17-3.神前試合(後編)ポパイがホウレン草の缶詰食べるとムキっとする、あの筋肉
だんだんと、終活の時期が近付いてきます……
※基本土日祝日更新です。
スペランカーレベルに心の弱いおっさんの、とっても残念なお話です。おっさんが興奮しても凹んでもすぐに倒れてしまうお話なのです。生温かく見守っていただけると助かります。
題名が加齢臭で宣伝は終活で中身はパンツの話。こんなのどうやって収拾つけるんだよ!と思う方も多いかと思います。それは至って正常な判断かと思います。
面白いかつまらないかは読者様が判断することですので判断できませんが、一応、加齢臭も終活もパンツも繋がった話を最後まで投稿する予定です。お付き合いいただけるととても嬉しいです。
「どっちが強いかわかれば良いだけなんだから、怪我すんなよ」
一応トルテラが注意する。
防具の類は、それぞれ使い慣れたものを付ける。
準備をしていると、どんどん人だかりができる。
娯楽の少ない世界なので、ここの人達にとっては、こういうのは相当高レベルの娯楽なのだ。
ブロソススワーレンとカヤハルは良い場所とって盛り上がる。
「ははは、神前試合。これはおもしろそうですな」
「まったく」
けっこう年が離れてるのだが、気が合うようで、よく一緒に居るところを見かける。
一応スワーレンは監視役だと思うのだが、良いのだろうか?
ラハイテスの部下たちが悪さしたら、俺が鎮圧しないといけない。
俺を恐れているので、そういうことにはならないはず……という、都合の良いロジックになっているようだが、そんなんで良いのだろうか?
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準備ができて、そろそろ開始かと思う頃に、横山三国志キャラみたいなやつが来た。
「丁度、良い所に、はあ、はあ」
ダイターンカムヒアみたいな名前のやつだ。いや、ここではマーガレットだったか?
でも、わかったことが1つある。コイツは、外交官として友好関係を築くために、あえて祭り好きの振りをしているのではなく、ほんとの祭り好きだ。
上の町から急いでやって来たのだ。
こんなに荒い息で丁度良く通りかかったので発言は無駄だ。
俺は実はもっとスパイ的な何かかと思っていたのだが、こいつは単なる祭り好き。そう思った。
「トルテラ様から見える範囲、あの木と、あの木の間。怪我をさせずに勝てる方が強い。
トルテラ様の神前試合。勝負、開始!」
……今何か、嫌な言葉が聞こえた。
親善じゃなくて、神前試合……俺が神様か!
まずい、俺は神様扱いされると何かが起きてしまうかもしれない。
そう思い、リーディアを見ると、リーディアが無駄に良い顔をした。
俺は残念な気持ちになった。
なぜこいつらは、無暗にフラグを立てるのだろうと思った。
だが、勝負は既に始まっている。
「ははは、愉快、愉快」
いきなり、横山三国志っぽい声が聞こえる。
見ると、ブロソススワーレンとカヤハルとマーガレット(横山三国志のダイターンカムヒア)の3人で仲良く酒飲んでた。
お前ら仕事は良いのかよ!!
開始とともに、ラハイテスが寄る。軽く、手を出して、様子見と言うか、遊んでる。
カンカンカンカン木を打ち合う音がする。
アイスも楽々捌き、やり返す。遊んでる。
ラハイテスは、アイスの動きとリーチを探っているのだ。
アイスは恐らく何も考えていない。
ラハイテスがいきなり突きを入れるが、アイスは余裕で捌く。
その一瞬後には、思い切りラハイテスの腰のあたりを狙って打つが、ラハイテスも良く捌く。
2人とも、実力は近いところにありそうだ。
アイスは、凄くがさつだが、実は凄く器用なところがあって、飛んでくる矢を剣で弾いたりする。
俺の真似だが、普通はできない。
戦い方も、器用なのだ。その上パワーがある。
ラハイテスは腹を立てたのか、いきなり連続技を入れるが、アイスは簡単に捌くどころか、間に反撃を入れる。
すると、ますますラハイテスが腹を立てる。
兵たちが盛り上がりまくる。
「ラハイテス!」、「押せ!押せ!」
楽々捌くと言いつつも、アイスは押され気味だった。
実はアイスはアイスで困っていた。あまり対人戦は得意ではないのだ。
軍人は対人戦を重視するが、アイスは、対人で練習しているだけで、対人戦を重視しているわけでは無い。
さらに、身を守りながら逃げるというのが基本方針だ。
盾を持たない都合、攻撃が最大の防御ではあるが、勝つところまで相手を追い込むやりかたは苦手だった。
アイスは、今度は自分から攻めてみる。
右から打って、ラハイテスの受けを流しつつ、左に返す。
これで、大概の相手は倒せるが、ラハイテスは余裕で受け、その後に反撃を入れてくる。
カウンター狙いもあり、安心してリーチを生かした大振りも難しかった。
