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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
30章.ルルシアを助けに来た老人、その後

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30-23.ルルシアを助けに来た老人、その後(16) 必殺技とターボの関係

だんだんと、終活の時期が近付いてきます……

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


ぬおおおお、いったい、なんなんだ、この世界は!!

たかだか酒を飲むだけで、この重さ。

ガスパールは、死んでも構わん!!という覚悟で挑んでいるのだ。


※主人公のおっさんも、元の世界で似たことを言ってますが

 ”26-21.味覚障害(1)”参照


酒飲んで喋ってるだけ。

それは俺的には”普通のおっさんの普通の行動”なのに、ガスパールにとっては特別なことなのだ。

だから気合の入り具合が違う。


まあ、このワインだって、ここでは特別なものなのだろう。

ワインくらい、俺の世界でなら、俺の安月給でも抱えきれないほど買える。


ここに運ぶ方法があれば、持ってくるんだけどな……いや、転移後は、死ぬほど苦しむので、運ぶために行き来したいと思わないが。

だが、それ以前に、転移では一切物を運べないと思う。俺は来たとき服も着てなかった。


それにしても、俺があと何年働けば年金がもらえるか悩んでいるのに、こんなに若そうに見えるガスパールは、”どうせ死ぬから酒が体に悪くても何ともないぜ!!”という無敵状態に入っているのだ。


たぶん、格闘ゲームの体力ゲージに例えたら、ガスパールはもう既に、”超必殺技”を放てるほど残量が減っているのだ。



格闘ゲームと言うのは、俺の世界にあった高度な電子機器で作られた遊具の一種で、レバーとボタンを使ってキャラを操作して格闘技で戦うゲームのことだ。

俺が子供の頃は、こういうゲームは1人で遊ぶものだった。

電子機器が進化して発明されたもので、俺はそんなに得意では無かったが、俺が大学生の時流行ったので、けっこうやった記憶がある。


この時流行ったのは、機械側の性能の進化に加えて、操作系の発明が大きかったのではないかと思う。

体感と操作がうまく重なる操作系だった。

それ以前は、多彩な技を放つのにリアルタイム格闘なのにコマンド選択式だったり、2本のレバーで一発で技選択だったり、どちらとも、何の技を出すかを選んでいるだけで、リアルタイム感が無い。

そして慣れてしまうと、結果はランダムで変わるだけで上達の幅が狭かった。


”ストリートファイター2”というゲームが大ヒットして定着した。

その操作系が、その後の格闘ゲームで一般的に使われるようになった。


この操作系は、レバー1本と数個のボタンで、大技は出すのが適度に難しいので、不発だったり、大技出さずとも、一応は戦えたり(相手も大技出すと隙ができるので、そのタイミングに通常攻撃を入れることもできる)と、広い範囲で都合が良かった。


この必殺技は、”ストリートファイター”で実装されたものだった。

”ストリートファイター”は元々、こういうゲームでは無く、巨大なボタンを実際に叩く強さで出る技の威力が変わる体感ゲーム的なものだった。

裏技として実装されていた必殺技があり、その操作を普通のレバーとボタンのゲームに搭載したのが”ストリートファイター2”。これの出来が良すぎて、長期に渡り、ほぼそのままの形で、キャラや出す技が違うだけの変形版が多数開発された。それらを一括りにして格闘ゲームと言う。


