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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
30章.ルルシアを助けに来た老人、その後

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30-22.ルルシアを助けに来た老人、その後(15) どうせ死ぬから問題無い!

だんだんと、終活の時期が近付いてきます……

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


「まあ、とりあえず服、洗っとくか」

「大丈夫。私が洗うから」

ルルシアが言い張る。


まあ、確かに、この状態じゃ不便だ。

今俺は、タオルのように毛布を巻いて、辛うじて一部を隠しているだけだ。

しかも、手放しで座ったりすると、ズルっと落ちてしまう。


自分の服くらい自分で洗おうと思ったが、この格好では、ポロリの心配がある。

紳士としてポロリは避けなければならない。ルルも、そんなもん見たくないだろうし。

※いえ、ルルは無茶苦茶見たがってます!!


それに、毛布濡らしたくないし。


仕方なくルルに頼む。

「悪いな。じゃあ、洗濯頼む」


「うん。私一人でできるから」

そう言うと張り切って出て行った。

なんか、ずいぶん張り切りまくる子だなと思った。

ただ、一瞬キメ顔みたいのをしたので、イラっとした。


いかんいかん。お子様に対して、イラっとするのはよろしくない。

なぜなら俺は紳士だから……いや、この場合は、大人だからの方が合っているか。


テーブルの方に戻ろうとすると、今度はガスパールが重そうな(たる)を持ってくる。

「せっかくなので、これを開けますか」

「なんだ?」


答える前に、ガスパールは、既に開けている。


「酒です。

 おお、これは良い具合です」


何の酒か聞いたのだが。それはそうと良い具合?

開けた時に、はじめてハズレがわかる時とかあるのだろうか?

まあ、手作りだろうから当たり外れは大きそうではある。


…………


荒っぽい作りの、木のコップに注いでくれる。


見た目も、匂いもワインじゃないか? この世界にこんなワインっぽいワインがあったのか?

ああ、有ったかもしれないが、庶民が飲むものでは無かったと思う。


それに、お猪口くらいの器に、ちょんと出てきて、味がわかる程度だった。

※グラス(実際は陶器です)は、そこまで極端に小さいわけではなく、

 この老人がでかいのです


ちょっと味見。

「おお! ワインだ」

「ワイン?」

葡萄(ぶどう)で造った酒」


「(ワインを)知ってましたか」


「いや、この世界(の民家)で飲めると思わなかった」


「あなたの世界には有ったのですか?」

ガスパールは、この老人は、竜が人になった神様だと思っているので、ワインを知らないと思っていた。


「ああ。たくさんあった。凄くたくさん。

 でも、こっちでは、あんまり飲まなかった気がする。

 俺が知ってる“ここのやつ“は、もっと発酵が浅いやつだった。

 ハチミツ酒の失敗作みたいな甘いやつ」


----


”俺が知ってるここのやつ”と言った。

つまり、この神様は、この世界の人間の生活も、そこそこ知っている。

その割には、この世界の常識には詳しくないようにも見えるので、違和感を持つ。

とは言え、これは葡萄(ぶどう)を発酵させた酒。

ガスパールも、発酵が浅い状態のものも飲んだことがある。


「それと同じものですよ。酒に変わるのを待つと、(たる)に保存できるのです」


ん? ワインは元は(たる)で作るものでは無いのだろうか?

多分、(たる)で作ってたはずだが。


俺はハチミツ酒を作って飲んでいたと思う。

ハチミツ酒は、ハチミツを湯で薄めて、温かいところに置いておくとできる。

元々酵母菌も入っているが、蜂蜜そのままでは浸透圧が高すぎて、酵母菌が活発に活動できない。

砂糖漬け食品と一緒だ。浸透圧が高すぎて、菌が繁殖できないようにしてある。

蜂蜜の場合は、元が花の蜜で、そのままでは水分が多すぎる。

濃縮しないと酵母菌に食べられて発酵してしまう。

蜂は、花の蜜を発酵しないレベルまで濃縮できるのだ。


酵母菌は、相当浸透圧が高い状態でも死滅せずに耐え、浸透圧が下がると増殖可能になる。

なので、水分加えて浸透圧が下がると、酵母菌が爆発的に増える。

温度と濃度の条件が揃うと10日くらいで良いのができる。

濃さと温度管理が重要だ。

ただ、俺がやると失敗して、あんまりうまく発酵しない。



葡萄酒は、果汁を絞って、何もせずに放置するとできる。これは温めずに発酵させる。

けど、しばらく経ってもワインにはならなかった。

アルコールの入ったぶどうジュースって感じのものだった。

あれも甘いハチミツ酒同様に失敗作だったのか。


あの酒は俺の知ってる、俺の世界の葡萄酒と似た感じだった。

あれは、ワインとは別のものだと思うが。

そもそもアレは何だったのだろう?


