたいな酒を出してくるからな。
あんな、超必殺技みたいな味の酒をはじめから出してくるのだ。
紹興酒に苦みと渋みを加えて、糠味噌で香り付けしたようなやつだった。
※うまく作れば、糠味噌の臭いはしません!
あれを寝かせたやつが、あのうがい薬のようなやつだったのか!
※実は、”最後の手段”は、初期(2~3章あたり)の頃、アイスがたまに飲んでました。
アイスは”最後の手段”は普通の酒だと思っていたため。
アイスに限らず、森で冒険者の飲み会する時は、けっこう出てきます。




