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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
30章.ルルシアを助けに来た老人、その後

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30-27.ルルシアを助けに来た老人、その後(20) ヨウ素のうがい薬味

だんだんと、終活の時期が近付いてきます……

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


神の国のものという特別なものではなく、”人間の力で”、より高度な道具を生み出すことができることを伝えたかったが、写真は俺には作れそうもない。


金属板があるので、蒸気機関位なら作れそうな気もするが、技術の伝道が目的ではない。


人々が自然の脅威に負けそうならともかくとして、今、幸せに暮らしているなら、余計なものは持ち込まない方が幸せだろう。


多少不便なくらいでちょうど良い。


俺の世界の人間は、強い力を持ちすぎて、自然を破壊してしまった。


大量輸送手段なんか、教えない方が良いだろうな……


カメラの話も、余計なことを教えてしまったかもしれない。


まあ、でも、技術的なことは何も話していない。

影響は少ないだろう。


========


目的……そろそろ本題に入るか。


ガスパールは、あっさり話す気はあるだろうか? 話してくれそうな気はする。

ストレートに聞いてみる。

「俺は石を探している。なんで俺が石を探してるって知ったんだ?」


「はあ。そろそろ話しておきますか」


石の話をすると、あっさりガスパールは乗ってきた。

ガスパールが切り出すかものかと思っていたが、さっさとこちらから切り出せば良かったか。


カメラの話とか、余計な話をしてしまったか?


ガスパールは真剣な顔をして、立ち上がるとこう言った。

「その石には、いろいろありまして……私の人生そのものかもしれません」


よほど重い話なのだろう。先にどうでも良いことを話しておいてよかったかもしれない。


と思うと、ガスパールは他の部屋に向かう。


早速”石”を取りに行ったのか?


石が人生そのものって……俺が石を探すイベントに、ガスパールを巻き込んでしまったような気がする。


ところが、ガスパールが持ってきたのは、かなり古ぼけた(たる)だった。


「その前に……」

「なんだ?」


「せっかくなので、こちらも開けてしまいましょう」

「これは?」


「飲んでみてください」


そう言って、コップに注ぐが、かなり黒っぽい色をしている。

これ飲んで平気か?って感じの液体だ。

ただ、けっこう大事そうに扱ってるので、貴重なものなのかもしれない。


木の根っこみたいな匂いだが、酒か?


少し味見する。


木の根っこ味の何かだ。

「なんか、薬みたいな味だな」

そう言いつつ後味に、アルコールを感じた。


「これしか残って無いので」

そう言うと、ガスパールもコップに注ぐ。


ルルは無駄に興味津々だ。

「わたしは?」

ルルも欲しがるが、これは無理だと思う。


「ルルはやめた方がいいと思うけど」

と俺は、一応止めたが、ガスパールがコップを差し出す。


ルルは、ちょびっと舐めて

「うえーー」と言って変な顔をした。


これは正直、俺でも”うえー”だ。


子供の頃は味覚が敏感で、”不味いもの”が、”ものすごく不味く”感じる。

歳をとるごとに味覚は鈍くなり、こんなものも飲めるようになってしまう。

歳と共に鈍るのは、味覚に限らずすべての感覚で共通だと思うが。


正直この味は、”酒なら何でも良い”のレベルのものに感じる。

昔、映画の一場面で、クソ不味そうな酒を造って喜ぶシーンを何度か見た。


時代と共に、ああいったシーンは見なくなった。

科学の進歩で、そんなクソ不味いもので喜ぶシーンが人々の胸に届かなくなったのだ。

共感できなくなったのだろう。


だが、俺は、俺の世界の一般人とはちょっと違う。

”不味くても酒は酒”


俺も俺の世界にずっといたら、この感覚は持たなかっただろう。

だが、1点、その映画の場面と違うところが。

映画の中のクソ不味い酒は、こういう色では無かった。


俺的には、何というか、この色、臭い、味的にちょっと思い当たるものがある。

はじめは木の根っこ味に感じたが、何口か飲んで、より似たものが思い当たった。


俺的には飲み物とは別ジャンルのものなのだが、俺の世界でも、比較的良く口にする機会のあるものだ。


でも、ルルの歯が茶色に染まっていないので安心する。


何というか、この酒、見た目も匂いも味も、アレに似てるのだ。


茶色のうがい薬。


ヨウ素で作られたうがい薬。

うがいに限らず殺菌作用抜群だが、色が濃いので使いにくいと言う欠点がある。

傷口に塗れば化膿止めになるが、色が衣類に付着しやすい。


俺の国は、ほとんど資源が無い。ところが、ヨウ素だけは豊富にある。

しかも、首都直下で採掘できる。同時にガスも出る。


俺の国は資源が無くて、ほとんど外国から輸入しているが、その首都は、温泉掘ればガス爆発すると言うガス田の上に建っているという冗談みたいな国なのだ。


その地下にたまった水には、ヨウ素が豊富に含まれていて、これは輸出するほど採れる。

それほど大量消費される物資では無いが、採算合うような金額で採掘できる国が少ない。


この不味い酒は、そのヨウ素で作った薬品と、とても良く似た味がする。

バイキンマンが即死しそうな味って感じだ。

バイキンマンについては解説したいことが山ほどあるが、また別の機会にしておこう。


ガスパールは、そんなに不味そうにはしていないので、俺の味覚に問題があるのか?

