恋のおはなし
日々は、わりと穏やかに過ぎていく。
本を読んだり、たまにマークスさんがやってきてお話をしたり、ハルト様とマークスさんの掛け合いに笑ったり。
ハルト様の好き好き攻撃はあの日から子犬路線に度々変更されて可愛いなぁと思うことは増えたけど、それだけ。
「好きがわからない?」
ハルト様がいない時護衛も兼ねて一緒に居てくれるマークスさんとお茶をしてる時に、好きってなんなんだって聞いてみた。
「ドキドキとかキュンキュンするものなんですよね?そういう気持ちになったことがなくて」
「ハルトには?」
「可愛いなぁとかは思うけど、ドキドキとかはあんまり」
「あはは、ハルトご愁傷様。まぁそのままでいいよ、ゆっくりはじまる恋もあるよ?」
マークスさんはニコニコ笑いながら答えてくれる。
「わからないから気付かないだけで実はもう好きだったりするのかなって。どういうものか分かれば判断つくかなって」
「え~、判断つけてどうするの?与えられるだけってのが気に食わないからはやく決着つけたいのかもしれないけど、ハルトは一生掛けるつもりなんだから付き纏いの慰謝料とでも思ってサクラちゃんは今のまま過ごしてていいんだよ~。期待を持たせるのはハルトには悪いことじゃないよ、好きだと思わない限り行動に起こす必要はないんじゃない」
「なんか悪いなぁって思ったままで?」
それってどうなのかなって気がするんだけど。
「脈があろうがなかろうがハルトはもうサクラちゃんしか愛せないから、スパッと断る必要なんかないよ。次にいけるんならサクラちゃんが一回消えた時にそうなってるよ、ハルトはもう無理」
「無理……」
「無理無理とっくに手遅れ。そりゃ好きだと自覚して曖昧な態度なら良くないけど、サクラちゃんは良くわかんないんでしょ?ハッキリ好きにならないって言ってもハルトは変わんないよ、好き好き言い続けて死んで来世追いかけるだけ。嫌いって言ったり、他に好きな人が出来ても同じじゃない?今世は遠くで見守るだけにするかもしれないけど結局来世現れるよ」
来世も追いかけられるのか。
「サクラちゃんが誰かを好きだって自覚するまでなーんにも気にしないで過ごせばいいんだよ。気持ちにつけ込んで面倒みてもらってるなんて思っちゃ駄目だよ、つけ込んでるのはハルトの方なんだから」
「私つけ込まれてます?」
「こまれてるねぇ~、悪いなって思うだけで嫌な気持ちにならないならそのままでいて欲しいなぁ」
嫌な気持ちには多分なったことない気がする。
「それならそのまま過ごしてあげてくれる?そもそも今世はハルトにとってボーナスステージみたいなものだからあの人既に好き勝手生きてるでしょ、ホントに臣籍降下と旅行の準備以外なにもしてないんだよ~」
「え、大丈夫なんですか?お仕事は大体終わらせてるって聞きましたけど」
「終わらせてはいたけどさ、俺もう居なくなるから~って言ってたヤツが普通に居るから、お前居るなら働いてくれよって状況かな。まぁハルトがしなきゃいけない仕事じゃないし、ハルトはニコニコ無視してサクラちゃんだけ見てるね。そこまで盲目的なのはもう尊敬するよ、真似出来ないし」
「マークスさんはそこまで人を好きになったりはないんですか?」
「ないねぇー、普通に好きになったことはあるけど流石にこの子のために死ぬ!ってのはねぇ」
ですよね、多分普通じゃないですよね。
「まぁそういうわけで、サクラちゃんは罪悪感なんか持たないでノビノビ生活してね?のんびり暮らす二人を守るのがオレの仕事だしねぇ」
「いつもお世話になっております」
「あはは、なんにも危ないことないから楽させてもらって悪いね~。来月から旅行だし、出番はないに越したことはないけどちゃんと鍛錬しとくよー」
う~ん、とりあえずこのまま穏やかに暮らしてればいいのかな。ごちゃごちゃ考えるのはなるべくやめとこう。
そう思って考えないで過ごしてたらハルト様の好き好き攻撃にえぇ~って思うことはなくなった。恋が芽生えるかはわかんないけど気持ちも軽くなって毎日穏やかに本を読んで過ごしてる。




