表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
30章.ルルシアを助けに来た老人、その後

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

699/1032

30-13.ルルシアを助けに来た老人、その後(6) 森の神様

だんだんと、終活の時期が近付いてきます……

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


ガスパールとルルシアは、ひとまず家に戻る。

あの大きな老人とは、無事……あっさり過ぎるほどあっさり会えたものの、すぐに連れ帰ることはできなかった。


ガスパール(テリオス)は、今頃になって、実感が沸く。


本当に再び会った。

7期前には、ガスパール(テリオス)は、もう二度と会うことは無いと思っていた。


そもそも、7期後のテリシアの儀式まで生き延びるとは思わなかったのだ。

だが、現在の体調は、明らかにおかしい。

7期前に、あの老人に会ってから、急激に、老化が止まったのだ。

恐らく、今日、会うために生かされてきた。そう感じる。

そして、今日、役目を終え、長生きする理由が無くなる。


急ぐ理由も無いので、休憩しつつ帰る。


……………………


ルルシアは、しばらく黙っていたが、そろそろ良いかと口を開く。

「お父さん、さっきの昨日って?」


ガスパール(テリオス)も、恐らく聞いてくるだろうと思っていた。

あくまで仮説ではあるが、ガスパール(テリオス)の説を話す。


「あの人にとっては、あれは昨日の出来事なんだよ」

「どうして?」

「どうしてだろうね。寝ているうちに時間が経ってしまったのかな」


確かに、あの巨大な老人は、7期(3年半)前の出来事を昨日と言った。

前にルルシアを助けた時から1日しか経っていないと思っているのだ。


「7期(3年半)も経ったのに?」

「神様には、時間は関係無いのかもしれないね」


ルルシアも、この言葉の意味は何となく分かった。

あの大きな老人は、歳なんか関係無く元気そうだ。


根拠はともかくとして、通常の時間の流れの中に居ないという意味では、2人の予想は当たっている。

「起きたら今日だったの? なんでだろう?」


起きたら今日だった。面白い表現をする。ガスパール(テリオス)は、そう思った。

視点が、自身や第三者では無く、あの老人側なのだ。


「わからないけれど、きっとあの人は、ルルシアと会う時しか、時間が進まないんだよ」


「私と会う時しか?」


「たぶん、そうだと思う。ルルシアと探しに行ったら、すぐ会えた。

それに、ルルシアと会うまで、あの人の時間は止まっていたからね」


確かにその通りだ。ルルが探しに行くまで時間が進んでいない。

やっぱり、あの人は、テリシアではなく、ルルシアのことを待っていた。

ルルはそう思った。


ガスパール(テリオス)は、どのレベルで話をするか迷っていた。

ルルシアの意思は確認した。だから話をするのは構わない。

ただし、話したとして、どこまで理解できるか。


ガスパール(テリオス)は、ルルシアを竜と関わらせたくないと考えていた。

だが関わるのであれば、十分な情報を与えたいとも思っていた。


だが、急に踏み込んだ話をしても、そのベースとなる知識を積極的には与えていない。

だから、どこまで知っているか調べる。


「森の神様の話は知ってるよね」

「大鎧様?」


これはさすがに知っていた。そして、これこそが最重要な情報だ。


「そうだ。お父さんは、竜と会うために森に来た」

「大鎧様のこと?」


ガスパール(テリオス)は、少し驚いた。

ルルシアは、説明するまでもなく、既に気付いていた。


「良く気付いたね……」


十分な情報を与えたつもりも無いし、妻のシートを見ていても、積極的に教えるようなことは無かった。なのに、ガスパール(テリオス)が会う竜が、竜の姿をしていないことまで知っている。


どうして、気付いたのだろうか?

