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越後の散歩道から、あなたへ送る四季の言葉。  作者: あっちゅ寝太郎


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「そうなのかなぁ?」と曲がり道をゆく ――「中くらい」の青の門へ

「そうなのかなぁ?」と曲がり道をゆく ――「中くらい」の青の門へ



世の中には、人生を豊かにするための「正しいデザイン」や「成功のための法則」が溢れている。

空間を整え、人間関係を計算し、直線的な最短ルートで目標へ向かうこと。テレビや本でまことしやかに語られるそんな理論を耳にするたび、私の心には、ふとした違和感が通り過ぎる。

「そうなのかなぁ……?」

綺麗に整えられた正論の通りに生きようと頑張りすぎてしまうと、いつの間にか心が満杯になってしまう。

「ここまでしなくてはいけない」という理想のハードルが高くなるほど、いま生きているこの時間が、少しずつ窮屈になってしまうのではないだろうか。

生身の命は、きっともっと、のびのびとした場所にある。

かつて目にした、野生の雷鳥の姿が優しく頭をよぎる。

まだ気温の低い厳しい日、親鳥は卵を冷やすまいと、普段の何倍も早く食事を済ませて、急いで愛しい巣へと戻っていった。そこには計算も理屈もない、ただ命を繋ぎたいという、あたたかな本能の姿だけがあった。

やがて、雛たちが殻を破り、ふ化した瞬間。

「 立山を 急ぎついばみ 殻を動く 」

厳しい大自然のまっすぐな営みを見つめていると、人間が頭の中で描く「こうあるべき」というこだわりが、少しずつ削ぎ落とされていくのを感じる。

人間も、頭の中の理論と、生き物としての本能を自分なりに噛み砕き、ちょうどいいバランスで捉え直せたら素敵だ。

「ここまでやらねば」ではなく、「このあたりまでは、で良い」と。

100点満点の人生を目指すのではなく、持続可能な「中くらい」を目標にして、少しずつ、徐々に進んでいけばいい。

歴史のひとコマに、こんなお話がある。

かつて関東の覇者であった北条氏は、目先の一本の境界線を越えて、真田の名胡桃城を求めたばかりに、やがて大きな転換期を迎えることとなった。

「 名胡桃を 越したばかりに 名家落つ 」

「このあたりまで」という、足るを知る優しさが手元にあれば、守れたものはたくさんある。仕事も、人間関係も、自分のキャパシティという境界線を越えて欲張りすぎてしまうと、大切な心が擦り切れてしまう。

私たちは、世の中のすべての問題に答えを出さなくていい。時には、ただの「聞き役」でいい。

目の前の出来事をコントロールしようとするのをやめ、「そうなのかなぁ?」とただ静かに耳を傾ける。そんな「余白」のある中くらいのスタンスが、お互いの心をふっと軽くしてくれる。

どれだけ人間が知恵を絞っても、思い通りにならない季節はある。

あの諸葛孔明が五丈原の秋風に想いを馳せたように、一度生を受けた私たちの人生は、夢か幻のように優しく流れていくものなのだから。

「 生を受け 夢かまぼろし 五丈原 」

すべてを完璧にコントロールしようとするのを手放したとき、私たちの足元には、先が見えないからこそ愛おしい、一本の道が開けていく。

「 曲がり道 夏を探しに 向かう笠 」

それは決して平坦な直線道路ではない。

右へ左へとくねりながら、自分の足で一歩ずつ進む旅だ。誰かが作ったルールではなく、自分に馴染む笠をひとつ頭に乗せて、生命力の満ち溢れる「夏」を探しに向かう。

そうして肩の力を抜き、自然の風景に身を委ねて歩んできたからこそ、出会える景色がある。

「 光る汗 長くくねった 青の門 」

流れる汗は、一生懸命に生きている瑞々しい証そのものだ。

長くくねった道の先には、人工的に整えられた狭い部屋ではなく、すべてを包み込んでくれる広大な青空のような、命の門が待っている。

頭の中の難しい理論は、ちょっと横に置いておこう。

私たちはもっと不器用で、もっとシンプルで、テキストの「中くらい」のままで、十分に素晴らしいのだから。

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