16-22.でかい女の竜の妻、2頭現る(前編)
だんだんと、終活の時期が近付いてきます……
※基本土日祝日更新です。
スペランカーレベルに心の弱いおっさんの、とっても残念なお話です。おっさんが興奮しても凹んでもすぐに倒れてしまうお話なのです。生温かく見守っていただけると助かります。
題名が加齢臭で宣伝は終活で中身はパンツの話。こんなのどうやって収拾つけるんだよ!と思う方も多いかと思います。それは至って正常な判断かと思います。
面白いかつまらないかは読者様が判断することですので判断できませんが、一応、加齢臭も終活もパンツも繋がった話を最後まで投稿する予定です。お付き合いいただけるととても嬉しいです。
トルテラが体を洗い終わって、ストーンサークルに近付いた時だった。
”竜が来る” そう感じた。
俺はこの気配を知っている。
恐ろしい気配の衝撃波をあげながら、竜が世界を越えてやってくる。
そんな感じだった。
竜だ。でかいとは聞いていたが本当にでかい。
俺の気配増大は竜のものかもしれない。
自分で自分の気配の異様さを感じることはできないが、たぶん、こんな感じを受けるのだろう。
そう思った。
なるほど、これは恐ろしい。
普通は心のどこかで気配を感じるというレベルなのに、コイツは腹の底から響くようなものだった。
「離れろ、何か来るぞ!」
ギャーとかうわーとか、女っぽくない悲鳴が響き渡る。
いやいや、こっちが地だろう。
もしかしたら、日本に住んでいた時の一般的な女性の悲鳴は、あれは緊急時でも発動するよう高度に訓練された結果なのかもしれない。
緊急時になると、余計なことを考えて妙に冷静になってしまう。
いったいなんなんだろう?
音なのか、振動なのかわからない何かを響かせて、ストーンサークルに巨大なものが現れた。
間違いない。竜だ。でかい。
人間の体で感じる竜の大きさは、凄まじいものだった。
確かに、聞いてた通り、家よりでかい。
ゾウとかそんなレベルじゃない大きさだ。こんな大きさのものが存在することに驚くレベルだ。
なるほど、確かに、コイツには絶対に勝てそうもない。
そんなものが突然ストーンサークルに現れる。
まだ呼んでも居ないのに……夕飯時で腹減ったのか?
でかい……子犬の巨大なやつ。
ディアガルドだ。俺は竜の視点で見た姿しか記憶に無いが、間違いない。
竜の目で見ると、超美竜なのだが、人間の目で見ても色っぽくはないが、まあかわいいと言えばかわいい。
遠くから見れば。なにしろ、子犬のでっかいやつだから。
暗視なので色はよくわからないが。
「良かった。来てくれたか、熊とってきたぞ」
そう言いながら近づくと、いきなりベロンとやられた。
【あ、おいしい】
声が聞こえたような気がした。
「あ? 今なんか言ったか?」
舌まででかい。一舐めで、全身やられた。
「うえぇ、俺、今体洗ったんだぞ。もうベタベタになったじゃないか」
「……」
無言だ。ディアガルドは人と話すことができる竜じゃなかったか?
「まあいいや。呼んでも出てこなかったくせに、熊があれば勝手に出てくるのかよ」 俺は突っ込みを入れる。
でっかい竜相手でもかまわず突っ込みを入れる。それが俺の美学なのだ。
熊はストーンサークルの近くまで持ってきてあったので、覆いの布をとって熊を見せる。
「でかいだろ、この熊」
すると、巨大な口が迫ってくる。凄い牙が見える。
おお? いきなり来ると恐ええよ! と思って避けると、熊を荷車ごとバリバリ食う。
いや、荷車壊して熊食いやがった。
「トルテラさまが竜に!」
兵達が慌てふためく。
「おい、慌てるな!そんなに腹へらしてたのかよ」
運ぶのにあれだけ手間取った熊を一口で食われた。
もっと味わって食えよ、とかいろいろ思った。
「ああー荷車壊された」
「おい、荷車だってけっこう高いんだぞ!
これ、でかいやつで貴重なのに、そういやこれ借り物だ、どうするか?
俺、ラハイテスに借りを作りたくないんだよ」
【確かに受け取った】
は?
なんか、脳に直接響いた。
「ディアガルド、久しぶり」 アイスだ。
「おまえが熊を取ってこいって言ったんだろ」
ディアガルドに話しかけるが返事がない。話せないのか?
さっき喋ったよな?
そのとき、恐ろしく大きなものが転移してくるのがわかった。
竜だ。でかい。ディアガルドと同じくらい、でかいやつが来る。
また、凄い衝撃を感じる。
2体目?
