17-2.神前試合(前編)
だんだんと、終活の時期が近付いてきます……
※基本土日祝日更新です。
スペランカーレベルに心の弱いおっさんの、とっても残念なお話です。おっさんが興奮しても凹んでもすぐに倒れてしまうお話なのです。生温かく見守っていただけると助かります。
題名が加齢臭で宣伝は終活で中身はパンツの話。こんなのどうやって収拾つけるんだよ!と思う方も多いかと思います。それは至って正常な判断かと思います。
面白いかつまらないかは読者様が判断することですので判断できませんが、一応、加齢臭も終活もパンツも繋がった話を最後まで投稿する予定です。お付き合いいただけるととても嬉しいです。
”誰かが死ぬとトルテラが竜になる” 竜が出たときの話だ。
ラハイテスは、約束通り、その説明を聞きにきていた。
「なるほど、トルテラ様は、森の伝承の存在そのものと言うことだな」
ラハイテスは、森の伝承に詳しくなかったため、リーディアは、まずそこから話したのだ。
ラハイテスは戦いを通してトルテラは神なのだと実感していた。
それでも、本当に神の伝承からはじまるこの話は、あまりにも突拍子も無く、ラハイテスには理解できない部分も多かった。
なにしろ、はじめて聞く話が多い。
トート森出身のものにはなじみの深いこの話も、トート森から遠く離れたこの地ではほとんど知られていなかった。
ストーンサークル間を行き来し、竜の世界に居るときは竜の体を持つという特別な竜。
話だけ聞いても理解できぬが、実際あの光景を見ては、それも事実だと思える。
「まあ、それ以前に、わたしは軍で挑んで蹴散らされた身。信じて付いて行く他ない」
ラハイテスがそう言った。結論は変わらない。
「そうだな。私も負けた。あの頃の私は愚かだった。
まさか、この世のにあのような化け物が存在するとは思っていなかった」
そうリーディアが言うと、
「化け物呼ばわりとは、酷い事を言いますな」 ラハイテスが突っ込みを入れる。
が、”化け物”、実際のところ、ラハイテスもそう思っていた。
神とは、言いかたを変えれば”良き化け物”
「はじめてあの人と会ったとき、あの人はタンガレアに密入国したところだった。
小さなストーンサークルを調査しに来ていたのだが、通行証を持っていなかった。
それで仕方なく、密入国したのだ」
そう。リーディアはトルテラと初めて会ったその日に戦った。
「密入国者を見つけたら、連れ戻すのが私の仕事だ。だから、そこに問題はない。
私が愚かだったのは、相手の力を読み間違えていたところだ。
素人相手に負けるとも思わなかった。
強いのはすぐに分かったのだ。
それでも、私は、あんな素人っぽい動きをする老人に負けるとは思わなかった。
負けたのは当然のことだ。問題ない。
愚かだったのは、戦って尚、相手の本当の強さが見えなかったところだ。
私は負けたが、そこそこ善戦して負けた。そう思っていた」
ここまで聞いて、リーディアが何を言いたいのかラハイテスは理解した。
「後日、わざわざ私は一騎打ちを申し込んだ。
本当に愚かだった。
負けるのは良い。
だが、手加減されてたことに気付く程度の観察力も持っていなかった。
そのことに、ずっと後になってから気付いたのだ」
これは、リーディアにとって黒歴史であった。
「それはリーディア殿が強かったと言うのもあるのではないか?
我々は、手加減して潰されたので降参した」
そう言うと、リーディアは首を振った。否定の意味だ。
ラハイテスは話の続きを引き出す。
「どのように勝負が付いたのか、聞かせてもらえるだろうか?」
またリーディアが話はじめる。
「それがな、なぜか盾を捨てた。
器用に剣と棒で連携した攻撃を出してきた。
それを潜り抜けて、突きを入れたら蹴られた」
「蹴られて?」
「それで終わりだ。
勝てば通って良いと言ってしまったからな、勝った時点で、相手の目的は達成された」
ラハイテスが、頷くと、リーディアが続ける。
「トルテラは、勝ったとき、間違って蹴ってしまったようなことを言っていた。
おそらく、蹴りは使わずに勝負を付けようとしていたようだった。
考えるに、私が納得しやすい勝ち方をしようとしていたのではないかと思っている。
無用な配慮をする人だ。ああ見えて、実は優しいところがある」
「なるほど。良い事を聞かせていただいた。
1つ言わせていただくと、自分が怪我しても相手に怪我させずに撃破する。
どう考えても優しいお方だろう」
「そうだな。私の時も同じだ。手加減するために、私の攻撃を何度も受けていた。
勝つのが目的なら一瞬だった。盾を一振りすれば、それを防ぐ手立てはない。
盾を捨てたのは、私が怪我するのを嫌ってだ。
アレは軽々人を殺すことができる」
「熊を盾で殴り殺すと聞いた」
「あんな大きな熊を狩ってくるとは思わなかったが」
「それは同感だ」