2D末期と重なるため、この頃のゲームは、ドット絵が芸術的に美しい。

今となってはロストテクノロジーになってしまった。

俺は格闘ゲームが3Dになる必要を感じないのだが。

それまで2Dで流行っていたゲームは3D化の影響もあって退化し、流行らなくなった。


俺がやりたかったのは、もっと古くに流行ったゲームで、もっと子供の頃に遊んでおきたかったのだが、その年になるまで遊ぶ暇が無かったのだ。

大学生と言うと、この世界では良い大人だ。男だと下手すりゃそろそろ寿命で死ぬかもしれないくらいの年齢だろう。


そんな大人になってゲームに明け暮れた。俺だって、そんな歳になってからやりたかった訳じゃない。

その歳まで”自由な時間を持てなかった”のだ。


大学に入れば暇になるのではない。でも、多くの人にとって一息付けるのが、このタイミングだった。


中高と遊び足りず、その先進学する気が無い人にとっては、大学入学が一区切りになる。

そこでやっと一息つける。俺の頃は学部卒が多く、進学は少数派だった。

結果としては、俺の時代は就職が早いほど有利なので、進学した人は、しなかった人以上の地獄を見ることになった。


そして、俺が大学生の時に、流行っていたのが格闘ゲームだった。

俺はRPGを飽きるほどやりたいと思って過ごして、やっと遊べるようになったとき、流行りは格闘ゲームに移っていた。中高とそれなり遊べていれば、俺はこの時、流行りの格闘ゲームに夢中になったかもしれない。

でも、俺は、昔やりたかったゲームの消化で忙しかった。


格闘ゲームが流行った理由は、対人戦に向いていたから。飽きられにくかった。

少々の拡張をしているとはいえ、キャラを増やすなどの小規模な変更で数年単位で遊ばれるゲームは少ない。通常3か月くらいで入れ替わっていく。1月と言うのは概ね30日なので、3か月というのは、この世界では半期相当になる。


対戦ゲーム自体は、それ以前にも無かったわけではないが、面白くなかった。

対人戦自体は黎明期から有って、ブロック崩しのブロックが無いやつで、上下で打ち返すだけなど、単調で工夫も戦術も何もなく、人間同士であっても面白くないものが多かった。

格闘ゲームは、臨場感と上達可能な範囲、意外性のバランスが良かった。


体力を鍛えなくても、怪我の心配もなく、画面内のキャラを操って格闘技で対戦出来ること自体もメリットだった。

俺の世界では、ちょっと殴ったら傷害事件になってしまう。

傷害事件というのは、人が人に外傷を与える事件のことだ。殴ったら事件。

こことは違うのだ。


格闘ゲームでは、キャラクタには体力ゲージがあり、攻撃を受けると減って行き、無くなると負ける。


接戦なら良いのだが、そうでないと、あんまり面白くない。

ゲームは楽しむためにやっているので、あんまり差がついてしまうとつまらない。

ある程度体力残量に差が出ると、逆転が難しかった。勝負が見えてしまうのだ。

そこで登場したのが、体力がある程度減った状態でないと出せない大技。

ピンチをチャンスに変える大技”超必殺技”だ。


”必殺技”は、つまり、相手が必ず死ぬくらいの凄い技なのだが、そのくらいでは死なない相手には”超必殺技”と言う、相手が“超必ず死ぬ“くらい凄い攻撃を食らわせる必要がある。


そもそも、通常、ほとんど全ての必殺技は必殺能力を持たない。

タービンが付いていないターボくらい定番だ。


ただ、これも、フラグ的な意味合いも持っているようで、逆に、本来殺傷能力を持たないはずのもので必殺技が出ると、殺傷能力を持つこともあるようだが。

俺は何故か致死性の必殺技を持つ球技漫画を読んだことがある。

強い敵を出すうちにエスカレートして、殺傷力を持つに至る。


なんで球技に殺傷性のある技を使うのか、さっぱりわからない。



格闘ゲームは、必殺技、通常技を通して、大雑把な特性として、”大技ほど、隙が大きい”。

必殺技になると出しにくいし、出る瞬間攻撃を受けると、防御できず、技も出ずでカウンターで止められてしまう。

大技は出す瞬間、小技で止められやすい。


そして、相手は一発逆転を狙ってくることを知っているので、ほとんど効かない。

なので、だいたい防がれる。

だが、一方で、どうせ負けるから怖くないという感情も働き、まあまあ使う。

結果の見えた勝負を続けるのも時間の無駄だ。


つまり、案外よく使うのだ。


とは言え、そもそも、操作が難しすぎて不発に終わることも多いのだが。


相手は相手で、その技が出せる状態になると、隙を恐れて、大技が出し辛くなる。

そして、たまに、ちゃんと命中することもある。


だから、ガスパールはその”超必殺技”を今使ったのだ。


その超必殺技を食らうと俺はどうなってしまうのだろうか?

