:風と星、そして故郷の光をめぐる旅
:自然の猛威に圧倒されながらも、心はどこか昂っていた。世界が激しく揺れ動く日がある。「 大風に 向かう燕と 踊る川 」逆風を突いてまっすぐに飛ぶ燕の強さ。風に煽られて白波を立て、激しくうねり狂う川。それは自然が魅せる、命の乱舞だった。嵐が去り、訪れた静寂。「 夏近し 月夜に渡る 蛙の音 」青白い月明かりが、夜の散歩道を静かに照らす。昼の激しさが嘘のように、心地よい蛙の合唱が夜気の中に溶けていく。その足は、さらに雄大な景色へと向かう。「 山登り 星が零れる 青海川 」息を切らして登りきった、夜の山。見上げれば、今にもこぼれ落ちてきそうな満天の星。足元には、星の光を映してサラサラと流れる青海川の清流。旅の夜は、大人の粋な愉しみへと繋がっていく。「 春の酔い マグロ喰らいて 鯨波 」春の陽気とお酒の心地よい酔い。新鮮な海の幸を豪快に味わい、鯨波の海を眺める贅沢。そして、旅の終わりに行き着いたのは、かけがえのない場所だった。「 故郷の 友顔うつす 花火かな 」夜空にパッと咲いた大輪の光。それが、隣にいる懐かしい友の横顔を色鮮やかに照らし出す。昔と変わらない笑顔に、胸がじんわりと熱くなる。宴のあとの帰り道。「 東風吹けば アカシヤ寒し ふける夜 」春を告げる風が吹きながらも、夜更けの街路樹はまだ冷たい。けれど、心の中には確かに、旅と故郷の温かい光が灯っていた。(終)




