「四畳間に留まる風と、西川の温もり
本文
今年の三月から、見よう見まねで俳句を詠み始めた。
元来、物語を紡ぐのは嫌いではないが、十七音という限られた器に心を注ぐ作業は、小説を書くのとはまた違う筋肉を使うようで、実に新鮮な刺激がある。
近頃は、季節が春から夏へと衣替えを急いでいるようだ。
私の執筆の場である四畳間にも、時折、初夏の風が迷い込んでくる。
四畳間に 友を呼び込む 初夏の風
独りで机に向かっていると、ふとした風の揺らぎが、まるで懐かしい友が訪ねてきたかのような錯覚を抱かせることがある。姿は見えずとも、そこには確かな「気配」が宿っている。
とも人の 気配をのせて 夏の風
四畳間に 留まる風は とも人か
こうして句を並べてみると、私の意識が風を追い、ついにはその風を部屋の中に留めておきたいと願っているのがよく分かる。
だが、現実は感傷ばかりではない。五月とはいえ、朝晩はまだ冷える。
風の気配に酔いしれた後は、慣れ親しんだ寝具の温もりが恋しくなる。
西川や 温もり重なる 五月かな
具体的な名前を出すのは少し気恥ずかしいが、この「西川」の布団の適度な重みと温かさこそが、私の日常を支える確かな実感なのだ。
虚構の世界(小説)を漂う心を引き留めてくれるのは、案外、こうした何気ない生活の肌触りなのかもしれない。
初夏の風に誘われ、今夜もまた、物語の続きを綴ることにしよう。
あとがき
最後までお読みいただき、ありがとうござんす。
俳句初心者の拙い句ではございますが、小説の合間にふと浮かんだ情景を留めておきたく、日記代わりに綴ってみました。
皆様の五月も、心地よい風と温かな眠りに恵まれますよう。