攻撃は最大の防御。アイスは本来、攻めが得意なのだが、どうもラハイテス相手だと攻撃しにくい。
ラハイテスの間合いに入られて、苦戦する。
棒の中央付近を持って、左右の攻撃を捌く。
そして、離れ際に長く持ち替えて入れた一撃がラハイテスの腕に当たった。
思いがけず当たったことに、安心しつつアイスが言う。
「俺の方が強いな」
これを聞き、ラハイテスが沸騰した。
「胴体か頭だ!」
「そうか、じゃあもう1回だ」
兵たちが大騒ぎになる。
ラハイテスも白熱し、猛攻を入れる。
アイスは予め、棒の真ん中を持ち、剣撃を受けつつ胴を狙う。
そのタイミングにラハイテスがカウンターを仕掛ける。突きは躱される。
相手に怪我をさせてはいけない都合、どうしても突きの速度が下がる。
なので、躱す軌道で素早く突きを入れ、そこから払う。
ラハイテスは、これで決着が付くと思ったが、予想外に防がれた。
死角からの攻撃を防がれた。
そして、さらに棒がもう一本あるかと錯覚するような角度から反撃が来る。
思い切り飛び退く。実際には退いたのではなく、前に跳んだ。
「当たらないのか」 アイスが言う。
それはラハイテスも同じだった。当たると思った一撃から反撃を受けた。
恐ろしく強い。
ラハイテスはなかなか鋭い。素質も優れていたし、よく訓練もしていた。
アイスは、自分でもよくわかっていないのに、ラハイテス相手に善戦している。
アイスは棒を薙刀のように扱い、擦違い様に攻撃を入れたが、ラハイテスには効かなかった。
アイスの方が優勢だが、攻め切れない。
ラハイテスは、手数を増やす分、疲労が激しかった。
長引けば不利になる。そう考えたラハイテスは一気に攻める。
今度はラハイテスの猛攻に遭い、凄い勢いで押される。
ところが押しても押しても、ラハイテスの攻撃はアイスに届かない。
一方、アイスも、やはり手数ではラハイテスには敵わず、一度寄られると攻めまで手が回らない……
捌ききれなくなったところで、ラハイテスが突き払いを入れる。
次の瞬間決着が付いた。
ラハイテスの突き払いを受けた瞬間、アイスは蹴りを入れた。受けた瞬間の蹴りだった。
アイスも体勢を崩しながらの蹴りだったが、ラハイテスの体が一瞬浮く。
そのタイミングを逃さなかった。棒を長く持ち、胴を狙う。
ラハイテスはこれにも反応し、棒で受ける、が、踏ん張りの聞かない状態で大きく動いたため、体勢を崩す。
着地と同時に体勢を立て直すが、アイスはそのタイミングを見逃さない。
体勢を立て直す前に、ベシっと叩きに行った。
うわーーという熱狂と、えーー?というガッカリ感が入り混じった歓声が響く。
「俺の方が強いよ」 アイスが言う。
「腑に落ちんが、そのようだな」 ラハイテスが言う。
その姿は潔く、紳士……軍人らしいものではあったが、そのあと、唐突に騒ぐ。
「トルテラ!私と勝負しろ、このままでは腹の虫がおさまらん!!」
なんで俺が、そんな面倒なことしなきゃならんのだ、と思いつつ、俺が拒否すると他の女にたばっちりが行きそうなので、仕方なく相手をする。
「おお!トルテラ様が!」
と言っても、俺は、中途半端に手加減しながら相手をする気はない。
「はじめるぞ」 そう言うと、ラハイテスが喜んだ。
ラハイテスはもう既に1戦している。
見せ場を用意してやる必要も無いだろう。
ラハイテスの突きは、熊狩りに行ったときに見ている。上手いタイミングで来る。
センスはある。
だが、俺にはスローモーションみたいな能力がある。
早く動けるわけでは無いが、相手の動きは良く見える。
盾で斜め下に弾き、左手に持った棒でラハイテスの武器を巻き込み、盾で横から押す。
そのままさらに棒を捻り、ラハイテスの棒を奪う。
そのまま盾を返し、突きの態勢のラハイテスを盾に乗せる。
抵抗すれば、そのまま放り投げるつもりだったが、静かにしているので、そのまま止める。
「早い」「もう捕まった」
「俺もあの盾で投げられた」「みんな投げられた」
目の前で大将が捕まったと言うのに、ずいぶん和やかだった。
俺は敵視されていないことに、安心しつつも混乱した。
ラハイテスが言う。
「凄いな。盾に人を載せていられるのか。
人間業ではない。
凄いぞ、これだ、私が求めていものは!」
そう言いながら、盾の上で寄ってくる。
意外に俺はピンチに陥った。俺は寄ってくるものに弱いのだ。
「おお!なんと力強い!!」
とか言って俺の腕の筋肉……上腕二頭筋を揉んだ。
ポパイがホウレン草の缶詰食べるとムキっとする、あの筋肉だ。
うへぇ。やめれ、力が抜ける……と思ったら、アイスとリナが撤去してくれた。助かった。
「待て、もう少し、もう少しだけ……」
ラハイテスが撤去されて行く。
「うわー!」「トルテラ様ーー!」
大歓声の中ラハイテスが退場していった。




