第27話 この世に大きな未練を残したから
約300年前、時は江戸時代の中ごろ。
俺は生まれた。
普通の狐の子として山で生まれ、普通の狐として育っていった。
狐の群れの中で仲間の狐とじゃれあい、協力してえさを取り、皆で分けて食う。
あの時間は輝いてた。
そんな他愛も無い日常が楽しかった。
しかし、その日常は、たった七日で崩れ去った。
生まれてから10年経ったある日。
いきなり人間が戦を行いだしたのだ。
国境にあったこの山は、敵国に攻め入るのに絶好の場所だったのだろう。
北と南の国が行う戦。
北側の奴らがこの山を占領したのだ。
この山には多くの動物がすんでいた、そして、ことごとくそいつらは食料にされた。
戦が始まり六日目。
生き延びるために俺たちは住処を捨て逃げた。
他の山に行こうと・・・
しかし、この山は、この山を占領した奴らとは違う甲冑を着たやつらに包囲されていた。
そして、皆手に火縄銃や火矢、松明を持っていた。
そう、戦が長引き、痺れを切らした奴らはこの山ごと北の奴らを殺すつもりらしい。
これでは逃げ場は無い。
ここで、俺たちの命運は尽きた。
それを自覚した瞬間人間どもは松明を投げ、火矢を放ち、山の木々を燃やし始めた。
その火は、轟々と燃え盛り、緑ばかりの山を赤に染めた。
それは、炎の赤、人間の血の赤、動物の血の赤。
それは、俺たちの血も例外ではない。
死ぬ前に俺は仲間の死に顔を見た。
その死に顔は・・・・焼け爛れて、どれが誰だかわからなくなっていた。
このとき俺の中から何かふつふつとわいてくるものがあった。
それを、抱えたまま俺達は死んだ。
俺の魂は体を離れたが天に昇ることも無かった。
そう、この世に大きな未練を残したから。
俺の平和を奪い、平気な顔をして仲間を殺した。
俺たちを身勝手な人間の戦に巻き込み、理不尽すぎる死を与えた人間達に復習をする。
この願いをまだ叶えていない。
この大きな未練の元、俺たちの魂は一つの場所に集結し、今の俺。
つまり、管狐が誕生した。
だから、最初の俺の中では多くの人格・・・仲間の感情、思考、欲望、自制心、勇気、性格な
ど、多くのものが混ざりあった状態だった。今でも、仲間の全てが俺の中にいるが、今の俺は
中間達の人格が全て絡み合い、打ち消し合い、混ざり合った新たな一つの人格だ。
新たな肉体を授かってから俺は、そういう中で自分で状況に適応し、生きてきた。
全ては俺たちを殺した人間に復讐するためだけに。
―――――世界の書
・・・魔術師
悪魔・魔物を退治する仕事をする人。
中にいくつか職業があり、魔術師、エクソシスト、錬金術師、魔術研究師、などがある。魔法使いとは全くの別物。
―――――理の書
・・・魔術師
偉大な錬金術師や科学者、発明家、民俗学者、技術者など高い技能と智慧と実績を持つ者。
もしくは、魔法や魔術、呪術を使い、常人には成しえないことを実現する者の総称。




