17-12.小国のお姫さま
だんだんと、終活の時期が近付いてきます……
※基本土日祝日更新です。
スペランカーレベルに心の弱いおっさんの、とっても残念なお話です。おっさんが興奮しても凹んでもすぐに倒れてしまうお話なのです。生温かく見守っていただけると助かります。
題名が加齢臭で宣伝は終活で中身はパンツの話。こんなのどうやって収拾つけるんだよ!と思う方も多いかと思います。それは至って正常な判断かと思います。
面白いかつまらないかは読者様が判断することですので判断できませんが、一応、加齢臭も終活もパンツも繋がった話を最後まで投稿する予定です。お付き合いいただけるととても嬉しいです。
俺達が戻ると、ルルが反応する。
「長すぎよ。ねえ、ひざまくら。私のひざまくらの番」
もう忘れてるかと思ったのに、まだ待っていた!
ひざまくらは歓迎なのだが、何故か、でっかいみかんのようなやつ、バガバガを持ってスタンバってる。
もう、体がガバガバは要らんと言っているような感じだ。
ルルには申し訳ないのだが、とりあえず話を逸らすために、リーディアに話しかける。
「リーディア、調子はどうだ?」
「ああ、済まなかった。おかげで調子が良い」
リーディアのくせに、やけに素直だな、と思った。
「ねえ、ひざまくら!」
観念して、ひざまくらだけしてもらおうかな?と思った。
「俺もう、バガバガは食い飽きたから、ひざまくらだけが良いな」
そう言うと、ルルが言う。
「そっか、じゃあ、ひざまくらだけでもいいよ」
おお!それなら安心……と思うと、客人が現れる。
ラハイテスだ。
ラハイテスが直接やってくるのは珍しい。
「トルテラ様、お話が。時間がよろしければ、是非ともお聞きいただきたい」
いつになく真剣な雰囲気だ。
何か不味いことが起こったか?
リーディアを見るが首を振る。思い当たることは無いようだ。
「わかった、聞こう」
そう答えるとラハイテスが言う。
「私の宿舎の応接へ」
「ルル、悪いが、ひざまくらはまたあとで」
「もー、ずっと待ってたのに」 ルルが言う。
ルルには悪い事をしてしまった。
宿舎に行こうとすると、無言でリーディアがついてくる。
これはいつものことだ。護衛とかそんなやつだ。
ところが、エスティアもついてくる。
ちょうど時間差でエスティアが戻ってきたところだった。
今まで居た部屋自体がラハイテスの宿舎の一部を借りたものなので、応接室までは凄く近い。
ラハイテスが真剣な顔をしているので、心配になる。
ダルガンイストで何かあったと言う話は無い。考えられるのは、ランデルで何かあったのか?
応接室は、意外に高そうなものが既にけっこう揃っていた。
早いな。それにしても、けっこう金がかかりそうだ。
「トルテラ様はこちらへ。リーディア殿とエスティア殿はこちらへ」
わざわざ座席まで指定される。
そしてラハイテスは、いきなり話しはじめる。
「トルテラ様、お話はお聞きしました。確かに、この私は姫と呼ばれる身」
いきなり姫……凄く嫌な予感が!
「トルテラ様、私はあなたに敗れ投降した身。
命じていただければ、いつでも喜んで妻になりましょう。
ランデルは小国とは言え、私は姫。
今この場には有りませんが、必要であれば、それなりの衣装も用意いたします」
トルテラ達の居室はラハイテスの宿舎の一部を間借りしたものなので、トルテラの姫好きの噂は早々にラハイテスに伝えられた。
「いや、そう言うのはいいから」
と言いつつ、エスティアとリーディアを見ると、エスティアが早くも大魔神怒りモードになっていた。
これはまずい。
ラハイテスの話は続く。
「姫好きの男に敗れ……
だが、あなたは紳士だった」
この紳士の言葉に、俺は思わず釣られてしまう。
おお!やっと俺に満ち満ち溢れんばかりの紳士度に気付くものが現れたか!!
もしかして、本物のお姫様のような高貴な者しか気付かないのか!