まあ、酒の味はさておき、ここからが本番だ。


「石の話をしてもらいたい」

「はい……」

ガスパールは、遠くを見るような眼をした。


確かに、その石の話というのは、ガスパールにとっては、人生を語るようなものなのだろう。


「私は、小さな子供の頃、竜と会い話をしました」


竜は滅多に人前に現れない生き物だったはずだ。

「竜が人前に出たのか。珍しいな」

と言いつつも、同時に、竜が人間の世界に滞在していることも知っている。

たしか、森には話ができる竜が居るはずだ。そいつと話したのだろうか?


※この老人は、自分がディアガルドと会っていることは忘れているので、

 今も森に竜が居て、その竜は人と会話が可能であるという程度の

 情報を覚えています


「その竜が、また竜に会うことと、石のことを教えてくれました」


「で、俺が来た?」


「いえいえ、私が竜に会うのは3度目か、4度目か」

「4度?」

竜がそんなに何度も人と会うと言う話は、俺は知らない。


ガスパールは、そのまま話を続ける。

「二度目に会った竜の名は”ガスパール”と言います」


「ガスパール? 竜の名が?」


目の前の男の名がガスパール。同じ名の竜が居るというのも妙だ。


「ガスパールと言うのは、元は竜の名前で、私は以前は”テリオス”という名でした」


ああ、そういうことか。後から、竜の名前に合わせたのだ。

「テリオスから名前を変えたのか」


「テリシアが生まれたから」 ルルが口をはさむ。


すると、慌てたようにガスパールが付け加える。

襲名(しゅうめい)と言いまして、子に名を譲る習わしがあるのです」


この世界にも襲名があるのか。でも、姉ではなく妹が名を受け継いだ?

平民が襲名するものだろうか?

もしかしたら、落ちぶれた貴族みたいな設定があるのかもしれない。


そうだよな……なんとなく、話の筋が見えてきた。


だいたい、女の子が出てくると、実は隣国のお姫様なのです!みたいな無茶な設定だったりするし、俺はそういうのは大嫌いなんだが。


俺はどうせすぐ帰るから、大層な設定が有っても、ただの大風呂敷。

広げたっきり放置になると思うのだ。何のための設定なのだろう?


※一般的には、こういうのをフラグと言います。

 回収に時間がかかるので無暗にばらまかないで欲しいものですね!



何故妹が継いだのかはわからないが、末子が継ぐという風習があるなら、それほど違和感は無い。

だが、末子が条件だとしたら、”テリシア”が”末吉(すえきち)”みたいな意味の名前だとしたら、さらにその下に子供が生まれると、末子の意味で付けた末吉に、さらに弟が居るみたいな、家族計画失敗しちゃいましたみたいな、ちょっと恥ずかしい名前になってしまう。


”明るい家族計画”的なところに触れるのは鬼門だ。

ここはスルーが大人の対応。


その話題はスルーした。


理由はともかくとして、姉の”ルルシア”ではなく妹の”テリシア”が名を継いだ。

俺はテラを助けてはいけないという条件付きでここに来た。

つまり、俺はガスパールの娘のうち、襲名しなかった子に会いに来たことになる。


末子ではなく、名付けの時点で、俺がテリシアでは無い方に会いに来ることを知っていた可能性がある。いや、逆か。俺がテラに会いに来ると知っていたから、テリシアに襲名させた。


俺がテラに会いに来ると思って、テリシアという名を付けたのに、俺はテラを助けるなという条件で、ここにやってきた。


どちらであっても、俺は姉妹の片方を助け、石を回収しに来る。

つまり、俺が会うのはガスパール。

そう考えると、”石”というのは、俺を呼び出すためのアイテムなのか?

このガスパールは俺をここに呼び寄せたかった?


それとも、”竜のガスパール”が俺をここに呼び寄せたかった?


あれ? ここで疑問が湧いた。


俺は、すごく聞き覚えのある言葉を思い出した。


”竜は竜に名前を付けない”。だから竜に名前は無い。


「竜は竜に名前を付けない」

「はあ……?」

「その竜の”ガスパール”って名前、どこから出てきたんだ?」


「ああ、確かに。竜のガスパールは名乗ったりはしませんでした。

 あとから調べたところ、”ガスパール”と言う名の竜だと言うことがわかったのです」


ああ、そうか。そうだ、竜に名前は無いけど、人間は竜に名前を付けるんだった……?


ここで、急に寒気がした。


俺にも名前があった気がする。俺には竜の名前があった気がする。

人は俺が竜だった時に名前を付けた。

俺は人々に恐れられ……その割には、意外に受け入れられた。


そんな気がした。


「どうしたの?」 ルルが何かに気付く。

「ああ。今更だけど、俺には人間に付けられた名前があったような気がする」


「竜の?」

「……竜だったときの記憶は無いんだけどな」


俺が竜のときの名がガスパールか?


「…………」

話が止まってしまった。


酒の不味さが、心に染みる。


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