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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
30章.ルルシアを助けに来た老人、その後

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30-29.ルルシアを助けに来た老人、その後(22) おっさん尊敬されて居心地悪くなる

だんだんと、終活の時期が近付いてきます……

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


俺は、理由は不明だが”石”を探しに来た。


その同じ”石”が原因でガスパール(テリオス)が妻たちと出会い、子を作る原因となっているなら、俺は、ガスパール(テリオス)の妻や、子供に会うことになりそうだ。

既に会っている、ルルシア以外の子供にも会いに行く可能性がありそうだ。



とりあえず、子供の人数と、生まれた間隔を確認する。

話を聞いた限り、ほとんど間隔が空いていないはずだ。


「はじめの、どこか外国の族長と、ダルガノードの学者さん、

 で、今一緒に住んでるシートとの間に子供が居る」


「はい」


「子供は3人居て、3人とも間隔空いて無いんだな」

「一番上とルルシアは1期(半年)も空いて無いでしょう。時間の制約が有りまして。下の子は急いだわけでは無かったのですが2期(1年)程度です」


男だと下手すると、ガスパール(テリオス)より見た目が上みたいになっていたら困ると思ったが、3兄弟は、ほとんど歳の差が無い。

ルルシアが真ん中で、3人とも、だいたい似たような歳ということになる。

ルルシアと1歳も変わらないなら、まだ小学校を卒業していないくらいの歳だろう。

まだ子供は居ないはずだ。つまり、男だとしても、見た目の年齢が、おっさんみたいになっていたりしないはずだ。


この世界では、男の場合、子供の有無で、実年齢と見た目の年齢に差が出るから、一気に捜索が難しくなってしまう可能性がある。


ガスパール(テリオス)は、石の影響で、見た目の老化が出ていないようなことを言っていたが、再確認する。


「ガスパール(テリオス)は、こども3人居るのに、見た目は若いよな。本当だったら(子供が3人居れば)もっと老けるはずだよな?」


「それも石の力です。石を持っている間は、子に譲った分の歳は見た目に現れません。

 でも、見た目だけです」


おお! そうか。子供に譲ったって考えれば良いのか。

1人あたり20期、つまり10歳年をとる。ガスパール(テリオス)は30歳ちょっとくらいか?+3人分で60歳。

すぐ死ぬって歳でも無いように思うが、ここの人の寿命は短いのだろう。

でもな、確か70歳に見えるような男が、けっこう居たんだけどな?


ガスパール(テリオス)の寿命が迫っていることは、話をして十分に理解できる。

実際どうかは別として、ガスパール(テリオス)自身が、そう感じているのは確かだ。

”超必殺技”を使えるほど死期は迫っている。

見た目が若いのは石の効果。


石を持ってると実際に老けないならともかく、見た目だけ老けないと言うのも妙だ。

見た目の若さは副次的なものか、それとも、子供の数を悟らせないためのものか?


それに、寿命にも違和感がある。60歳相当は、持病があるならともかく、日頃は元気だけど、些細な病気であっけなく死ぬと言うパターンが多そうだ。基本は、もうすぐ死ぬって感じでは無いと思うのだ。


