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王子様ちょっと弱気


切替のはやいハルト様とテーブルの上を片付けて、やっぱり手を繋いで広場を出て歩く。


「旅行には何が必要なんですか?」


「そうだな…どこに行くかでも変わるが、服以外だと靴や帽子か。都会が良いとか自然が良い等希望はないか?」


どっちでもいいけど。


「うーん…観光地的なところ?色々見てまわれて、温泉とかあるような」


「ふむ、観光地ならそんなに必要なものも多くないし手軽で良いな」


「浴衣とかありそう」

#==


乙女ゲームだし。乙女ゲームは魔法の言葉。

==#


「サクラに良く似合うだろうな」


ほら、やっぱりあった。大体わかってきた。

多分馬車が全然似合わないめっちゃ和風な旅館がある、畳で布団ひいて寝るタイプのとこ。


「世界観すごい面白いコトになってる」


「そうか?サクラの世界とは違う所が多いか」


「違う所と同じ所がごちゃまぜで面白いです」 


わりとどうでもいい会話をしながら街中を散策して、服とか靴とか買ってもらった。

ハルト様は全部買おうとするし、称賛と愛の言葉しか吐かなかったので詳細は省く。




***




買い物が大体終わって、昼食を食べてから本屋に。


「おぉ~、迫力」


本屋さんは想像と違って、図書館みたいなとこだった。


「サクラはどんな本が好き?」


「なんでも読むけど、やっぱりファンタジーとか冒険物が好きですねぇ。ハルト様は本読むんですか?」


「あまり…有名どころだけ読む感じかな」


有名どころな本を教えてもらって、興味が出たのを何冊かチョイスする。


「これだけあれば一ヶ月は楽しめます!」


「じゃあ小説はこのくらいにしておくか。観光雑誌と一緒に会計して、上のカフェで見ながら旅行先を決めよう」


「へぇ、カフェ」


「長くなるから小説は帰ってからで我慢してくれ」


異世界の観光地見るのも面白そうだしそれでオッケー。


上にあったカフェは小さいけど個室で、中に入るとソファと机しかなかった。防音とかしっかりしてるネットカフェみたいな感じかな?注文を紙に書いて呼び出せば入口でやりとり出来るらしい。


「本を読むための部屋だから、あまり邪魔しないよう用がないと店員は来ないな。サクラはジュースだけで良い?」


「オレンジ飲みたいです。本を読むためなんだ…一人用の部屋もあるのかな、通いそうです」


「はは、ここに来なくても一人でゆっくり読めるだろう。読む時俺が居るのは駄目か?」


ハルト様は店員さんにメモを渡したあと私と同じソファに座る。小さいソファだから近いな。


「集中して読んじゃうんで、時々反応なくなるんですよ。結構な頻度で無視かますし、入り込んでる時に話しかけられるのはあんまり」


「ふぅん……本を読む時まで邪魔する気はない、それなら一緒に居ていいか?」


「ハルト様が嫌な気分にならないならまぁ」


「隣に居るだけで良いと言っているだろう」


また髪にキスされた。そういや外出歩いてるときは手を繋ぐ以外こういうのなかったな。一応TPO考えてるのかな。



「好きだよ、大好き。ずっと好きだったけど、今のサクラが一番好き。正直どうすればサクラに恋してもらえるのかわからない」


私にもわからない。


「全部ひとりよがりなんだ。サクラを勝手に呼び寄せたのも、理由を付けて俺の邸に連れてきたのも、今日だって俺がサクラと一緒に遊びたかっただけで」


そうかなぁ、王子様だしお出かけももっとセレブ~!な感じだと思ってたのにどうも私に合わせて庶民仕様だし、お出かけしてから口説き文句も控えめだし。


「私のこと考えて色々してくれてるんだろうなってのはわかりますよ?」


ハルト様の腕が私の背中の方にまわって、ゆっくりと抱きしめられる。

肩にハルト様の顔があるからすっごい近い。本当綺麗な顔してるなぁ…


「ちゃんとサクラのことを考えられてる?思いやれている?俺にはサクラが好きだと、愛してると、それしかない。サクラの気持ちに寄り添いたいのに、自分の感情を優先してしまう。本当はこうして抱きしめたりキスをするのも嫌だろう?無理矢理言いくるめた自覚はある……やめられないけど」


最後ものすごく小声だったけどこんだけ至近距離だと聞こえてますよ。


愛を手に入れると誓う~とか必ず~とか言ってたのにな、弱気なハルト様は口調も変わってるしホント子犬みたい。


「そういえば最初から嫌じゃなかったんですよね。なんてことを!とか常識的に!なんて思いはしたけど。私お軽い女だったのかな」


「……サクラ」


「うぅーん、ドキドキしたりはないし…あぁ何言っていいかよくわかんないけど、好きとか相変わらずわかんないけど、ハルト様のこと嫌いじゃないです。私から見たら会ってまだ3日目なわけで、たった3日でここまで馴染んでる自分にビックリです」


「サクラ」


「好きになるって決めてなるものでもないと思うのでこの先どうなるかわかんないけど、そうやって弱気なハルト様は可愛いなって思います」


「……サクラ…可愛い路線で攻めろと」


ハルト様が顔を上げて目が合う。


「いえ、そういうわけでは…私が言うのもどうかと思うけど、ごちゃごちゃ考えなくてもって……ちょっと近いです、近すぎるんで顔を離してください」


「いや、今が攻め時な気が」

「しません!だから3日なんだって、もう少しゆっくりお願いします、離れて!」


両手でぐいーっとハルト様を押すけど、なかなか離れてくれない。


「……確かに生涯待つ決意はしているがじっと待つだけのつもりはない」


「朝、朝今日からはじめるって言ったじゃないですか!」


「むぅ……じゃあ今はコレでいい」


鼻の先にちゅってされたあと、ものすごい蕩ける笑顔を向けられた。口にされるより照れるなこれ。



「……雑誌見ましょうか」




そのあとは普通に旅行雑誌を見て、何箇所か候補を見繕ってから帰宅した。


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