:『とこがねの空、花火の余韻――夏の夕暮れを歩く五句』
夏の匂いが、そこかしこから漂う季節になりました。
ふと立ち止まった瞬間に、胸の奥をすくい取るような言葉に出会うことがあります。
今回は、私の心の中にふっと浮かび上がった、五つの情景を。
短い言葉のなかに広がる、光と音の物語です。
「 縁の板 いつぞや謡う 青蛙 」
古い縁側に、ちょこんと座った青蛙。
その姿を見ていると、かつてこの場所で誰かが心地よく謡をうたっていた、そんな遠い日の記憶までが、蛙の鳴き声に乗って聞こえてくるような気がします。
「 風止みて 彩の失せるや 夏夕べ 」
夕暮れ時、それまで吹いていた風がピタッと止まる一瞬があります。
熱が引き、世界の色彩がじわじわと闇に溶けて、モノクロームへと変わっていく。
あの、少し寂しくて、妖しいほどの空気の変わり目。
「 眼にとどくすべての彩が 花が住み 」
けれど、闇に沈む直前、世界はもう一度だけ、息をのむような輝きを見せてくれます。
目に映るすべての色が、まるでそこを終の住処とする「花」のように、艶やかに、瑞々しく主張を始めるのです。
「 暮れる川 花の大輪 かに響く 」
夜が訪れ、遠くの空に大輪の花火が咲く。
川の面をかすめ、文字通り「微かに」、そして「彼方から」届く、ドォンという重低音。
言葉が途切れたあとも、耳の奥にはずっと、その余韻が響き続けています。
「 とこがねの 冷めて暮れゆく 角田山 」
そして、一日の終わり。
最後の最後まで山の端にしがみつくように、じっと、常に輝き続けようとしていた金色の夕光――。
その「とこがね」の光が、刻一刻と熱を失い、冷め、静かに角田山の闇へと没していくのです。
蛙の愛嬌からはじまり、光と影の移ろい、夜の音、そして山の静寂へ。
皆さんの目には、どんな景色が映りましたでしょうか。