日本だって、昔の人でも長生きな人は結構長生きだった。

平均寿命40歳とかでも、60歳で元気な人もけっこうゴロゴロ居たと思う。

子供のうちに死ぬ人も多かったから、平均は短いが、寿命自体は昔から長生きする人は長かった。


ガスパールの場合は、石の効果で、見た目の年齢を若く見せるために、それがかえって体に負担をかけている可能性もありそうだ。


それだけじゃない。

その石には、若さと別の効果も持っている。


石が外国までテリオス(ガスパール)を誘導した可能性がある。

その石は、自分の意志を持っていて、テリオス(ガスパール)を誘導したのかもしれない。


竜に会ったことがある人物がなど、ほとんどいないのに、竜に会った2人を引き合わせた。

しかも、はるばる外国まで行ったのだ。

その相手の族長の女も、竜と話をしようとした。

これが偶然とは考えにくい。


普通に考えて、竜を見たら逃げる。話をしようなどとは思わないだろう。


森ならともかく、ダルガンイストの方だと勇者信仰があるから、竜は敵だと思っているはずだ。


「外国の族長さん(既に名前忘れてる)のところに石が行ったのは、偶然では無いと思う」


「そうかもしれません」


まあ、そのくらいはガスパール(テリオス)も気付いているか。


「俺も、その石を……」

「あれが無ければ、ラグベルを失わずに済んだ」


話始めた時に、重なってしまった。ガスパール(テリオス)の話を聞く。


「でも、相手がカタイヤでなければ、子を残すことは無かったでしょう。

 だから、私はこんな半端な生き方になってしまった」


”半端な生き方” 本人はそう言っているが、それが自分で選んだことであれば半端なんてことは無い。


「半端?」

「はい。恩人のカタリナには恩を返せず、ラグベルの仇、カタイヤの子を残した。

 その上、そのことを隠して、ここで暮らしているのです」


悔いがあるのだろう。でも、実年齢が若いだけに、考えが若い。

半端なことなど無い。


族長さんと子を残したのは、竜を待つ者という同志だったから。

ラグベルが死んでしまったのは、その族長さんのせいではない。


選べる中で最善を尽くしたなら後悔などする必要は無いのだ。

でも、ガスパール(テリオス)は、自分を責めているようだ。


「まあ、世の中、思い通りになることなんて、滅多に無い。

 最良の妥協点を探す。

 それを見つけて、有りもしない幻想に騙されずに生きる。

 それは立派なことだ」


----


”最良の妥協点を見つけて、有りもしない幻想に騙されずに生きることは立派”


ガスパール(テリオス)は衝撃を受けた。

神様が、人間にとっての正しい生き方を話したのだ。


そう。カタイヤをいくら恨んでもラグベルは戻ってこない。

カタイヤはラグベルを見たことも無いのだ。

ガスパールは自分でできる範囲で一番良いと思うことをやってきた。

でも、それは状況に流された中途半端な生き方だと思った。


でも、この神様は、有りもしない完全な物に騙されない生き方こそが立派だと言った。

後悔しても迷っても過去は変えられない。


その言葉に救われた気がした。


こんなことをさらっと言えるなんて、なんて凄い存在だろうか。

ガスパール(テリオス)は、この神様を心の底から尊敬した。


※この神様は、大学入試以降の人生を延べ200年以上歩んでいますので、プロのおっさんです。

 良し悪しはともかくとして、人生の真理、人間の限界を良く知っています。

記憶として直接は残っていなくても、思い出せないだけで、経験としては生きています。


「あなたに会えて、こうして話をすることができて良かった。

 私が待っていたのは間違いなくあなたです」


ガスパール(テリオス)は、どわーーーーーと涙を流す。


----


”うえええええええええええ???”

やべぇ、中途半端に、テキトーに生きてきた俺の処世術的な基本方針を話しただけなのに、なんなんだ!! この反応は!!


おっさんは、凄い勢いで混乱した。


……………………

……………………


仕方が無いので、自分の世界の話を聞かせる。

他に話すネタが無いから。


おっさんの心構えを話すと、また感動されて、俺の居心地が悪くなってしまうのだ!!