※葡萄酒知ってる人います? ワインと梅酒の中間くらいの味のやつ。


材料の葡萄の品種が違うのか? 粒が小さくて食べるのが面倒なものだ。


俺はたぶん、この世界にきてけっこう酒を飲んだ……ような気がする。

だが、庶民の家でワインは全く記憶に無い。


「貴重なんじゃないか?」


「はい。キャゼリア……あの子の母親が持たせてくれたものです。

 それを、この日のためにとっておきました」


「いいのか? そんな貴重なものを」


「この日がこなければ、必要がないものですから」


ガスパールは、俺が何者なのか知っているのだろう。

そんな貴重なものを出してくれるなんて……俺は本当に歓迎されているのだとわかって嬉しくなった。

ただ、そんな貴重なもので歓迎されても、俺にはお返しは何もできないのだが。


…………

…………


なんか、俺の話はせずに、ほとんどガスパールの話を聞いた。


ガスパールは、荒れ地の大きな町で学者をやっていたが、この森に竜に会うためにやってきた。

どうやら俺が、その竜だと思っているようだ。


なぜ俺が竜なのだろうか?


「竜ってでかいよな? 俺も普通の人間よりは大きいけど、こんな大きさじゃないよな」

「はい。私は竜に会ったところがあります。それはそれは大きな生き物でした」


「じゃあ、なんで、俺が竜なんだ?」


「…………」

ガスパールは黙り込んだ。

このとき、ガスパールは、話を切り出すかどうかで、少し悩んでいた。


なんだ?

名無しの老人も、ガスパールが何か真剣に悩んでいる様子に違和感を持つ。

やはり、何かがある……



ところが、ちょうど、そのタイミングでルルが戻ってくる。

「洗って干したから」


「おお、ありがとう。本当に一人でできるのか」

「私は洗濯も、お掃除も、お料理も得意だから」


「おお、そうか。それは凄いなぁ」

そう言って、老人はルルを撫でた。


ルルは頑張りを評価してもらえて、ご機嫌になった。

そして、もう、”妻になってくれ”と言われたような気分になっていた。

※ルルが勝手に思ってるだけです


ルルシアは、コップを持ってテーブルに来ると、椅子に座りこう言う。

「わたしも」


ん? 子供が酒はまずいんじゃないか?

「コレ? 飲むのか? 酒だぞ」


そう思うが、ガスパールはこう言って、少し注ぐ。

「そうだな。今日は特別な日だし。

 このお酒はとても珍しくて、滅多には飲めないからね。

 味だけでも覚えておくと良い」


ん? ここでは、子供が飲んでいいのか?

ここの法律のことはあんまり覚えていない。むしろ法律有ったかな?


ルルシアは興味津々で、ちょっと舐めた。

「うえーーーー」

変な顔をする。


大袈裟だな。

まあ、そんなもの飲む必要が無い。

「子供には美味くないだろう」


「うわー、この辺が熱くなった」

ルルシアは、両方の鎖骨のあたりを押さえて言う。

でも楽しそうだ。


そういえば、なんで子供が酒を飲んじゃいけないのだろう?


酒とタバコは20歳から。俺の国ではそう決まっていた。

タバコはわかる。あれは天然の殺虫剤だ。殺虫成分が、人間の体や精神に影響を与える。


凄いのはその毒性で、身近なところにあるものとしては、恐らく最強の毒物だ。

ニコチンの含有量は1本で子供の致死量に相当する。

(実際は、さほど吸収されやすいわけでもなく、吐くので、大事には至らないことが多い)。

家庭用の殺虫剤くらいでは、人間、そう簡単に死なない。

殺虫剤で中毒になって運ばれる子供は少ないが、たばこの誤飲で運ばれる子供は多い。

身近な割に毒性が高い。


タバコの煙には有害物質が含まれ、臭いも強く、これが問題になる。

自ら好んで吸おうという人と、そうでない人を分離できることが好ましい。


ニコチンは、植物としてのタバコが虫除けとして備える天然殺虫剤だ。

実際に、タバコを浸けた水は殺虫剤にもなるし、農薬替わりにも使える。


強力な毒があるので、ほとんどの虫は、タバコの葉は食べない。

ところが、タバコ蛾というタバコ専門に食う蛾が居る。

自然界には、だいたい、そういうやつがいる。


ユーカリの葉でも一緒だ。

ユーカリの葉にも毒があるので、ほとんどの生き物はユーカリの葉は食べない。

ところがそれを食う専門家が居る。コアラと言うやつだ。

食べ物の取り合いになることも無いので、コアラはのんびり暮らしている。

まあ、誰も見向きもしないものを専門にするというのは、食べ物に限った話ではない。


※小説とかでも、癖が強くて普通の人が読まないような奴を敢えて読む人とか居ますよね!