まずい、俺はまた何かしくじったかもしれない
「おい、お前ら全員、なるべく遠くに避難しろ」
離れるように言うが、避難しないのが何人かいる。
「全員だ。おい、兵士達も頼む」
いや、避難しないのではない。固まって動けないのだ。
竜を見慣れたうちの女達が急いで兵士たちに駆け寄る。
腰が抜けた者もいた。
「ルル、早く」
テーラがルルを引っ張って行った。
ルルも固まって動けなかったようだ。
女達はディアガルドはよく知ってるはずだが。
ストーンサークルに巨大なものが現れる。
でかいやつが来た……
また巨大な子犬、ディアガルドだ……いや、俺には、竜は全部同じに見えるのか!
見分けが付かん。
後から来たディアガルドが言う。
「この泥棒猫が!妾の獲物を盗むとはなんたることじゃ!」
そして、思い切り助走をつけて先に来たディアガルドに突進する。
俺が竜になったとき食らったやつだ。
あの体でも凄い衝撃だった。
アレの威力は相当なものだ。地響きと土埃で凄いことになる。
地響きの数秒後、すごい土埃の嵐がブワっと通り過ぎる。
”グオオオオオオオオーーー!!”
唸り声も、腹に響く凄いやつで、俺は、俺の妻がこんな唸り声出すやつだったら嫌だなと思った。
でも、たぶん、どっちかが、俺の妻のディアガルドなのだ。
いや、後から来た方がディアガルドで、先に来たのは別のやつだ。
後から来たやつの方が声が残念だった。あれが、ディアガルドだ。
やべぇ、俺、先に来た方に舐められた。
下手したら食われるところだったか?
とりあえず、人間の心配が先だ。
「お前ら、人間にケガさせたら許さんぞ」
「危ないから離れておれ」
話が通じた。
片方はディアガルドだ。もう片方は誰だ?
女達に駆け寄る。
「大丈夫か?兵士たちは?」
「怪我人は居ない」
漏らしちゃったり、腰抜けちゃったりした兵士は何人かいるようだ。
ある程度の距離離れると、連携して動けるようになっていた。
「なんで竜が2体も来るんだ?」
そんなことを聞かれても、俺もわからない。
「まずい、よく分からんが、何かしくじった。
とにかく安全なところに、なるべく早く離れてくれ」
俺が言うまでも無く、リーディアは動いてくれる。
「絶対に死人は出すな。
誰も死ぬことは許さん。
誰かが死ねばトルテラは竜になる」
リーディアは自分に言い聞かせる。
そうだ。もし誰かが死んだりしたら、トルテラが怒ってきっと……
だから、まずは自分の身を守れ。
「何を、あの男が竜とはなんだ?」 ラハイテスが竜の言葉に釣られてしまった。
「ラハイテス、早く撤退の指揮を取れ、指揮官なら指揮官の役目を果たせ!」
リーディアが言い聞かせるが、ラハイテスも退かない。
「竜の話を聞かぬことには」
「今はそんな暇はない。後で話す。まずは避難の指揮をとれ」
「その話、信じて良いのか?」
「誓おう」
「お前の神にか?」
「あそこに居る。トルテラに誓おう」
「わかった。あとで必ず」
そう言うと、ラハイテスも避難の指揮をする。
「お前ら、退き方で強さが分かる。逃げるときは見事に逃げて見せろ」
「何をしている、兵よりお前が遅い!」 カヤハルに説教される。
遠くで、大きな岩でも落ちて来たかのような音が聞こえる。
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2頭の竜は相変わらず凄い勢いで戦っていた。
【私が貰ったのだ】
「それは、妾への贈り物だ」
【お前は受け取らなかった。受け取ったのはこの私。だから、私が妻】
何を言ってるのか聞いていると、どっちが妻かで揉めてるようだ。
俺を置いて、勝手に喧嘩するな!……と思ったが、ちょっとだけ嬉しくなった。
遂に、憧れのあのセリフが言える日が来たのだ。
「やめて!私のために喧嘩しないでーーーー!」とか言ってみた。
しかし、こいつら聞いてない。
「妾の獲物をあやつは何度も受け取った。妾が妻じゃ。
そして、妾を妻と認めたから獲物を持ってきたのじゃ。それを、お前が!」
ん? 今なんか聞き捨てならないことを言わなかったか?
「おい、ディアガルド、俺はそんな話、聞いてない……」
ほがっ!
どっちかに当たって、俺は吹き飛ばされた。
「今のはちょっと痛かったぞ!」
いや、すげー痛かった!
「おい!普通の人間なら死んでたぞ!」
しかし、返事が無い。
”グオオオオオオオオーーー!!” 相変わらず、唸り声が酷い。
「お前ら、俺の妻とか言ってる割に、結婚前に俺死ぬぞ! おい!」
ふんげーーー!!
また何がに当たって吹き飛ばされた。
くっそ、腹立つ。
少々怪我するかもしれないが仕方がない。
汚物は消毒!
火炎放射だ。
「薙払えー!」 自分で言って自分でやる。
ところが、炎がボフっと中途半端に出て、底が抜けた。
火炎放射で焼き払うつもりが、何かに吸い込まれる。
ストーンサークルから落下した。




