第46話 さて行きますか
8月14日夜
「では、新学期からよろしくお願いします」
「いえいえ、此方こそ」
皆さん忘れていないだろうか。今日は肝試しと、もう一つ西城山さんの帰る日であるという事を。
西城山さんはうちに来る事と、出張も兼ねている為、うちに来て話してさあ帰りましょうと言うわけには行かなかったのだ。
「今日はどのようにしてお帰りに?」
「歩いて駅まで、その後に地下鉄に乗って新幹線に乗り換えまして、京都に」
「夜道は危険ですのでお気をつけて」
「はい。ありがとうございました。お世話になりました」
「では。また新学期に」
「さようなら」
と、まあ形式的な挨拶を終えて、西城山さんは暗い道を歩いて行き、やがて見えなくなった。
それを視認し、俺も家の中に入る。
「祝詞~行くぞ~」
祝詞の体がビクンと震える。
昨日のうちは恐いとは言ってもまだ耐えられるレベルであったのか、昨日と変わって今日は、ちょっとした物音や呼びかける声にいちいち反応して肩が震える。
それはそれで見ていると面白い物ではあるのだが・・・こう何回も見せられると怯えさせる事への罪悪感や、その元凶たる拓也に対して怒りが込み上がってくる。
夏休み前にそれを拓也に教えてしまった事も原因の一つではあるのだが・・・・。
「祝詞~。早く来ないと暗い夜道一人で歩く事になるぞ~」
「別に夜道ぐらい一人で歩けるわよ!街頭だってあるんだし・・・」
確かに道路に街頭はある。それに、まだ、暗い夜道と言うわけではない。
ので
「じゃあ、先行ってもいいのか?」
「良い訳無いでしょ!!」
色々考慮して発した言葉だったが祝詞はそれに対して大きな声を発しながら玄関まで走りよってくる。
「え?今、暗い夜道でも普通に歩けるって・・・」
「それとこれとは話が別に決まってんでしょ!!」
・・・・ま、知ってましたけどね。
この一つに関して強がりが持続しない事は何年も前から一緒だ。
「じゃ、覚悟を決めて早く来い。このために俺対価を払ったんだから」
それを言うと一応前払いと言う事になっている宿題の開示を思い出したのか、仕方が無いと割り切ったのか、とぼとぼと歩いてきた。
西城山さんを送ってから約10分。拓也達との約束の時間まで約20分。
集合は現地集合で、場所はここから歩いて25分の山。
そう、歩いたら間に合わない。
「よし、自転車で行くか」
ぽんと手を叩き提案する。
「家に自転車あったっけ?」
「姉さんとじっちゃんが仕事場(神社)行くとき確か自転車だったと思う。物置の方にあったと思うぞ」
じっちゃんは神主だが、家は神社の立地条件や先代の財産などの理由で少しはなれた所に建っている。
自転車を2台、家の裏の方から引っ張ってきて、1台を祝詞に渡す。
「さて行きますか」
祝詞は呼びかけに無言で答え、俺達は自転車のペダルに脚を掛けた。
すいませんでしたぁぁぁぁ!!
毎週木曜更新のはずが、水曜日にパソコンを開き忘れました!!
来週からはまた木曜更新しますので、どうかご勘弁をおおぉ!!




