17-13.脳筋軍団の悪だくみ
だんだんと、終活の時期が近付いてきます……
※基本土日祝日更新です。
スペランカーレベルに心の弱いおっさんの、とっても残念なお話です。おっさんが興奮しても凹んでもすぐに倒れてしまうお話なのです。生温かく見守っていただけると助かります。
題名が加齢臭で宣伝は終活で中身はパンツの話。こんなのどうやって収拾つけるんだよ!と思う方も多いかと思います。それは至って正常な判断かと思います。
面白いかつまらないかは読者様が判断することですので判断できませんが、一応、加齢臭も終活もパンツも繋がった話を最後まで投稿する予定です。お付き合いいただけるととても嬉しいです。
トルテラが倒れ、それを介抱するエスティアを見て、ラハイテスはその関係をとても羨ましく思った。
トルテラが姫好きと聞いて喜んだが、あまり楽観できる状況ではなかった。
熊狩りのあと、熊運びで合流したラハイテスと、その兵150人は、竜を見に(元は(竜を呼び出す)儀式を見に)きたことになっていた。
そのため、トルテラは用が済んだらさっさと追い返す気満々だったが、ラハイテスは気持ちの上で、すでにトルテラの配下であると思っていた。
こういう場合、だいたいトルテラの思いは黙殺される傾向にある。
ラハイテスは、ダルガンイストの城壁近くに、簡易的なものとはいえ、宿舎を建てて、長期滞在する気満々だった。
気持ち的にはトルテラの配下。そう思っていた。
ラハイテスは、母カタイヤが会合に行く際、幼少のころから一緒に連れられ、度々会合に同席していた。
そのため、地元では特別扱いされても、元々大国を含めた会では、ランデルには、ほとんど発言権が無く、軽く扱われることをよく知っていた。
ランデルは小国であり、常に大国の顔色を窺って行動する必要がある。
そのような場で大事なのは、発言ではなく、流れを読む力だ。
勝つための努力ではなく、勝つ方に付く努力をする。
大国に対して、ランデルが単独で発言権が無いのはどうしようもない。
ただし、辺境国全体だと、大国に対してもそれなりの発言ができる。
”あまり軽視するなら、連合側に付く”、そう言われると、大国と言えども無視はできない。
そのため、辺境国の中で、それなりの発言権を持つというのは大事なことであった。
ランデルは、辺境国の会合では、それなりの発言権があった。
ランデルは辺境国の中でも大きな方ではない。大きさ、人口、経済力では勝てない。
それを補うために、国力に対して不釣り合いなほど大きな軍を持っている。
戦って勝つための軍ではない。存在していることに意味がある。
誰かの下に付くことに抵抗はなかった。
それどころか、むしろ付くなら将来性の方に率先して付きたい。
さらには、どうせなら自分個人として付きたい方に付けるのならむしろ幸せである。
そう考えていた。
ラハイテスは、その立場上、必ずしも自分の希望に沿うような行動は取れない。
それを考えると、今、こうしてトルテラの側に居ることは、相当な幸運であった。
戦わずして勝つ。戦うときは必勝。
まあ、トルテラには戦って負けたが、負ける戦いでは、うまく負ける。
無傷でトルテラに接近できた。
これは、後から思えば大金星であった。歴史が変わった瞬間と言っても良い。
そして、今、ランデルの兵の多くを今はトルテラの元に集めてある。
人数だけで言えば全軍の1/3程度だが、実際に第一線で動ける人数のほとんどを連れてきていた。
今、本国が攻められると、相当弱い。だが、恐らく攻め込むバカはいない。そう考えていた。
トルテラに兵を預けている……つまり、トルテラの保護国であることを意味している。
そんな国に手を出せばどうなることか。
トルテラは気付いていないが、かなりの大事になっていた。
ランデルは大国同士の戦乱に巻き込まれることはあるが、それ以外の時は平和な国だ。
大国が動くと必ず巻き込まれる厄介な国なので、丸々占領しても周辺の小国にとってうまみが少ない。
周辺国が欲しいのは、緩衝地帯としての国だ。
なので、当事者としての戦いは、少々の利権争いや、偶発的な小競り合いくらいしか発生しない。
単独では話をする価値の無いような小国ランデルを、大国も、もはや無視できなくなっていた。
姫と多くの兵をトルテラに差し出してしまったのだ。
これは非常に厄介なことだった。
事実がどうであろうと、そう見るものが多かった。
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ラハイテスはエスティアとトルテラを見て、羨ましく感じた。
いつかはあんな関係になれるのだろうか?