直撃しても死なないだろう。


対する俺は、寿命ゲージに余裕ありすぎ……

”あっちに帰ったら、俺は、まだまだ年金貰えないんだよ!!!”と叫んだ。俺の心の中で。



ルルシアは、父に訊く。

「この人は?」


この人と言うのは俺のことだが、そうじゃねーだろ、先にお父さんを心配しろよ!!と突っ込みを入れる。

俺の心の中で。


だが、何事も無いように、ガスパールは答える。

「酒くらいで死なないから気にしなくて良い。

 今日だって、あんな流れに流されても、なんともなかったから大丈夫だ」


いや、だから、そうじゃねーよ!!


まあ、1晩、酒飲んだくらいで目に見えて死期が近付いたりはしない。

でも、少しは、労われよ。川に流されて、ちょっと焦ったし疲れた。

その上、寿命が残ってるって言っても、俺なんか、帰っても年金貰えず延々苦しむ刑なんだぞ!!

と俺が心の中で遺憾の意を表明しているとルルが見ている。



「死なないの?」

ルルがじーーーーっと見つめてくる。


ぐふっ。何故か、ルルの視線が俺の心に刺さった。

これは心配してくれてるのだろうか?


「ああ、うん。俺の世界では、男もそこそこ長生きするから。

 俺の年じゃ、まだ年寄り扱いしてもらえない」

俺は”まだお年寄りではない”アピールをした。


「お年寄りって? いくつから?」

ああ、そうか。それを言わないとわからないか。

俺的には、少なくとも年金がもらえるようになるまでは、お年寄りでは無いと思うのだ。

今は65歳で老齢年金が満額貰えると言っているが、だいたいそういうのは嘘で、俺はその年には貰えない。

たぶん俺が、まともに年金貰えるの70歳(140期)くらいだと思うのだ。

まだ20年も残っている。


「140期(70歳)くらいかな」


「ええ?」

ルルが知る限り、男は70期(35歳)くらいで死んでしまう。

なのに、140期(70歳)からがお年寄りと言っている。

いったい何歳まで生きるのだろう?

「いくつまで生きるの?」


「ああ、170期(85歳)か180期(90歳)くらいかな? 長けりゃ200期(100歳)超える人も居るけど。

 うちは比較的短命な家系だからな。160期(80歳)くらいかな」


「ええええええ? 160期で短命なの?」

「170か180?」

これにはガスパールも驚く。この世界では、女でも、そこまで生きない。

160期だって、かなり長寿だ。


「俺は170期も生きないような気がする」

そう言って、なんだか寂しくなる。

何十年も年金収めてきて、70歳から年金貰い始めても80歳で死んだら、なんか損した感じだ。

やっぱり、俺、ここに残ろうかな。帰っても絶望しかない。


ここでガスパールが口をはさむ。

「驚きましたな。そんな世界があるとは」


ルルは瞬時に(指を使って)計算する。(この世界では)20を何回引けるかで、作れる子供の数がだいたいわかる。

この見た目通りの年齢だとしても、まだ3人くらいは子供を残すことができる(とルルは考えた)。

「うん。じゃあ、飲んでもいいよ」


※おっさんの世界の男は、60歳以降に子供を残すことはあまりありませんので、

 ルルの計算は間違っています。

 まあ、そもそも、このおっさん、人間用の計算式は当てはまらないのですが。

----


ん? 飲んでも良い?