……そこまで考えて、気付いた。

ガスパール(テリオス)の、考え方、推測の方が間違っている。


ガスパールにとっては、”竜”と言えば、あの巨大な生き物のことで、”人間の姿をした竜”が居るなどと考えたことは全くなかった。

でも、森では、竜は人の姿で現れることがあることを皆が知っている。

ルルシアも。


気付かなかったのは、森出身ではないガスパール(テリオス)だけで、元からここに住む人たちは、竜が人の姿で現れる可能性があることを知っているのだ。


素直にそのことを話す。

「……そうか。お父さんは、竜に会うために森に来た。

 竜という、とても大きな生き物に会うと思っていた。

 でも、お父さんが会う竜は、人の姿をしているようだね」


ルルシアは、何の話をしているか気づく。

「あの人が?」


ガスパール(テリオス)は頷く。

「森には竜が人になった神様がいる」


ルルシアは、実物は見たことが無かったが、森に昔やってきた神様が残して行った鎧が有ることは知っていた。

あれを身に着けているのが、大鎧という神様だと思っていた。


その神様が、あの老人だとすると、鎧を残して行った神様は、鎧を置いたまま、歩き回っているのだ。

あの鎧が、森に来たのは、ルルシアが生まれるよりずっと前だ。


その神様は、ルルシアと会うまで時間が止まっている。

つまり、昔現れてから、今まで、ルルシアを待っていた?

そう考えた時、鼓動が激しくなるのを感じた。


ずっと長い間、ルルシアを待ち続けていたのかもしれない。

妻として迎えるために。


「なんで今まで待ってたの?」

これは、ルルシア的には、”ルルシアを妻に迎えるために、数十期(数十年)もの間、時間が止まっていたのか”という意味だった。


ところが、ガスパール(テリオス)には、ルルシアの意図は正確に伝わらなかった。

言葉の意味、そのままで受け取った。

ガスパール(テリオス)には、乙女心が理解できなかった。


なぜ今まで待っていたのか、その推測をそのまま答えてしまう。

「お父さんが、これを渡していないからだ」

そう言って、ガスパール(テリオス)は、石を見せる。


竜のガスパールに貰った石。

今でも常に身に着けている。ラグベルに言われたことを今でも守り続けているのだ。


----


ルルシアの期待は、最高潮から、一気にズドーーーンと落ちた。

ルルを待っていた……わけではないようだ。


「首飾り?」

「これは、竜のガスパールに貰ったもの。いや、預かっていたものだ」


預かっていた?

つまり、一時的なもの、


「渡すの?」

「渡そうと思う。そうしないと、神様は帰れない」


神様は帰れない?

神様は帰る? 妻の話はなんだったのだろう?

ルルの頭の中は、疑問でいっぱいになった。


「帰るの? 私は?」


「ルルシアは、たぶん妻になる。でも、大人になるまで連れて行かないような気がする」


妻になることと、帰ることは、どうやら共存可能なようだ。


「なんで大人になるまで待つと思うの?」


「テリシアの儀式。元々、現れるだけで、テリシアを連れて行くわけじゃ無いんだ」


元々そういう予定だったようだ。

さらに話は続く。


「あの神様は、人間の女を愛でていて、この世界にやってくる。

 お母さんは、どうも、あの神様を捕まえようとしているみたいでね」


ルルシアは驚いた。なんと、母は、神様を捕まえようとしている。

「なんで?」


「ずっと、森の神様で居てもらうため」


そうか! 一瞬で納得した。

捕まえる。言い方は悪いが、ルルも、神様に森に居て欲しい。

だが、同時にこうも思う。

「かわいそう」


捕まえるという言葉に反応した。

ルルシアには、父、ガスパールも、シートに捕らえられたように見えていたから。


ガスパール自身は、シートに捕らえられて不幸になった自覚は無いので、純粋に、捕らえて森の神様に据えることを

かわいそうと言ったのだと思った。


「うん。だから、ルルシアが本当に妻になりたいなら、

 森に居る間、神様が幸せに暮らせるように、一緒に居てあげなさい」


「そうだね。」

「そうだ、ルルシアが大事にしてあげれば、神様は幸せに過ごせるかもしれない」


ルルシアが来るのを待っていた。だから、あっさり再会した。

以前、ルルシアの命を救ってくれた巨大な老人……おそらく、大鎧と呼ばれる、”竜が人になった神様”と。


ルルは、神様の妻になって、神様を大事にしようと思った。


「そろそろ、行くか」

「うん」


…………

…………


2人は家に戻った。


ガスパール(テリオス)と、ルルシアは、少し休憩した後、あの老人を出迎える準備を進める。

大した歓迎はできないが、ルルシアも手伝う。


すると、ガスパール(テリオス)が言う。


「しばらく待ってみて、来なかったら、また探しに来よう」

「え?」

来ないかもしれないのに別れた?