今はとにかく、トルテラ様のために頑張ろう。そう思った。
そのまっすぐな思いは、もちろん、トルテラが望まない方向へと進んでいく。
エスティアの行動を見て、ラハイテスは、もう一歩踏み込んでみることにした。
トルテラのような、神のごとき力を持つ男でも、平民の女の尻に敷かれているのだ。
カヤハルの夫たちと変わらない、それどころかもっともっと弱々しいものだった。
これは待ちより、押しが効果的。ラハイテスはそう判断した。
ランデルとトルテラの結びつきを深める。トルテラの影響範囲を広げるためだ。
現在、ランデルはトルテラの支配地としては飛び地になっている。
これを、トルテラの本拠地、城下町との結びつきを深め、なるべく太い線で繋ぎたい。
そう考えたのだ。
リーディアに相談することにした。ブロソススワーレンも同席してもらう。
ブロソススワーレンは、警備の都合、ラハイテスが何かやりだすと、それを監視しなければならない。
行動内容を知っていてもらった方が、協力を得やすいためだ。
キャロに伝え、リーディアを呼び出してもらう。
またエスティアに邪魔されるかもしれない。ラハイテスはそう考えたためだった。
「今日は、折り入って、相談したいことがあります」 ラハイテスが言う。
リーディアと、ブロソススワーレンは、思い当たることをいろいろ考えつつ、頷く。
ラハイテスは言う。
「ランデル、本国についてです」
ラハイテスはダルガンイストの客将ということになっているが、これは客将の立場を与え、一時的に、城門前に滞在することを許すという程度のものであった。
既に竜は見ており、当初の滞在理由は無くなってしまった。
現在、ランデルの兵は、トルテラの私兵に近い扱いで、ダルガンイストから物資の補給はない。
染め物の貿易で、なんとか細々と維持しているが、そう長くは持ち堪えられない。
兵の一部を戻す。あるいは、全部をランデルに戻すことを考えるタイミングだった。
ところが、ラハイテスは、わざわざ長期滞在用の宿舎まで建ててしまった。
ラハイテスを見張る役のブロソススワーレンも、同じく、長期滞在用に宿舎を建てた。
そのため、リーディアもブロソススワーレンも、恐らく退く方向の相談ではないだろうと見当をつけていた。
「ランデルが?」 リーディアが続きを引き出す。
「リーディア殿、すでにランデルは、事実上トルテラ様の支配地と認識されている」 ラハイテスが少々すっ飛んだことを言う。
ところが、リーディアは「そうだな」 と、軽く答える。
リーディアには、ラハイテスの言う意味が良くわかっていた。
実際にはトルテラはランデルとは全く何の関わりも無く、どこにあるかさえ知らないだろう。
ところが、多くの人がトルテラの支配地だと認識している。
トルテラがどう思うかと、人々がどう思うかは全く関係が無いのだ。
「私は、トルテラ様のお役に立ちたい」 ラハイテスが言う。
これについては問題ない。ラハイテスがそう考えていることはリーディアにもスワーレンにもよくわかっていたから。
「何をするつもりだ?」
ラハイテスが答える。
「今のままでは兵を維持できない。そこで、城下町と直接交易をしたい。
ランデルの染め物は、トルテラ様の本拠地、城下町に売られると聞いた」
「なるほど。ならば私も一枚かませていただこう」 ブロソススワーレンが乗る。
「ダルガンイストはよろしいのですか?」 ラハイテスが問う。
ブロソススワーレンは、あくまでも、ダルガンイストの軍人であり、警備上好ましくないことは嫌がるはずだ。
ブロソススワーレンが答える。
「警備を請け負っているのは、武人としての私。暴動が起きたら止める。事前に阻止する。
だが、貿易の邪魔をしろという命令は受けていない」
「以前から違和感を持っていましたが、そういうことでしたか」
