茜色の山に導かれて ―鳥と友との紀行録―
旅の始まりは、いつも少しの心細さと、それを上回る静かな高揚感に包まれています。 深い霧が立ち込め、先の方まで白くぼやけた道。視界が遮られたその場所で、私は不思議な連れ添いを得ました。足元をトコトコと歩く数羽の鳩。彼らは驚く様子もなく、まるで私の行く末を案じているかのように、一定の距離を保って歩き続けます。…霞む道 鳩の護衛に 山景色… 霧の合間から時折顔を出す山の稜線を仰ぎながら、私は彼らと共に歩みを進めました。 ふもとの里に差し掛かると、今度は軒先からか細い声が聞こえてきます。見れば、生まれたばかりのような子雀が、必死に喉を震わせていました。一度や二度の鳴き声では通り過ぎてしまったかもしれませんが、その懸命な繰り返しに、ふと足を止めずにはいられませんでした。…子雀も 幾たび鳴けば 聴く情け… 小さな命が放つ切実な響きに、私の中の強張っていた心がゆっくりと解け、温かな情が流れ込んでくるのを感じます。 そうして心を整えていくうちに、ある「憧れの地」への想いが募ってきました。それは、かつて誰かから聞いたような、あるいは古い物語の中で出会ったような、生命力に満ちた場所…あれゆかし かのところに うどのやま… 「あの場所へ行ってみたい」という純粋な願い。独活が芽吹き、春の香りが立ち込めるその山を目指し、私は足取りを早めます。 やがて、旅は目的地である越後の名峰へと辿り着きました。そこには、一人で歩いてきた私を待ってくれていた「友」の姿がありました。 道中の出来事を語り合い、笑い合いながら、私たちは山頂を目指します。ふと視線を上げれば、空は燃えるような色彩に包まれていました。…友とゆく 夕暮れ染まる 角田山…山肌も、眼下に広がる海も、そして隣を歩く友の横顔も。すべてを優しく包み込む夕暮れの光の中で、私はこの旅の本当の意味を知った気がしました。鳥たちの導き、友の温もり、そして美しき角田山。それらすべてが重なり合い、私の一日は静かに、そして豊かに幕を閉じたのです。