ルルシアは心配になった。会えなかったらどうしようと。


それに気づいたガスパール(テリオス)は説明する。

「もしかしたら、家には自分からは来ないかもしれない。

 ルルシアと離れると、また時間が止まってしまうかもしれないから」


時間が止まる……そうだ!

ルルシアは納得した。


7期(3年半)前ルルと別れて時間が止まり、今日動き出した。

確かに、ルルシアと離れると、また時間が止まってしまうかもしれない。


========


近くに住むべネスタが、綱を持って歩いていると、馬車が来るのに気づく。

べネスタは馬車が泥濘(ぬかるみ)に嵌って動けなくなったので、綱を取りに行って、馬車のところに戻るところだった。


脱出には、相当てこずると思っていたので、驚く。

同時に、既に散々頑張って、体力も尽きていたので、心底安心した。

「良かった。抜けられたのか」

「ああ。助かったよ」


馬も相当疲弊している。早く休ませたい。

「綱があっても、馬がこの調子じゃダメかと思った」

馬も人も体力を使い果たし、もう限界だった。

悪足掻きせずに、さっさと綱を取りに行けば良かったのだが、選択を誤った。

人間も馬も、体力を消耗しすぎていた。今更綱を持って行っても、脱出は難しそうだった。


「親切な人でも居たか」

ベネスタは、そう言ったが、実際は、他の馬車が来て、道を塞いでいて邪魔なので、仕方なく脱出を手伝ってくれたのだろうと考えていた。


ところが、事情は想像とだいぶ違っていた。


「それがな、信じられないほど力のある、でっかい爺さんが……」

起きたことを話す。


..............


見た目は巨大な老人で、馬車を一人で持ち上げ、自分の足の方が埋まるほどの怪力の持ち主が助けてくれたという。

そして、報酬にも興味を示さず、人間離れしたことをしたという自覚も無く、何事も無かったかのように去っていったという。


べネスタは話を聞いてピンときた。

「そりゃ、大鎧様じゃないか?」

「大鎧さま? 森の神様か」


「まあ、見えないって噂だけどな。前に来たとき、また来るって言ってたんだろ」

「確かに、あの鎧を着けられるくらいの巨体だったな」


※”また来る”は、23-12.大鎧出現(5)参照


「そもそも、そんな年の男が、元気に馬車持ち上げたらおかしい」

「ありゃ、人間じゃ無く、森の神様だったか」


大鎧様が出たかもしれない。


7期(3年半)前は、ガスパール(テリオス)とルルシアだけが知ることだったが、今回は、他の人々も大鎧出現に気付き始めていた。


========


一方の、ガスパール(テリオス)、ルルシアの父娘は、準備を進めていたが、そろそろ、やることが無くなってきていた。


大量の湯を一度に沸かす手段が無い。少しずつ何度か沸かすにしても、冷めてしまう。

来る時間が正確にわからないこともあり、いつ沸かせば良いか悩む。


7期(3年半)前、あの老人は風呂を探していた。

探したところで、そんなものは、そこらに無いが、湯を用意するだけでも良いと言っていた。

本当は、あの日、泊まっていってもらうつもりだったが、早々に立ち去ってしまったのだ。

今日こそは、湯を用意しようと思っていた。


食事の用意もしておく。神様は、普通の料理を食べるだろうか?

そんなことを考えつつ準備を進める。


ここに、あの老人が来たら、話をして、石を渡す。

おそらく、7期(3年半)前に既に、寿命が尽きかけていたガスパール(テリオス)が生きながらえた理由。

それを渡せば、ガスパールの寿命は、早々に尽きるだろう。


まあ、ここまで生き延びたことが奇跡だったのだ。


とは思うものの、あの老人は、本当に自分からくるだろうか?


そう思っていると、タイミングよく、ルルシアが声をかける。

「お父さん。あの人、時間動いてるかな?」


「見に行くか」

「うん」


二人は、あの老人……おそらく、竜が人になった神様、大鎧を探しに行くことにする。

二人は、運命の時が近付いていることを実感していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