聖女がカチコミ!
「すみません。責任者の方を呼んでもらえますか?」
聖女認定されてから数日後、着の身着のまま教会からも組織からも逃げ出した私は魔王城らしき城の門番に向かって尋ねた。
聖女に選ばれたらしい私もさすがに魔王のいる場所とかわからなかったので、途中見つけた魔人の村を襲っ・・・訪問して、その中でも親切な魔人の方が案内してくれると言うので、その方に案内して貰った。
その親切な魔人はガタガタと震えながら、もう充分だろうと言わんばかりに逃げ出しているのは、魔王城の門番が厳つい顔付きだったからだと思う。決して私のせいではない。
「人間風情が何の用だ!」
「おい、ちょっ・・・アレ、聖女だろ」
「・・・ッ!?」
もう魔王城の門番にまで私が聖女だと知れ渡ってしまったのかとゾッとしたが、思い過ごしだった。
一目見てわかった神官同様に魔人の門番にも一目でわかるものらしい。神気がどうのとコソコソと話している。
やがて話し終わったのか、腰に携えていた武器を引き抜き、私に向けた。
どうやら聖女が魔王を討伐しに来たと思っているようだった。魔王様は討たせないとか、魔王城の門兵舐めるなとか何とか威勢のいい事を叫んでいる。
違うのにと思いながらも、どうしようかと悩む。ここは穏便にいきたい。
そうこうしている内に門番二人が斬りかかって来たので、しょうがないと思いながらも先程の魔人の村同様に門番をボッコボコに叩きのめした。
子供の時分から培われた戦闘技術は経験の無さを差し引いても、組織内でも断トツのトップだった。歴代でもトップらしい。さすが聖女というべきか。
ろくでもない組織ではあったが、こういう生きるために必要な技術や知識を享受してくれた事に少しは感謝している。
ドンパチやってたから当然だったのだが、中からワラワラと魔人の兵士達が出て来た。私の足元で完全に伸びている門番を見て状況を把握したのか、こちらに敵意剥き出しの状態だ。
これまたしょうがないので中間管理職とか責任者とかがいそうな場所を目指しつつ、向かって来る魔人をフルボッコにする事を決めた。
魔人というだけあって、人間だったら死んでいる攻撃でも重傷ちょっと手前の怪我程度で済んでいた。
私の背後には死屍累々とした伸びた魔人達、前方には仲間達の為に一矢報いようと気迫みなぎる魔人達。
あーあ、めんどくさいな~。
人の話聞いてくれないかな~。
ちょっとうんざりしながらも、立ち向かって来る魔人は狩っていく。
途中、背後から抱き着かれて「俺に構わず殺るんだ!」とか叫ばれたので、思いっきり肘鉄をくらわし、羽交い締めにしていた腕が緩むとそこから抜け出しつつ背後の魔人を、苦悶の表情を浮かべながらも仲間ごと葬り去ろうとしている別の魔人の方へぶん投げた。
ドスンと鈍い音がして二人とも伸びてしまう。
それまでにあらかた片付けていたのか、それとも恐れを成したのかはわからないが、その後はポツポツ出てくる程度で、ようやく目的の場所っぽい所に来た。
そこは大きな広間で、奥の玉座に魔王っぽい青年が座っていた。
多分、場所が場所なだけに正真正銘の魔王なんだろうけど・・・厨房の片隅で芋の皮でも剥いていそうな平凡な顔付きでヒョロッとした草食系の魔人だったのだ。
たくさんの魔人に囲まれて戦うより不安を感じつつ、多分魔王に話しかける。
「このお城の責任者の方ですか?」
「ええ、責任者と言うか何と言うか・・・」
玉座に座ったまま、歯切れの悪い感じで返事をする魔王(仮)。
玉座に座りなれていないのか、もぞもぞと落ち着きなさそうだ。
本当に魔王だよね?
影武者とか、魔王のいぬ間に玉座に座ってみたら勘違いされてた系モブとかじゃないよね?
ちゃんと魔王だよね?!
「・・・では、貴方は魔王様で?」
「ああ、うん・・・まあ、はい」
めっちゃ煮え切らない返事だけど、魔王で合っているらしい。
じゃあ、もういいや。
間違ってたらこの一応魔王に責任取ってもらおう。
「では、魔王様。私をここでメイドとして雇ってくださいませ」
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明日も更新です。
主人公はチートのようでチートじゃない設定。
魔法攻撃は出来ない訳じゃないけど苦手な感じ。
ただただ組織に闘い方を仕込まれてうまく立ち回れるだけ。