俺のようなおっさんの言うことなど、年寄りの遠吠え位に思うと思ったのに、真に受けるなんて……

そう思っていると、何か嫌な記憶が蘇ってきた。

そうだ! 俺は、この世界ではだいたい、年寄りの産廃みたいな扱いだったような気がする。


尊敬と産廃扱いと両極端なのは、どちらもあまり嬉しくない。

とは言え、俺は俺の世界で何もなかった。


「俺は……別の世界から来た」

「はい」


「俺の世界の話をしても、たぶん意味が無いと思う。でも、他に良いネタが無いから」

「はい。聞いても意味は無いのかもしれません。

 でも、差し支えなければ、聞かせてください」


自動車や高層ビルの話、飛行機や電車の話、電話の話……どうも科学が発展した話ばかりだ。

もうちょっと当たり障りのない話が良いな……と思い、燃料の話から始める。


「まず、ここと違うのは、燃料が薪じゃない。炭でも無いぞ」

「何を使ってるんですか?」


「ガスとか、油。燃えカスが残らない。電気はどうやって説明すれば良いかな?」

「雷?」

ああ、電気は伝わらないよな……

エネルギーの概念が無いのか、電気と言うと雷に変換されてしまう。


「まあ、沸かしたての湯が何時でもすぐに使える。

 そして、お湯を入れるだけで、すぐ食べられるような食べ物がある」


「はあ」


ん? あんまり反応良くないな。

俺はこの世界で食べ物には散々苦労した気がするが、それは比較対象があるからで、知らなきゃ関係無いか。

別の話が良いか?


ガスパールは、神様が何を話そうか、迷っていることに気付いたので、気になっていたことを聞いてみる。

「砂糖があって、ワインも豊富にある国ですよね?」


「ああ。いくらでも。砂糖もワインも、いくらでも手に入る。

 俺は裕福な方では無かったけれど、砂糖やワインなら中毒で死ぬくらいの量を買うことはできた」


「裕福では無いのに?」


砂糖やワインを買えるのに裕福ではないというのは、ガスパールには想像しにくかった。


「まあ、凄く安いんだ。砂糖もワインも。

 砂糖なんか、毎月……30日ごとに、ガスパール(テリオス)の体重の2倍や3倍買える」


砂糖がそんなにあったら、30日分の砂糖だけで一生どころか、何代もに渡って、働かずに遊んで暮らせるほどの莫大な金になりそうだ。


ガスパールも、土地ごとに高い物と安い物があって、運んで売るだけで差益が得られることは知っていた。

だが、そういうレベルの話では無い。いくら差益が得られも、元手が無いことには仕入れができない。

この神様が住むところでは、砂糖が安いと言うが、やはり収入自体が莫大に思える。


「裕福では無いのですか?」


どう言えば良いか。ここで言う冒険者ほど酷くは無い。

俺の世界の基準で見ても、給料自体は、比較的平均に近い気はする。

同じ収入で家族持ちも居ると思うので、あまり安いとか貧乏とか言うのも良くは無いと思う。


「ああ。貧乏では無いけど、裕福な方でも無いだろう。

 住む場所、狭い部屋借りるのに、その何倍も金かかるから」

「そんなに豪華な?」


これは言うと思った。俺の部屋は決して豪華ではない。


「いや、質素だ。砂糖が無くても困らないけど、住む場所が無いと困る」

「不思議な国です」


まあ。でも、俺にとって住む場所は必須だが、砂糖はさほど重要ではない。

俺は一人暮らししている間に、砂糖を何回買っただろうか?

