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夫よ!殺しに行くから待ってろよ!~VRゲーム内にて夫をキルしに行く話~  作者:


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第5話 目を開ければ、そこは個室でした

「あっちの世界で、また会おうね!」

「おう、あっちの世界でまた会うぞ!」


どちらからともなく、示し合わせたように装置を深く被る。

 視界がふっと暗転し、システムが起動する低い音が耳の奥で鳴り始めた。


心臓の鼓動がこれまでにないほど速く、強く胸を叩いているのがわかる。自分たちは現実の重力から解き放たれ、光の渦の先にある、輝かしいゲームの世界へと旅立った。


……はずだった。


どういう原理なのかは分からないけれど、政府や有名企業、脳科学者たちが総力を挙げて完成させたこの装置は、脳の信号を直接読み取ることができるらしい。


 現実世界の自分は「人をダメにするソファ」に身を預け、装置を被って寝転んでいるだけだ。コントローラーすら持っていないのに、思考するだけでメニューを操作できている。


便利な世の中になったものだと感心して脱線している場合じゃない。

 早くキャラメイクを終わらせて、一刻も早く彼と合流しなきゃ。一番時間がかかる作業だし、ゆうちゃんを待たせすぎるわけにもいかないのだ。


目の前で点滅する「START」の文字を、意識で選択する。

 すると、最初に行く手を阻むように名前の入力画面が表示された。


よし、まずは無難に。


YUKI


と入力してみる。しかし。


「この名前は既に使われています。他の名前を選択してください」


ありゃ、駄目か。やっぱり人気だよね。じゃあ、大文字と小文字を混ぜてみたらどうだ。


「この名前は既に使われています。他の名前を選択してください」


全滅。まさかの全否定である。みんな考えることは同じらしい。

 じゃあ、ひらがなならどうだ? カタカナならいけるか?


「この名前は既に……」

「この名前は……」


あぁ、もう! これも駄目。まさか、ゲームを始める前にこんなに高い壁にぶち当たるとは思わなかった。


 じゃあ、思い切ってゲーム実況で使っている名前にしよう。


YUYU


渾身の入力。だが、無情なシステムメッセージは変わらない。


「まじか……」


こうなったら、最近書いている小説の主人公の名前にあやかってみるか。


ユウリ


半ば投げやりに意識を飛ばす。すると。


「登録完了しました」


「あっ……」


まさか、こんなにあっさり通るとは思わなかった。

 安堵したのも束の間、次に目の前に浮かび上がったキャラクター情報を見て、自分は固まった。


【キャラクター情報】


名前: ユウリ


性別: 女


種族: 人族(現在1種類のみ)


姿: ランダム生成のため選択不可


利き手: 右利き


「……ん?」


普通なら、名前の次は性別を選び、髪型や顔のパーツを細かく弄るものだと思っていた。

 どうやら性別は現実の体に自動設定されるらしい。種族が人族固定なのは、配信直後だから今後のアップデート待ちだろう。それはいい。


問題は。

「姿:ランダム生成」


これ、キャラメイクの一番大事な部分だよね?

 ランダムってことは、美女になるか、幼女になるか。それとも。


「全部、運次第ってこと!?」


もし、とんでもないブサキャラになったらどうするんだ。へのへのもへじみたいな顔だったら? 


 とびっきりのキャラでゆうちゃんを驚かせるはずが、一気にテンションが急降下していく。


へぇ、利き手まで勝手に判別してくれるんですね。

 まさか名前しか選べないなんて思ってもみなかったけれど、もう決定してしまったものは仕方ない。


自分は、半分祈るような気持ちで「確認完了」を選択した。

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