ああ、俺が老人に見えて、酒飲んだら寿命が目に見えて減ってしまうと思ったのか?

でも、俺は”俺が生きてるから困っている”のだ。

生きている間ずっと困り続けるにしても、その困り度を少しでもマシな方向に持って行きたいと思っている。


でも、心配してくれるのか……


※心配の方向性がちょっと違ってますが、心配はしていますね


俺は”俺の世界”に帰っても、もはや、こんなに俺のことを心配してくれる人が居ないのだ。

”俺の世界”には心配してくれる人は居ない。ここには居る……

俺は、ここに残りたい気もしてきた。

心配されても、俺は、何日も滞在せず、すぐ帰っちゃう予定なのだが。


----


ルルが妙なことを訊く。

「竜だから寿命が長いの?」


竜は、もっと猛烈に長寿だったような気がする。桁違いに。


「竜って、もっとずっと寿命長いんじゃなかったっけか?」

「そうなの?」


1000期とか2000期生きるんじゃ無かっただろうか?

そもそも、なんで俺が竜なのだろう?


「で、俺が竜ってのは?」


うまい具合に、話の流れが変わったので、ガスパールは食いつく。

「森には竜が人になった神様が居ます」


「ああ、なんかそんな話があるな……俺がそれなのか?」


「違いますか?」


ガスパールは、けっこう真剣に言っているように見える。

ストレートだな。竜が人になった神様が、人の姿で現れたのが俺なのか。

なるほど。なんで竜だと思うのかという疑問は解決した。


俺は”俺が誰なのか覚えていない”が、これは覚えている。”俺の世界に竜はいない”。


「俺の世界に、竜は居なかった」


「それは聞きました。

 ですが、ルルシアをあなたは助け、時間が流れました」


「確かにそうだな」

そう答えつつ思う。ルルを助けたのは俺かもしれないが、時間を経過させたのは俺じゃないと思うのだ。


「あなたが現れた時、竜の気配がありました」


竜の気配?

「今は?」

「ありません」


「なんでだろうな?」

そこで気付く。ああ、つまり、出現する瞬間竜から人間に変わったのだろうか?


「そして、テラの名を出したとき、大地が揺れました」


「ああ、あのときか」

あの時俺は、どういう状態だったのだろう?


俺はテラを助けることができないのに、目の前の少女の名がテラだったから動けなくなってしまったのだ。

実際はテラではなくルルだったのだが。

俺が抵抗するとき大地が揺れる? そんなの神様だよな……

ここの神様は、竜が人になった存在。なるほど、矛盾してない。


「ルルシアが見つけるまで、あなたは姿を現すことができません」


「ルルが見つけるまで?」

 と言ったところで気付く。

 「ああ、それが何年も経過した理由なのか?」


「他の人と会いましたか?」


この問いの意味はよくわかる。

「俺には見えたが、相手からは見えていなかったみたいだった」


今日は話せるようになったが、そのきっかけは、ルルと会ったからか。

確かに、ルルと会ってからは人と話せるようになった。


「ルルと会うまで、他の人間はあなたの存在を感じることができません。私にも」


ガスパールにもってことは、ルルにだけ反応するようになっているのか。

「確かに、偶然にしちゃおかしいな」


酒のせいもあってか、説得力を感じた。


そこに、ルルが割り込む。鼻息荒く。

「私に会いに来たから?」


「そうかもしれないな」


そう答えつつ、どうやら、それが正解のような気もする。


----


ルルに会いに来たと聞いて

”そうかもしれない”と答えた。


ルルに会いに来た!


ルルの中で、背景一面花満開、フィーバー状態に突入していた。


この老人は、ルルに会うために来た。

そして、ここでは老人だけど、まだまだ長生きする。

寿命があるから、子供も残せる。


”帰ってしまう前に、妻になる約束をする”

ルルの中で、凄い勢いで夢が広がった。

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