春の酔いから佐渡の波まで 〜破れかぶれの五句〜
新潟の春というのは、どうにも一筋縄ではいかない。
お日様が顔を出せばぽかぽかと温かいが、風が吹けばまだまだ肌寒い。
そんな日は、あちらこちらの言葉を混ぜ込みながら、気取らない五七五をひねってみるのが、何よりの贅沢というものだ。
まずは一杯やりながら、お腹の毒を流すとしよう。
「春の酔い こんにゃく滑り 胃を洗う」
古来、こんにゃくは「胃のほうき」なんて呼ばれてお腹をきれいにしてくれるというが、春の酒でいい心持ちになりながら、つるりと喉へ滑らせるこんにゃくはまた格別だ。
そうして呑んでいるうちに、台所からは何やらいい匂いが漂ってくる。
「炊く香り 待ち遠しいは 暮六つか」
ご飯だけではない。煮物も、鍋物も、美味いものはすべてコトコトと「炊く」のだ。
そのすべての香りが混ざり合った至福の湯気の中で、お酒の刻限である「暮六つ(午後六時)」を今か今かと待ちわびる時間は、なんとも愛おしい。
お腹が満たされれば、心はふらりと旅へ向かう。
目指すは、お隣の佐渡ヶ島だ。
「佐渡の波 引かぬ本間と 鬼モズク」
佐渡の荒波に一歩も引かない名門・本間氏の気骨と、その海で力強く育つ歯ごたえ抜群の鬼モズク。男らしい頑固者たちが、佐渡の海で火花を散らしているような情景が浮かぶ。
だが、現代の旅はもう少し気楽でいい。
「佐渡の旅 選ぶはトリバゴ 凪の海」
スマホを片手に「どこが良い宿かねぇ」と指を動かしている時間も、すでに旅の一部だ。ふと顔を上げれば、海は鏡のように穏やかな凪。最高の旅路を予感させてくれる。
最後に、ちょっと季節が先走ってしまったが、佐渡の厳しい自然と人の熱気を込めた一句を。
「波のはな 荒波うなり 佐渡おけさ」
冬の冷たい風に舞う「波の花」のうなりを背景に、どこからか聞こえてくる切なくも力強い佐渡おけさの節回し。
俄小説家 あっちゅ寝太郎でござる。歴史短編小説も書いておりますので、ぜひご覧ください。




