16-21.でかい女の竜の妻、ついに現る(7)
だんだんと、終活の時期が近付いてきます……
※基本土日祝日更新です。
スペランカーレベルに心の弱いおっさんの、とっても残念なお話です。おっさんが興奮しても凹んでもすぐに倒れてしまうお話なのです。生温かく見守っていただけると助かります。
題名が加齢臭で宣伝は終活で中身はパンツの話。こんなのどうやって収拾つけるんだよ!と思う方も多いかと思います。それは至って正常な判断かと思います。
面白いかつまらないかは読者様が判断することですので判断できませんが、一応、加齢臭も終活もパンツも繋がった話を最後まで投稿する予定です。お付き合いいただけるととても嬉しいです。
「トルテラが本当に神だとしたら?」
「神だとすると、困ることが」 リーディアが言った。
「困ること?」 ルルが聞く。
「何から話して良いのか……
今回は、いろいろ報告があってな」
「まず、リナとアイスとトルテラが熊狩りに出た翌日、私は体調を崩して寝込んでいた」
これは、トルテラと一緒に出かけていた、リナとアイス以外は知っている話だった。
「私は、あの人が居ないと不安で悪夢に耐えることができない」
「悪夢?」 アイスは混乱する。
タンガレアでは中華まんも熊も悪夢と呼ばれていた。
「夢の話だ。自分でもバカバカしいと思っていた。
ところが、あの人が神だとすると、あれは夢ではなく本当にあったことだったのかもしれなと思うのだ」
「神と何の関係があるんだ?」 アイスが聞く。
「トルテラは、この世界とは別の世界から来たと言っていた」
「そうよ。”転移する竜が連れてきた”って先代ルオール候が言ってた」 エスティアが答える。
「ええ? 私、そんなの聞いてない」 ルルが驚く。
「私も聞いた。確かに、そう言っていた」 リナが付け足す。
「そんな話があったのか。私は知らなかった。
私はてっきりヨコハマは、どこか遠くの国の名前かと思っていた」
先代ルオール候から直接話を聞いたのは、エスティア、リナ、テーラ、アイスの4人だった。
その後、話題にも上がらなかったので、話す機会がなかった。
そのため、リーディアとルルは知らなかったのだ。
「地下にう〇この流れる川のある修羅の国なんか、この世界にあるわけ無いじゃないか」 アイスが言う。
※下水のこと。
「そうか。私は別の世界から来たなんて思いつかなかった」
リーディアが元気無く言った。
「で、神様だと何があるんだ?」 アイスが尋ねる。
「遠くの世界から来たなら、遠くの世界に行ってしまうこともできるんじゃないかと考えてしまう。
もしかしたら、時間を超えることもできるのかもしれない」
「私もそう思う」 テーラが同意する。
「そう言えば、トルテラは時間の概念がどうとか言ってたな」 リナだ。
「トルテラは凄く詳しくて、なんかいろいろ言ってた」 エスティアが言う。
「そうか。皆知っているのか。では、こっちから話そう」 リーディアが言う。
「ええ? 何? 私ぜんぜん意味わからないんだけど」 ルルは話についていけなかった。
「大丈夫だよ。俺もよくわかんないから」 アイスはルルは仲間だと思った。
「実は、リナとアイスが戻ってきたら話そうと思っていたことがある。
ライゼンから気になることを聞いた。
トルテラは、男子会で”終活”という言葉をよく使っていたそうだ」
