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第四章 星の色

夕焼けは静かに消えていった。


茜色だった空は紫になり。


紫だった空は藍色になり。


やがて夜が訪れる。


少女は丘の上に座ったまま、

空を見上げていた。


少し前まであんなに鮮やかだった景色が、

少しずつ輪郭を失っていく。


草原も。


風も。


遠くの山も。


夜の中へ溶けていく。


少女は胸に手を当てた。


そこにはまだ夕焼けが残っていた。


温かな光のように。


思い出のように。


けれど。


やはり少しだけ寂しかった。


「…終わってしまったんだね」


風がその声をさらっていく。


その時だった。


空の端に小さな光が現れた。


星だった。


たった一つの小さな星。


少女は見つめる。


するとまた一つ。


そしてまた一つ。


夜が深くなるたび、

星は増えていった。


まるで誰かが空に光を灯しているようだった。


少女は知らなかった。


夜空にこんなにたくさんの星があることを。


知らなかった。


暗闇の中にも光があることを。


しばらく見上げていると、

草むらから小さな音が聞こえた。


かさり。


少女は振り返る。


そこには白いうさぎがいた。


雪のように白い毛並み。


まんまるな瞳。


月明かりを浴びて、

ほんのり銀色に輝いている。


うさぎは少女を見る。


少女もうさぎを見る。


それだけだった。


けれど不思議だった。


なぜだろう。


その姿を見ていると安心する。


うさぎは逃げなかった。


少女のそばへ来るでもなく。


遠ざかるでもなく。


ただそこにいた。


少女は小さく笑った。


「こんばんは」


うさぎの耳がぴくりと動く。


それだけで少し嬉しかった。


夜は静かだった。


静かなのに。


寂しくはなかった。


少女は空を見上げる。


満天の星が広がっている。


数えきれない光。


遠くて。


小さくて。


けれど確かに輝いている。


少女はふと思った。


今までの悲しみにも、

意味があったのだろうか。


考えても…

答えはわからなかった。


それでも。


少女は続けて考える。


もし意味があったのだとしたら…

それは何だろう。


風が吹く。


白いうさぎの毛が揺れる。


うさぎは静かに空を見上げていた。


まるで少女と同じように。


少女は小さく息を吐く。


そして思う。


もしかしたら…

意味というものは、

後から見つけるものなのかもしれない。


歩きながら。


出会いながら。


生きながら。


少しずつ。


見つけていくものなのかもしれない。


その考えはまだ。


夜空の星のように、

消えてしまいそうなくらい小さかった。


けれど。


確かにそこにあった。


少女は草の上に寝転ぶ。


白いうさぎも少し離れた場所で丸くなる。


夜風が心地良い。


星は静かに瞬いている。


その光は、

夕焼けとは違った。


強くはない。


温かくもない。


けれど。


消えそうなほど小さな光がこんなにも沢山集まると、

夜は暗いだけの場所ではなくなった。


少女は目を閉じた。


瞼の裏にも星が残っていた。


夕焼けが残ったように。


今度は星が残っている。


光は消えるのではない。


形を変えて残ることもある。


そんな気がした。


胸元で小さな音が鳴る。


からり。


少女は目を開ける。


砂時計の砂が銀色に輝いていた。


月明かりを閉じ込めたような色。


静かで。


やさしくて。


どこか懐かしい色。


一粒。


また一粒。


砂は落ちていく。


少女はその意味を知らない。


けれど、

知りたいとも思わなかった。


ただ。


この夜を見ていたかった。


星を見ていたかった。


白いうさぎと一緒に。


もう少しだけ。


もう少しだけ。


この世界を感じていたかった。

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