散歩道のエイリヤンと深山の赤い軍勢
ふと見上げた青空に、妙なものが浮かんでいた。
薄手の衣をまとったような、しかしどこか不気味で巨大な影。
まるで異星の船が、静かにこちらの様子を窺っているかのような雲だ。
私は心の中で、それを上方風にこう呼んでみた。
散歩道 エイリヤン雲 迫りけり
そんな奇妙な空の下を歩いていると、ふと足元や木々のざわめきに、ちいさな、しかし力強い命の気配を感じる。
これからの季節、クヌギの樹皮を揺らすのは、あの黒い重戦車だ。
カブト虫 のそりのそりと 蜜求め
焦る風でもなく、ただ己の飢えと本能に従って、のそりのそりと進む無骨な姿。
だが、夏の主役は彼らだけではない。
さらに山の深奥、深山の闇を目指して進軍する、もう一つの兵たちがいる。
クワガタや 赤い軍団 深山へと
クワガタといえば黒い鎧を連想するが、深山に棲まうミヤマクワガタの身体は、渋く、鈍い赤みを帯びている。
それはまるで、戦国乱世を駆け抜けた「赤備え」の軍勢のよう。
見慣れた散歩道も、空を見上げ、足元に目を凝らせば、いつでも異界や戦場へと繋がっている。
そんなちいさな発見が、日々の歩みを少しだけ深く、面白くしてくれるのだ。
いつも応援ありがとうございます。
本日は、本作をリアルタイムで追いかけてくださっている皆様へ、すでに【完結済】となっている、私のもう一つの歴史小説をご案内させてください。
屋島の海に舞った紅の扇を射落としたことであまりに有名な英雄・那須与一。
もしも彼が「英雄になりたくなかった、一人のストイックな職人」として、ただただ一族の泥臭い生存を追い求めていたとしたら――。
■ 完結済『風を読む ―那須与宗隆 手塩の弓』
大冷山から吹き下ろす「那須おろし」は、飢えた者の肌を容赦なく削る。
後世、人々は彼を英雄と呼ぶでしょう。だが、彼が真に射抜こうとしたものは、名誉でも英雄の座でもありませんでした。それは明日の飯であり、引き裂かれた血族の再会であり、「那須の人間は、しぶてぇんだっぺ」と笑い飛ばす、終わりのない一族の生存そのものでした。
華やかな源平合戦の影で、弓という「道具」一つを武器に、時代の嵐を読み解き、八百年の未来を射抜こうとした一人の職人の物語です。
すでに最後まで一気読みしていただける状態になっております。「那須一族のしぶとさに勇気をもらった」と感じていただけましたら幸いです。ぜひこちらのURLから、那須の荒野の風を感じてみてください!
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