「終活?」
「なんだ?」 アイスが反応する。
「終わりのための活動という意味だそうだ。
要するに自分が死ぬときに備えて、自分で自分の最後の準備をしておくこと」
「ああ、男はそういう言葉を使いそうだな」
「その話と、今日のトルテラの話がダブって。
ラハイテスたちの帰し方、城下町の避難の話。
そして、城下町で死にたかったと言った。
あれは、どこで死ぬのか既に知ってて言っているのではないか?」
「え? トルテラは俺と約束してくれたんだよ。中華まんとは戦わず、皆で暮らすって」 アイスが言う。
「トルテラは守れない約束するからな」
「俺とずっと一緒に居るって」 アイスが泣き出す。
「トルテラのあの様子」
「なんか、あと少しでゴールみたいな感じだったかも」
「確かに、なんか、すべてのことやり切ったような。何か変だった」 エスティアが言う。
「元々やる気は無いけど、だいぶ雰囲気が違った」 テーラが言う。
「あの人が死ぬまでの道のりが、見えているような気がする」 エスティアが言った。
「体力落ちて引退なら安心なんだけど」
「体力落ちてないよ。だって、あの熊を正面から殴り殺したんだぞ」 アイスが言う。
「何かおかしい」
「そう、おかしい」
「あの人死ぬ気じゃない?」
「もしかして、竜の国に行く決心した?」
「私もそう思う。いつ死んでも良いように、いつお別れになっても良いように、
未練を無くすために行動しているのかもしれないって」
「トルテラは、既に終活をしてるのか?」
「本当のことを話して貰って、私たちも、準備をしなければならない時期に来ているのかもしれない」
「終活の中に子供は入ってるのかな?」 アイスが反応する。
「勇者の子供は?」
勇者伝承で子を産むのは、勇者の話だが、もはやリーディアだけの問題では無かった。
「今までずっと一緒に暮らして、一緒に寝てたのにできなかった」 エスティアが言う。
エスティアとリナは一番長くトルテラと生活していた。
いろんなことがあったが、いつも娘扱いで、子供はできなかった。
子供を作れない体なのかと思っていた。
ところが、勇者伝承では子供を残すことになっている。
だから、もしかしたらいつかトルテラの子を持つことになるのかもしれない。そう思っていた。
リーディアが言う。
「あの人が死を意識し始めてもなお、子ができない理由。
実は、気になっていることがある」
「何?」
「言いにくいことなの?」
「凄く説明が難しい」
「私から話す?」 めずらしくテーラがリーディアのサポートに入る。
「ああ、ありがとう。私が自分で話す。テーラが、聞いてくれただけで十分助かった」
そう言うと、リーディアは話しはじめた。
「わかってもらえるかわからないが、話すだけ話す。
実は、記憶が曖昧で、果たして現実だったのか分からない。
昔からよく見る夢がある。
今でも見るが、どんどん現実味を感じるようになってきた。
ただ、どうやら、あれは本当にあったことなのではないかと思うのだ。
私は妻仲間に入る前に、トルテラとダルガンイストを戦わせたことがある」
「ああ。そうだな。あのときは迷惑な奴だと思った」 リナが言う。
「やるときは徹底的にやる必要がある。
だが、あれには、他にも理由があるような気がするのだ」
「なんだ?」
自分でしたことなのに”気がする……”。何かに操られて?