2人は、悪魔と呼ばれた大きな熊を見ていた。
「私の話は、そんなところだ」 リーディアが言う。
すると、ラハイテスは答える。
「妻たちの力の方は、喜んで引き受けよう」
トルテラと行動を共にすると、女達が強くなる。
女達の誰かの身に何かが起きれば、トルテラが怒って竜になるかもしれない。
それを避けるために、自分の身を守れる程度に強くなるのではないか……というのが、リーディアの見解だった。
そこで、ならば、どの程度のものか試してみようと、ラハイテスが自分から手を挙げたのだ。
「私も腕にはそれなりに自信がある」 ラハイテスが言う。
「良いのか? 兵の前で、ただの女に敗れることになるかもしれないが」 リーディアは一応確認する。
「むしろ望むところ。リーディア殿がそう言うほどの……その力が見てみたい」
「そうか。私はそう言うのは嫌いではないぞ」
リーディアは、何故か予備動作付きでカッコイイポーズを決める。
すると、「気が合いますな」と言って、ラハイテスもリーディアに負けないほどの良い顔をした。
時空が歪み、残念空間が発生するほど残念な光景だった。
トルテラがこの場に居たら、数日間寝込むほどのダメージを受けるに違いない。
そう思えるほど残念な感じだった。
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「今日は何するんだ?」 アイスに聞かれる。
「俺はまだ、ちゃんと全員のひざまくらを満喫してないから」
今日は特にどこにも行かず、女達のひざまくらでも満喫しようと思っていた。
「私がやってあげる」 一早くルルが言う。
「そうか。じゃあルルから」
そう言うと、ルルは嬉しそうに「やった!」と言った。
どうせすぐに飽きるとは思ったが、俺は、こんな平穏な日々を過ごしたいのだ。
「俺、毎日しようと思ってるんだ。トルテラが死ぬまで毎日」 アイスが言う。
「そうだな。毎日してもらうかな」 適当に答える。
俺があっさり答えると心配になるのか、アイスが言う。
「本当に中華まん倒さなくて良いのか?」
「そうだな。ディアガルドとグリアノスとも相談しないといけないからな。
倒した方が楽なら、倒しておくのもアリかな」
そう答えると、女達の視線が一瞬集まった。
女達は、やはり、中華まんを倒すと言う選択肢を捨てきれないということを知る。
リーディアが戻ってきた。ラハイテスと一緒だ。
俺の脳裏にニュータイプのひらめき音が轟く。
なんか、こいつら、途轍もなく凄く残念なオーラを纏っている。
凄く関わり合いたくない感じがした。
ところが、珍しく、俺ではなく女達の方に行く。
「で、どっちが相手をしてくれるのだ?」 ラハイテスが言う。
別の意味で嫌な予感がした。
「練習試合だ。悪いが是非とも相手をして欲しい」 リーディアが付け加える。
「キャロライン殿に聞いた。
勇者殿と比べると落ちるが、2人もなかなかの腕だと」
リーディアを除く2人と言うなら、アイスとリナのことだろう。
「この2人は、そいつ(リーディア)と違って軍人じゃないぞ」 釘を刺す。
ところが、アイスが乗ってしまう。
「武器は?」
「練習に使っている木製のものでどうだ?」
「じゃあ、俺がやるよ。どうなると勝ち負け決まるんだ?」
「そうだな。どっちが強いか、わかるまででどうだ?」
「珍しいルールだな」アイスが答える。
トルテラは、どっちが強いかなんて、どうなると決まるのだろうか? と疑問に思った。
ただし、脳筋的な基準が存在するのかもしれない……とも思った。
ラハイテスの部下たちが、いろいろな種類のものを持ってくる。
現地調達……つまり、最近この付近で集めた木の棒を、多少加工した程度の棒きればかりだ。
ラハイテスが言う。
「好きなのを選べ」
アイスは、「俺、長い棒が良いんだけど」と言い、一番長いものを取る。
槍か杖という感じのものだ。
それを見てラハイテスが確認する。
「良いのか? ここには木があって狭い場所もあるが」
するとアイスは特に気にする様子もなくあっさり答える。
「いいよ。このくらいが良い」
「迷いが無いのだな?」
「なんでだ?」
「まあ良い」
ラハイテスは、アイスが長剣を使うことは知っていた。
大柄の女が冒険者には珍しい長剣を持っているので目立つ。
長いリーチを生かした戦いが得意なはずだが、相手が分かっているなら、相手に合わせた武器を選ぶこともある。
アイスには全く迷いが無かったように見えた。
ラハイテスは、長剣の扱いによほど自信があるのだと考えたが、実際は違った。
アイスは単に使いやすそうなのを選んだだけで、相手が誰かなんて考えていなかった。
ただし、ラハイテスも脳筋。相手に合わせて武器を変えるなど無粋。そう考えた。
「私は、これを使わせてもらう」
ラハイテスは、愛用の一応剣っぽい握りを付けた棒だ。




