30-28.ルルシアを助けに来た老人、その後(21) ガスパール第三の妻の存在
仕切り直しで石の話に戻る。
「その、俺が探してる石は、竜のガスパールに貰ったものか?」
ガスパール(テリオス)は、あっさり答える。
「はい」
ああーー、なんてこった。筋書きが見えた気がする。
これが、物語の中だとすると、この流れだと、”俺が竜のガスパール”じゃないか?
俺は覚えていなかったが、いつの間にか、竜としての生を終え、この姿に、人間として生まれ変わったのかもしれない。
……普通、生まれ変わると、赤子になるか、若者になると思うのだ。
いや、まあ、俺も昔は若かったので、語弊があるが、問題は、
”なんで、こんな老人扱いされる年になって、ここにやってきたのか”だ。
人間として活躍するなら、この歳でここに戻ってこないだろう。
俺が”この世界の竜”から、”横浜で人間”として生まれ変わって、再びこの世界に戻ってきたとしたら?
俺が竜のガスパールで、自分の死期を悟って、何かのアイテムを、この人間のガスパールに託した。
その石を得ると、俺は何か力を取り戻す。
俺は、石は欲しくない気持ちでいっぱいになった。
俺の気持ちは沈んだが、ガスパールの話は続く。
「”大きな竜・ガスパール”が来たのは、地方の男子学校に居た時のことでした……」
……………………
※過去に投稿した部分と被るので、未読の方は 20-15.テリオス(1)参照
……………………
ガスパール、元はテリオスと名乗っていたこの男は、ろくに覚えていないほど幼少の頃、竜と会ったと言う。
そのとき、”再び竜と会う”ことと、”石”の話を聞いた。
そして、それから何年か後、実際に再び竜に会った。
その竜は、話が通じる相手を探していた。テリオスは、その竜と会話することに成功した。
ところが、その竜は、性別を気にしていた。その竜は女を探していたのだ。
男では寿命が足りないから。
テリオスが、石の話を伝えると、竜は去っていった。
確かに、この話を聞くと、ガスパール(テリオス)の人生は竜の影響を受けている。
どうやら、子供の頃から、竜のことばかり考えていたようだ……
なぜ、そこまで竜に魅了されたのだろうか?
小さい頃、”竜に会った”と言っても誰も信じてくれないくらい、ほぼ伝説上の生き物だったのに、ガスパールは竜を待ち続け、そして、何故か、また会った。また、話をしているのだ。
ところが、俺が真面目に聞いているのに、ガスパールは、いきなり妙なことを言い出す。
「ラグベルは美しかった」
「は?」
ラグベルは美しかったじゃねーーよ!!!!
石の話じゃねーのかよ!!
俺は全力で突っ込みを入れた、俺の心の中で。
「ラグベルは、私にとって、特別だったのです」
ラグベルって誰だよ。俺の知らない名前出しやがって!!!!
俺がそんなことを考えていると、ガスパールは気付いたようだ。
「大事な話ですから。石を持ってきたのは竜ではありませんでした」
ラグベルの容姿より、そっちを先に話せよ!!と思った。
「そのラグベルが石を届けに来た?」
「はい。私ははじめ、ガッカリしました。竜が持ってくると思っていたので」
美しかったのにガッカリ?
「人間が持ってきてガッカリした?」
「ラグベルは、初対面の時はあまり良い印象は無くて……まあその、あまり良い印象では無かったのです」
…………
ガスパールの言うことは、あまり意味が分からなかった。
ラグベルに好意を持っていたように聞こえるのに、はじめは良い印象ではない。
はじめは事務的だったのに、だんだん打ち解けたとか?
ああ、わかった。
定番のツンデレキャラをガスパールが知らなかったから、最初の印象悪くてギャップでやられたんだな。
それは、物語では割と定番なのだが。”ギャップ萌え”という現象だ。
※ぜんぜん違います。”20-15.テリオス(1)”参照。
なお、テリオスが後に改名したのが現在のガスパールです。
まあ、とりあえず、石を持つ運命は、ガスパールにとっては幸せなことだったようだ。
石のせいで不幸になったとか言われたら、俺は残念な気持ちでいっぱいになってしまって、目的を果たせなくなる気がするから、歓迎してもらえる仕様になっているのだろう。
俺の心の弱さに対応した難易度設定で助かる。
ふと横を見ると、ルルが眠そうにしている。
そういや、今何時か分からないけど、いい加減遅くないか?
「ルル、寝なくて良いのか?」
「ルルシアはそろそろ寝た方が良い。この方は明日も居るから」
「ほんと?」
ルルは、明日も居ると言う部分が聞きたかったようだ。
なんか勝手に決められてしまったが、酔っ払って帰るのも大変そうなので、こう言う。
「まあ、今日は泊っていくよ」
「うん。わかった。おやすみなさい」
「おやすみ。うるさかったらごめんな」
ルルは、俺が勝手に帰らないように見張っていたのだと思う。
小遣いをあげたわけでも無いのに、ずいぶんと慕って……小遣いか……小遣いくらいあげたいが、俺は金持ってない。
ぐふ、俺はお子様にあげる小遣い程度も持っていない男なのだ。
ルルから見ると俺は命の恩人ってことになってるけど、それ以上の好意を感じる。
竜とか神様は、ここでは憧れの対象なのだろうか?
ルルが眠そうに、とぼとぼ隣の部屋に行くが、ガスパールは、あまり気にせず話を進める。
「その石は、カタイヤの手に渡り、カタイヤを妻にしなければならなくなりました」
また新たな妻が出た。カタイヤって嫁も居るのか。
ここの男は何人も妻がいることがあるので、妻が何人で、子供が何人居るのか覚えるのが大変なのだ。
俺は他人の家族構成を覚えるのが、すごく苦手なのだ。
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”妻?”