「いや、あまりに現実離れしたことなので説明が難しい」
リーディアがそう言うと、テーラが反応した。
「もしかして、昔の勇者伝承と大鎧の書?」
「鋭いな。確かに関係がある」
「あ、それなら私も知ってる」 ルルがようやく話に乗れた。
「歴史は変わることがある。
勇者伝承が変わるのは、大鎧の書が書き換わるから。
大鎧の書は、トルテラの書。
だから、トルテラの行動で変わっていく。
逆に、変わった結果はトルテラが受け止める必要がある」
「何言ってるかよくわからないな」 アイスが言う。意外に元気だ。
「その話はどこから?」 エスティアが聞く。
「私が思っただけだ。でも、たぶんそうなのだと思う。
ダルガンイストも、まさか、あんなことになるとは思わなかった。
まさか全軍で出てくるとは思わなかった。
そして、あの人は圧勝した」
「勝つことを知ってて喧嘩売ったんじゃなかったのか」 リナが言った。
「元々古い話では大鎧はダルガンイストと戦うことになっていた。そして実際に戦った」
「なるほど。一見無くなった、歴史が変わったように見えても、余波は受けるということか」 リナだ。
「あの人が救った結果私が生きているのだとしたら。
あの人は私を救いに行かなければならない」
「何の話だ?」
「私は子供の頃、中華まんに食われて死んだ」 リーディアが突拍子も無いことを言い出す。
「何言ってるんだ?」
「そう思うだろ。誰だってそう思うだろう。今私が生きてるのだから。
だから、私もあれは夢だったと思っていた。
しかし、中華まん、あれを退ける存在が居る」
「トルテラのことだな?」 アイスが言う。
「リーディアの子供の頃と関係ないでしょ?」 エスティアが突っ込みを入れる。
「だがな、助けてくれるのだ。
何を言っているのか意味がわからないだろ。
私は自分でも、そう思っている」
エスティアは困惑した。
「私は何が起こったかわからないまま死んだ。
今思えば、あれは中華まんだったのではないかと思っている。
それを倒せるのはおそらくトルテラ一人。
私が死ぬのを知れば、あの人は助けに行くかもしれない。
そんな気がしたのだ。
いや、あの人は、私が死ぬことを知れば、おそらく助けに行ってしまう。
私が勇者として選ばれては、いけなかったのかもしれない」
エスティアには、リーディアが言っていることの意味はよくわからなかった。
でも、もし、そんなことがあったとしたら、エスティアには、トルテラが何をするかはわかった。
「もしも、あの人が時を超えることができたとして、リーディアが死ぬことを知っていたら助けに行くと思う。
でも、だとしたら、もっと前に行ってるかもしれないし、もっと後でも構わないと思う」
「私が、送り出す役割を今果たすとしたら?」
「なんで今なの?」
「あの人が終活をはじめて、私が送り出す役目を果たす必要ができたら……私は送り出す」
「大丈夫だよ。私が待ってるから。ずっと待ってた。また戻ってくる」 テーラが言う。
リナも言う。
「私も約束した。私はどこにも行かないでと言った。
けれど、あの人は、どこかに行っても、帰ってくると言った。
あの人がどこかに行ってしまうのは仕方が無いことなのだと思う。
でも帰ってくると約束した」
「私は、あの人を引き留めようと思っていた。
でも、今はその時が来れば送り出そうと思っている」
「子供は?」
「そう。それだ。私は、今まで子供ができてから送り出すつもりでいた」
「何か理由があるの?」
「中華まんに食われて死ぬのは、夢の話かもしれない。
だが、あの人はダルガンイストと戦って勝った。
普通に考えてあり得ないことを実現することができる。
故に神だ。皆がなぜトルテラを神だと思うのか不思議に思わないか?」
「それは、不思議に思うこともあるけれど……」
「体が大きいだけで、すぐに倒れる老人だ。
なのに皆、トルテラが神だと思っている。何故だ?
私は勇者を選んだからだと思っていた。
ところがラハイテス達はトルテラが先代勇者、神であることを知らなかった。
なのに、神だと思っていた。
私は思うのだ。何かをしたから神なのではなく、元から神だったのではないかと」
「なんで神だと思ったのかラハイテスに聞いてみるよ」 アイスが言う。
「私は、子供ができたら、あの人を竜の世界に送り出すのが勇者としての役割だと思っていた。
でも、そうでは無いのかもしれない。
私があの人の行動を邪魔しているから、子ができなかったのかもしれない」
「でも、産湯に入っただろ」 アイスが言う。
「産湯に入るって?」 またルルが話題に乗れない。
「勇者伝承でも、子ができるはず。なのに、できなかった。
まだ何か足りないのか……もしかしたら、もう既に手遅れなのかもしれない。
でも、私は送り出そうと思う」
そのとき、異様な気配を感じる。
「なんだ?」
「竜?」
良く知っている気配だった。
「ディアガルドだよ、ディアガルドが来た!」
「え? 今来るの?」
恐ろしい空気が漂う。
兵士たちも、動揺する。
何かでかいものがくる。
「離れろ、何か来るぞ!」




