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越後の散歩道から、あなたへ送る四季の言葉。  作者: あっちゅ寝太郎


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越後の雷鳴、コップ酒

歳を重ねるごとに時が経つのが早くなるとは聞いていましたが、近頃の時の走り方といったら、まるで韋駄天のようでございます。気がつけばもう五月も下旬。せかせかと走る時に追いすがっているうち、こちらの頭もうっかりつられて走り出してしまうようで。

「あれ、何をしようとしていたんだっけ?」

そんな『ちょこっと忘れ』が、日常の隙間にひらりと顔を出します。けれど、そんな慌ただしい日々にこそ、ふと立ち止まる旅情が欲しくなるものでございます。

「越後路や 明日晴れぬや 行く道は」

空を見上げ、明日の天気を想いながら歩む道。しかし、お天気ばかりは思い通りにはまいりません。

今日の新潟は、五月だというのに肌寒い一日でございました。空を見上げれば、どんよりとした墨色の塊がまたたく間に広がっていく。あの、肌にまとわりつくような冷え冷えとした空気の中で、天がにわかに騒ぎ出しました。

「梅雨寒の 雲のしかかる 稲光」

予感の通り、ピシャリと闇を切り裂く光が走り、すぐあとに凄まじい雷鳴がとどろきました。

ちょうど、かつての花街の面影を残す東堀あたりを歩いていたときのこと。さっきまで華やかだった宴が終わり、ひとり外へ出た途端に押し寄せる静けさと、夜空を震わせる劇的な嵐の音。

「東堀 雷鳴渡る 宴あと」

冷たい雨が降り出す直前の、張り詰めた空気に身をすくめながら、慌てて我が家へと足を速めます。

外は激しい雨と雷。けれど、ひとたび部屋にこもってしまえば、そこはもう安穏たる我が城でございます。せかせかと走る時からも、外の嵐からも解放される時間。

部屋の暗がりに目をやれば、そこに飾った一輪の花が、まるで小さな行灯あんどんのように優しく空間を照らしてくれていることに気づきます。

「暗がりに 花一輪の 灯りかな」

そのささやかな温もりに安堵しながら、冷えたコップにトトトと酒を注ぐ。

今日のバタバタも、うっかり忘れてしまったあれこれも、きゅっとあおるコップ酒の泡と一緒に消えていくようでございます。

「時走り ちょこっと忘れ コップ酒」

走る時をやり過ごし、忘れたことを笑い飛ばし、雷鳴を肴に杯を傾ける。

今宵もコップの向こうに、小さな幸せの灯りが揺れております。

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