ルルシアはベッドのある部屋に行こうとして部屋を後にしたが、
去り際に凄い秘密を聞いてしまった。
ルルシアの知らない妻が出てきた。
父、ガスパールには、2人の妻が居る。
ルルシアの母とテリシアの母だ。だが、さらにもう1人居るのだ。
ルルシアは、”ラグベル”は誰だかは知らなかったが、名前は聞いたことがあった。
だが、”カタイヤ”の名ははじめて聞いた。しかも妻だと言う。
ルルが生まれるより前のことだ。
妻が居るなら、ルルにはお姉さんかお兄さんが居るかもしれない。
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「私は、少しの間、ランデルに滞在しました。女の格好で過ごしました」
酔っ払っているのか、ガスパールはよく話す。
でも仕方が無い。ガスパールがこうして、いろいろ話せるのは俺が相手だからで、今までは誰にも話せない秘密を一人で抱え込んでいたのだ。
なぜ女の格好で過ごしたのだろう?
酔いのせいか、カタイヤに対しての感情も、わかりにくい。
カタイヤとカヤハルとカタリナが居る。
俺は人の名前を覚えるのが苦手なので、誰がどうで、誰が何したと話を聞いてもよくわからない。
「でも、カタイヤは同志でもあり……カタイヤも、あなたが訪れるのを待っています。
できれば、会ってもらえないでしょうか」
「カタイヤが俺を待ってる?」
でも、俺はそこに行かずに帰るつもりなんだが。
「あんな女ですが、竜と会うことに関しては真剣。私の同志なのです。
できれば、上の子にも会ってやってください」
あんな女って、どんなだよ。
「族長の女が、カタイヤなんだよな?」
「そうです。族長。乱暴で強引で狡猾。
でも約束は守る。そんな女でした。
でも、話を真剣に聞いてくれたし、優しいところもありました。
立場上、ああするしか無かったのでしょう」
さっぱりわからないが、立場上身動きが取れず、強引だけど、約束は守る。
守れる約束しかしないから、強引だったり狡猾だったりするのだろう。
根は良いやつ……やっぱ、このガスパール(テリオス)は、ツンデレ系に弱いのではないだろうか?
とはいえ、そもそも、カタイヤが待ってるのは竜だと思うのだ。
「この姿で竜が来たって思うのか?」
「わかりませんが、恐らく」
わからないのかよ! と突っ込みを入れるが、俺もわからないんじゃないかと思っているのだ。
竜と会うのが目的なのに、俺が行って、”ども、俺が竜が人になった神様です!”とか言えば良いのか?
その場で殺されそうだよな……俺が、そのくらいで死ぬかわからないけど。
何故か俺は、あまり、人間相手に死ぬようなことは無いような気がしている。
「で、子供の名前は? やっぱりテラなのか?」
「 いえ、外国なので、こことは別の名で呼ばれているでしょう。
女だったらラハスイスと呼ばれているかもしれません」
名前は知らないけど、推測できる?
「ラハスイス。わかった。男だったら?」
「わかりません」
カタイヤの娘がラハスイス?
ガスパールに関係する名前なのか?
男だと名前不明か。どうやって探せば良いのだろうか?
男は短命だと言うが、ガスパールの息子なら、そんなに年取ってないよな?
まだ考え事が終わって無いのにガスパールが話を続ける。
「あのとき、私が石を無くさなければ、ラグベルを失わずに済んだのです……」
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※”28-14.トルテラ帰還カウントダウン(14)カヤハルの失敗とテリオスとカタイヤの遭遇”
あたりを読んでください。
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ラグベルが居た期間は短かったようだ。
外の世界に連れ出してくれる大人の女性は、若き日のガスパール(テリオス)には眩しく見えたのだろう。
ただ、ラグベルが貧乳だったせいで、ガスパール(テリオス)は、極度の貧乳好きになってしまったようだが……この世界の男は、デフォルトで貧乳が好きなのだろうか?
俺は、貧乳好きだと思われるのが嫌だったような記憶がある。
正直なところ、大小はあまり大きな問題では無いように思う。
小さくても、母乳が出るなら問題無いと思う。もしかしたら、大きくないと出が悪いのだろうか?
だとしたら、子を育てるうえで、胸の大きさは大きな問題になる。
とは言え、胸の大きさで相手を選ぶかと言うと、そんなの大きな影響あるだろうか?
俺は貧乳好きだと思われることが嫌だった記憶がある。
そもそも俺に妻は居ないと思う。
誰の乳がどんなサイズであろうと、俺にはあまり関係ない……
カタイヤは直接関与していないかもしれないけれど、ガスパールにとってはラグベルの仇。
で、カタリナに会いに行ったら、本当のカタリナはカタイヤの方だった。
しかもどうやら巨乳っぽい。
大好きな貧乳女の仇が巨乳だったら、巨乳嫌いになる気持ちもわからなくはないが。
それはそうと、俺は元から人を覚えるのが苦手だ。しかも名前だけ聞いてもさっぱりピンとこない。
その上酒を飲んでいるのだ。
これ絶対、明日覚えてないと思う。俺は名前覚えるの苦手なんだよ!!
たぶん俺は、明日になったら、『ガスパールは貧乳好きなのに、外国の妻は巨乳だった』ことしか覚えてないと思う。
誰だかが貧乳で、誰だかが巨乳。確か、ツンデレも居たはずだ。
……ぬぅ。
俺は、潔く、名前と乳の大きさを覚えることは諦めた。
ガスパールには3人の妻と3人の子供が居る。ガスパールは貧乳が好きだが、巨乳の妻も存在する。
明日、どこまで覚えていられるか?