自分でもバカバカしいと思うが、俺がこんなにも紳士だと言うのに、今まで誰にも気付いてもらえなかったのだ。
ラハイテスに対する好感度が上がった。
そうだ、コイツは俺の尻尾を罵ったという実績がある。
少しは見所のあるやつなのだ。それに、”一応”お姫様だ。
おお!俺はラハイテスの残念な面ばかり見ていた。
”一応”お姫様だし、イグニスやリーディアのように、完璧すぎるが故の作り物感が無く、美しさと親しみやすさのバランスが素晴らしい。
俺のラハイテスに対する評価が急上昇した。
ところが、俺に困難が襲い掛かる。
「へー、トルテラって、本当にお姫様好きなのね。ロマンなんでしょ。
私は貧乏冒険者だったから、トルテラの好みには合わないかな?」
ぐはっ、しまった、エスティアが嫉妬モードに。
これは、何故か俺が反省させられる流れだ。
俺の心のエネルギーが減る。
「エスティア殿、少し抑えて」 ラハイテスに窘められる。
さらにエスティアが、
「私もあんな風に言ってもらいたいわ。でも、私じゃ無理かしら。
トルテラ、おっぱい大きなお姫様とか、おっぱい大きな勇者さまとか好きだもんねー」
エスティアが嫉妬モードで、関係無いことまで言い出す。
なんで、そこでおっぱいが出てくるんだよ!! 俺の心のエネルギーがごそっと減る。
頭がクラクラしてきた。
このとき、リーディアが一瞬自分の胸をチラ見したのを、俺は見逃さなかった!
さらに、エスティアの言葉を真に受けて、ラハイテスが乗っかる。
「おお、この私に魅力を感じてくれるのか。なんという幸運。トルテラ様がお望みなら喜んで」
そして、それをエスティアが迎撃する。
「トルテラは私が拾ったの」
ラハイテスが応じる。
「この神のごときお方を、拾ったとは、いくらエスティア殿といえども口が過ぎますぞ」
こないだのディアガルドとグリアノスの時は呑気に、「私のために争うのはやめてーー!」とか言って遊ぶ余裕があったのに、俺は人間の女同士の争いには弱かった。
いや、力のぶつかり合いは、精神的ダメージ少ないけど、言葉のやりとりは俺にはダメージがでかすぎた。
俺の心のエネルギーが減少していく……
あ、もうダメみたいだ……
もう、ふらふらしてきて、平衡感覚が無くなってしまった。
「ラハイテス、残念だがトルテラがもうダメみたいだ」 リーディアが言う。
こいつは見ているだけで助けてくれないのだ。
「トルテラ様? いったい?」
ラハイテスは、トルテラが倒れるのに慣れていないので、混乱する。
そして、俺は心のエネルギーが枯渇して、ポテっと倒れた。
----
「喜んでは……いない?」
ラハイテスは、トルテラは嬉しいときに倒れると聞いていた。
「悲しい時にも倒れる」 リーディアが説明する。
「私はただ、トルテラ様のお役に立ちたいと」 ラハイテスが言う。
ラハイテスには悪気はなかった。お姫様好きと聞いて、即行動に出てしまっただけだった。
自分の軽率さを少し反省していた。
ところが、エスティアはまだブリブリ怒ってる。
「なんで倒れるの。もっと堂々としなさいよ。
もう。ほんとに心が弱すぎるのよ。いい年して、そのくらい流しなさいよ」
「いったい何が? トルテラ様大丈夫ですか?」
ラハイテスは混乱していた。トルテラが倒れたのに、エスティアがまだ追い打ちをかけているのだ。
その割にはてきぱきと介抱する。
そして、今度はエスティアの態度がコロッと変わって、こう言う。
「ちょっと言いすぎちゃった。こうしてれば元気になるから気にしないで」
「いえ、そのような訳にも」
「いいから放っておいて」 エスティアが言う。
さらにリーディアが追い打ちをかける。
「悪いな、ラハイテス、そのうち説明する」
「は、はぁ」
ラハイテスは何が起きているのか理解しかねていた。
どうも、ラハイテスが考えていたのと、トルテラと女達の立場は違っているようなのだ。
----
俺は、誤解を受けると嫌なので、今のうちにフォローしておく。
「まあ、親子のコミュニケーションみたいな」 目が回りながらも、なんとか言う。
「夫婦の!」 とエスティアが突っ込みを入れ、ベシっと叩かれる。
----
このやりとりを見て、ラハイテスは羨ましく感じた。いつかはあんな関係になれるのだろうか?
今はとにかく、トルテラ様のために頑張ろう。そう思った。