そんなに何度も買ったことが無い。いくら安く手に入っても、そんなにたくさん使わない。

1回買ったら年単位で減らない。まあ、砂糖は腐らないが。


俺の世界では、物は比較的簡単に手に入ったが、俺は孤独だった。

だから、砂糖の価格より、俺はもっと欲しいものがある。


「そうだな。話したいことが見つかった。俺は、横浜という街に住んでいた。

 竜は居ない。人間ばかりがたくさんいる国だ」


「人間が多いのですか? この世界よりも」


「この世界は俺の世界と比べると人が少ない。

 俺が住んでた町はダルガノードの100倍とかそういう単位だと思う」


「100倍? ダルガノードは大きな町ですが?」

「俺の国とは人数に差がある。

 ここの人口が正確にわからないけど、俺の住んでいた町は100万人単位。

 300万とか400万人だ」


ガスパール(テリオス)には100万人という数字がどういう数字なのか想像もできなかった。

「100万人という人数が、私にはわかりません」


「まあ、100万人が並んでるところを俺も見たことが無いと思うが。

 人数が多すぎると、人が障害物になっちゃうんだ。歩けばぶつかる。

 なるべくぶつからないように歩く。

 そんな感じになる。

 ほとんど家や建物に閉じ籠っているけど、それでも出歩くときは、

 人を避けて歩くような場面も多い」


駅や繁華街。人の流れを見ながら歩く。

通勤なんか、慣れないと自分の行きたい方向に行くのも難しかったりする。


「あまりにもたくさんの人が住んでいたけれど、俺は孤独だった。

 人が多すぎると、ほとんど全ての人は他人になる。

 存在をスルーするようになる」


「スルー?」

「ああ、なんて言うかな。関わりを持たないように努めるって感じの意味かな。

 特に必要が無い限り、お互いに関わらない。関わったらきりがないから」


「はあ、そんなものですか」


「今日の、あの女たちみたいに、暇だからって付きまとうと、罪になる」


「罪になる?」

「人が多いから。人が多すぎると、知らない人と接点持ったらきりがない」

「人が多いとそうなりますか」


正確に伝わったわけではないが、知らない人と関わり合いを持つことが異常と考えられる世界だと言うことは伝わったようだ。


「だから。人はいくらでも居るのに、俺は孤独だった」

「人は居るのに孤独。でも、わかる気もします」


ガスパールも、ここには隠れ住んでいる状態に近い。

親しい友人は居ない。名前も変えて、過去は捨ててしまった男。


俺は、隠れ住んでいるわけでも、名を変えて生きているわけでもない。

でも孤独だった。俺の国では、孤独になりやすい。

人が多くなると、自然とそうなる。


「知らない人とは関わらないのがルールだから。

 親は居たけれど、早くに亡くなった。

 この早くというのは、俺の国の基準でだけど。

 まあ、多少長生きしたところで、親子は同じ時を生きられない。

 同じ時代を過ごして、一緒に死ぬ連れ合い……妻が欲しかった」


「一緒にと言うと、男は皆長生きなのですか?」


「子供作っても寿命は減らないからな。ただし、女より少しだけ短めだ」


俺の世界でも、通常女性の方が長生きすることが多い。

その理由には諸説あるが、先天的に男の方が不利な面もある。


染色体を見ると、女が完全体で、男は、男という性別に変化するためにバランスを崩した存在だ。

女性はAからXまで、全て2本が対になった染色体を持つが、男性はXを1本しか持たず、XとYがペアになる。

Xを1本しか持たない男性は、X由来の遺伝性の病気を発症しやすい。

わかりやすい例では、赤と緑の色の差がわかりにくい色弱という特性を持つ人が20人に1人程度の割合で存在するという。

だから、おそらく、人生の中で頻繁に遭遇しているはずだが、あまり遭遇したという認識が無い。

日常生活で大きな支障は無いのだろう。

隔世遺伝といって、その症状の原因となる遺伝子を運ぶのは女に限られる。そして、それを運ぶ女性は、その現象が出ない。


それと、男の一人暮らしの短命ってのもある。

比率としては少なめではあるが、夫婦で妻の方が先に亡くなることもある。

その場合、残された夫の寿命は短い。俺の父もそうだったし、俺なんか、今でも長生きしたくない。

たぶん、男と言うのは、そういう生き物なのだ。

男の一人暮らしは早死にする。たぶん、男は1人になったら長生きしたくないのだと思う。


ただ、その割には、寿命に、大差はない。一割にも満たない程度の差しかない。

俺の感覚だと、そこが変に思える。


でも、これからは男女の平均寿命は開く方向に進むかもしれない。

昔は出産が原因で命を落とす女性が居たが、医療の進歩と少子化で、それは減る。

そして、未婚の男女が多増える。1人暮らしの男性が増える。


今でも、一人暮らしは多いのだが、平均寿命が確定するのは死んだときなので、結果が見えるのはだいぶ後になる。

俺の世代が実は女性の平均寿命100歳近くになっているかもしれない。

あんまり長生きすると、子供の方が先に亡くなる可能性が上がるし、やはり適度な寿命と言うのがあると思う。


寿命が、あまり長くないと言うのはメリットでもあると思う。


俺は介護で若い世代に負担をかけてまで長生きしたいと思っていないのだ。

でも、俺の心臓は、俺の意思を無視して動き続ける。


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