第48話 かぶれるだろ!!!
夜、三人でとある山の山道を歩く。
夜といっても今は夏。本当に真っ暗ではなく、七時を越えた今でも空は少しの光を放っている。
しかし、その僅かな光もこの山に立つ背の高い木々の枝葉によって気持ちの悪い薄暗さを醸し
ている。
つまり、祝詞が怖がる。
普通に登っていれば20分と経たずに登れるであろう比較的低いこの山を10分掛けてまだ三
分の一も登っていない。
なにも祝詞だけのせいではない。この暗さは俺と太郎にとっては足元蹴躓かないか
と恐れを抱かせる。
「・・太郎。このペースじゃいつ終わるか分からんぞ」
「そうだな。この長い時間も祝詞ちゃんにとって地獄だろうし」
「・・・別にそんな地獄でも無いわよ。で、でも確かにもう少しペースをあげましょう」
非常に上ずった声で、しかし怖いと言う感情を必死に押し殺そうとしながらのその言葉はとて
もおかしく可愛らしかったため、少し頬が緩んでしまう。
三人並んであるいており、俺は真ん中。左に祝詞と言う配置で、それなりに近いのだが、その
緩んだ顔はこの暗さから見られなかったようで、咎められる事は無かった。
ザッザッザッザッ・・・と三人の歩く音だけが聞こえる。
時折吹く風が回りに生える草木の葉を揺らす。
そのたびに祝詞はぎゅっと拳を硬く握る。
今の所は特に霊のようなものの存在は感じられない。
『・・ガサガサッ』
「ひゃあ!!」
「うおッ」
隣の木の茂みだけが不自然に動き、それに驚いた祝詞が此方に飛びついてくる。それを何とか
支え、未だに怖がっている祝詞をあやす。太郎はそれを温かい目で微笑みながら見てくる。
露骨に見られているからだろうか結構恥ずかしい・・・。
「・・なあ太郎。この・・木についてる赤いのって?・・・血?」
少し歩くと不自然に赤い木があった。
三人で見つめる。
どう見ても液体である。
一瞬グループに緊張が走る。
そんな中太郎が口を開いた。
「・・・分かった。・・これは・・・・・」
「これは?」
俺と祝詞は同じタイミングでつばを飲み込む。ある程度の予想が付いているのか怖がって俺の
服のすそをつまむ。
ついに太郎が答えを言う。
「・・トマトだ」
『は?』
「だからトマトだ。木の後ろに潰れたトマトがある」
一瞬にして緊張が解けた。しかし、俺と祝詞にはふつふつと湧き上がる何かがあった。
怒りだ。
『そんなしょうもないネタ勿体着けて言ってんじゃねえ!!』
「うわっ!あぶねえ!トマト投げんな!!かぶれるだろ!!!」
何故かぶれるのかは知らないがそんな事お構い無しに傍にあった物を色々と投げつける。
そんなこんなで開始から三十分。
未だ山の半分程度しか登れていない俺達であった。
―――――理の書
・・・太郎 かぶれる
太郎はトマトが苦手。見るのは大丈夫だが食べると口の中が荒れ、触るとかぶれる。
因みに輝明もトマトは嫌いだが、太郎の様にはならない。