ラハイテスが言う。軍人の割に、貿易にも知見があり、単なる軍人には見えなかったのだ。
「現在の取引相手は、ダルガンイストの商人。城下町の商人と直接取引したい。
どちらにしろ、荷は、ダルガンイストを通過することになりますが」
ラハイテスの提案は、取引を直接行いたいというもので、実際の荷物のルートは特に変わらないものだった。
ところが、ブロソススワーレンは、流通路に言及する。
「城下町との交易であれば、必ずしもダルガンイストを通る必要はない」
もちろん、ラハイテスもダルガンイストを経由しないルートの存在も知っている。
ただし、小規模の流通にしか使えないので、これから取引を拡大しようと考えるラハイテスにとっては、あまりメリットがないので無視していただけだった。
「裏口……連合領との貿易であれば、裏口がある」 ブロソススワーレンが言う。
「裏口か。私の良く知る場所だな」 リーディアが反応する。
「リーディアが裏口?」 ブロソススワーレンが突っ込みを入れる。
リーディアと、裏口は、あまりにも印象が離れていたからだった。
リーディアが説明する。
「ああ、小隊長だったころ、よく警備に出ていた。あの人と、はじめて会った場所だ」
スワーレンが反応する。
「裏口などと軽く見ていたが、あそこに居れば、もっと早くにお会いできたのか。惜しいことをした」
「その、裏口というのは?」
「ダルガンイストの通行証を持たないものが使う密航路だ」
「あまり荷運びには向かないが」 スワーレンが補足する。
「それについては、考えがある。
実はな、ランデルと城下町で行き来できないかというのは考えたことがあってな」
リーディアが話しはじめる。
当然、ブロソススワーレンも同じことを考えていた。
ただ、その手段は全く違うものだった。
「密航路は、ダルガンイストが警備しているが、本来は管轄外。
元から管轄外の土地に、”あの人”がやったことであれば、たいした問題にはならないだろう。
問題になったところで、どうせ誰も処罰できない。
今なら、面白い手がつかえるかもしれん」
「面白い手?」
・・・・・・・
・・・・・・・
リーディアの計画は、普通にはあり得ないものだった。
「なるほど、馬鹿げてる。だが面白い」
ブロソススワーレンは乗り気だ。
「本気か?」
ラハイテスは、リーディアとブロソススワーレンが、どのくらい本気なのか読みかねていた。
「ならば、トルテラ様に、お伺いを」
ラハイテスは、トルテラの許可を貰ってからと考えていた。
「言えば止めるが」 リーディアが答える。
「それではトルテラ様の意思に反して」
ラハイテスは、あくまでも、トルテラのために、トルテラが納得する形で進めることを望んでいた。
ところが痛いところを突かれる。
「ならば意思に沿って、ランデルに帰るか?」 リーディアが指摘する。
”ランデルに帰らず、ここに留まっている時点で、既にトルテラの意思に反している”と言っているのだ。
これにはラハイテスは自覚があった。だからこそ、トルテラの納得の上で事を進めたかったのだ。
「お怒りになったら、」
ラハイテスが言いかけるが、リーディアが即止める。
「気にする必要はない。今ランデルが窮地に陥ってもラハイテスが頼めば、あの人は助けに行く」
この言葉に、ラハイテスは心を打たれた。
実のところ、ラハイテスはトルテラの性格、行動パターンを、さほどよく知っているわけではない。
だが、1回戦えばわかることがあった。敵を気遣うほどに、大変慈悲深いということだ。
※実際には、トルテラは慈悲の気持ちで怪我をさせないようにしたわけではない
今が好機ということを考えれば、強行することにも理解を示してくれるのではないか。そう思った。
「わかった。是非ともお願いする」 ラハイテスが言う。
こうして、トルテラの知らないところで、また新たなフラグが立つのだった。