タバコには強い毒性がある。

と言っても、子供がたばこ禁止なのは、元は火事を起こすからで、健康上の理由では無かった。

これは俺の住んでいた国の話だが、たばこで小学校が火事になることがあったので、火気厳禁でタバコが禁止になった。


たばこの健康上の害が言われるようになったのは、もっとずっと後のことだ。


ちょっと昔は紳士の嗜みみたいな扱いだったのに、今は酷いものだ。

昭和の頃は、むしろ喫煙が推奨されているかのように優遇されていた。

そんな風に、世の中の常識と言うのは変わっていく。

決められたルールに従って吸う分には何も問題無いはずなのに、今となってはタバコを吸う行為自体が悪という扱いだ。


喫煙可の場所に勝手に入ってきて、タバコを吸うなとか言い出すバカまで発生する。

どっちが悪かよく考えろ。法律で吸って良いことになっている。

そして、そこは吸うことが許されたスペースだ。


例えば、喫煙場所に子供を連れてきて、子供が居るから喫煙を控えろと言う場合、基本的には、喫煙場所に子供を連れてくることが悪いのであって、喫煙者が悪いわけではない。

※そこに子供を連れてこなければならない、特別な理由があれば別だが、

 平時には、やってはいけないこと。


そんな場所に押し入って、喫煙可の場所でも吸えない状態を作り出すと、逆に、喫煙不可の場所でも吸うようになる。


だから、喫煙禁止のエリアを作りたいなら、喫煙場所は残さなければならない。


喫煙自体を禁止したいなら、法律でタバコ自体を禁止にしてしまえば良い。

そんなことをすると、タバコに限らず、法律を守らない人が増えるが。

妥当性の無い法律や、守るのが難しい法律を作ると、破るのが当然という運用になる。


だから、実態とかけ離れた法律を作ることも放置することも良くない。


だから、喫煙禁止のエリアを作りたいなら、喫煙場所は残さなければならない。

法律で保護されているものを、個人が、自分が悪だと思うという理由で迫害するのは、その行為が悪だ。

そこでタバコ吸っている人が悪ではなく、保護されたエリアを荒らす方が悪だ。



酒が年齢で禁止されている理由はよくわからない。

年齢で一律の縛りがあった。俺の国では法律でそう決まっていた。


人間は……俺の世界の人間は、20歳の誕生日に体が完全変態したり、体質が突如変化したりはしない。

ところが、その日を境に、飲酒の可否が変わるのだ。


小さな子供には良くない可能性が高い。

小さければ小さいほど悪影響が大きくなるのではないかと思う。

なので、生まれて日の浅い乳児に酒は良くないだろう。

……が、その母親は法律で飲酒が禁止されていない。


口から入ったものは消化吸収されるとき、基本的に血液で運ばれる。

なので、酒を飲むと血液中にアルコールが含まれる。

母乳も血液中の成分から作られるので、母乳にもアルコールは含まれる。

ところが、それに関しては、法律で厳しく制限されていない。

つまり、0歳児はアルコール摂取可能なのだ。


もっと言えば、妊娠初期はより大きな影響を与える可能性が高いが、法律で一律飲酒禁止というのはとても難しい。

事実上不可能だ。


なので、単に”法律でそう決まっているから”が根拠になると考えている。


だから、ここにその法律が無いなら、俺は止めはしないが……


俺は静観することにした。

どうせ、子供にとっては旨くない。

俺も子供のころ味見くらいはしたが、飲みたいと思うような味じゃ無かった。

だから、ルルも、放っておいても、ほとんど飲まないだろうと思ったのだ。


ところが、何故か、ルルシアは頑張って飲む。

「うわー、変な味」

注いだ量が少ないから平気だとは思うが、出来損ないのハチミツ酒と比べて、こいつはアルコール度数が高い。たぶん、俺の世界に出回っている普通のワインと大差無いと思う。

けっこう強い酒だ。


……いや、やっぱり止めることにする。


「ルル、無理して飲まなくても……知ってるか?

 慣れないのに飲むと、後で吐き気と頭痛で大変なことになるぞ」


「え? 吐き気って……?」

「気持ち悪くなって吐く」

「そうなの?」 ルルは(ガスパール)の顔を見る。


「そうだね」


「じゃあ、なんで、そんなの飲むの?」と俺に訊く。


なんてことだ!! 俺にそれを聞かれると困る。

まあ、そう思うよな。俺もそう思う。

子供に悪いなら、大人にも悪いような気がするのだ。


ただ、慣れると耐性が付くし、元々体の大きさが違う。

それに、成長に悪影響があるのかもしれない。そうだ、それで行こう!

「大人は、体が大きいし慣れて……」

俺が無難に説得しているところに、ガスパールが割り込む。


「お父さんは、飲んでも飲まなくても、先は長くないから。

 残された時間は、大事なことのために使いたいと思ってる。

 今がその大事な時だ。だから、今飲む」


うひゃーーーーー!!!! そういうこと言うか!!


根拠は”どうせもうすぐ死ぬから”。それで通ってしまう。


うおっ!! そうだ!!! ここは、そういうところだった。

男は早死にするのが前提で、それを口にしても何も問題の無い世界なのだ。

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