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夫よ!殺しに行くから待ってろよ!~VRゲーム内にて夫をキルしに行く話~  作者:


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第28話 兄貴の頼み(8)鈴の鳴る店

 兄貴に押し付けられる形で急遽この店の留守番を始めてから、だいたい一時間ほどが経過しただろうか。


 その間にこのマリアージュの店を訪れたプレイヤーは、わずかに二人だけ。現在の店内には、カウンターの奥で暇を持て余している俺しかいない。


 サービス開始直後の貴重な時間に、わざわざ戦闘を無視して装飾屋に最初にやってきたのは、いかにも初期装備といった風情の真新しい鎧に身を包んだ、ごつい見た目の大男だった。いかにも巨大な斧でも振り回しそうな体格をしている。


 男は店内をウロウロと一通り歩き回って棚の商品を眺めていたが、特に何も購入することなく、そのままふらりと店を出ていった。


 兄貴の話では、ハチオウの街にはこの店以外にもいくつか装飾品を扱う店があるらしい。どこの店が一番安くて性能の良い初期装備を置いているのか、効率重視で価格調査でもしていたのかもな。


 そして、その男が去ってから十五分ほど経った頃、今度は魔法使いのような格好をした女性プレイヤーが一人でやってきた。


 だが、その衣装が色んな意味で凄かった。胸元をこれでもかと大きく開けていて、ボトムスに至っては、それもう穿いてる意味がほとんど無いんじゃねえかと全力で突っ込みたくなるような、極端に丈の短いミニスカートを穿いていたのだ。


 しかもその女、かなり面倒なタイプだった。

 俺が奥の休憩室から出てきてレジの前に立ったのに気づいた瞬間、何を思ったのか急に身体をクネクネとくねらせ始めたのだ。


 あからさまに上目遣いになりながら「店員さ~ん♡」と、鼓膜が痒くなりそうな猫なで声で話しかけてくる。


 おいマジかよ、と内心で激しく引きつつも、一応は臨時の店員だ。露骨に嫌そうな顔をするわけにもいかず、引きつりそうな営業スマイルを必死に浮かべながら、相手が勝手に飽きてくれるのを待つしかなかった。頼むから一秒でも早く諦めてくれ。


 しばらくして、こちらに一切色仕掛けの脈がないとようやく判断したのだろう。女はチッと盛大に舌打ちを残すと、あからさまに不機嫌そうな足取りで店から出ていった。


 客が完全にいなくなった静かな店内で、自然と重いため息が口から漏れてしまう。

 こんな精神的エネルギーを使う仕事なら、兄貴に三種類のタルトだけじゃなくて、


 お詫びの追加報酬もいくつか要求しておけばよかったな。そんな後悔を頭の中でこねくり回しながら、俺は再び店の奥にある休憩室へと戻り、茶色のソファに深く身体を沈め込んだ。


 しかし、この休憩室にはテレビも本も、時間を潰せそうな娯楽の類は何一つ置かれていない。一体、普段の店主のNPCはここで何をしながら暇を潰しているんだろうな。


 さっきの二人の客がそれぞれ来店するまでは、ソファに座ってゲームのヘルプテキストを隅から隅まで読んでいたが、さすがにそれも読み尽くして飽きてしまった。



 よし、こうなったら客が途切れている今のうちにしばらく寝ておこう。


 幸いなことに、この部屋は防音仕様というわけではないらしく、表のドアから客が入店してくると、この休憩室にまでチリンと小さな鈴の音が綺麗に響いてくるようになっている。おまけに、兄貴から「一応これに登録しとけ」と言われて渡された、手のひらサイズの便利な魔法水晶もある。


 どういうシステム仕様になっているのかは割愛するが、この水晶は監視カメラのように現在の店内の様子をリアルタイムで手元に映し出してくれる優れものだ。さらに、あらかじめ登録しておいた自動音声がこちらの動きに合わせて店内に発せられる仕組みになっているため、客側からは、店の奥から店員が自然に声掛けをしてくれているように聞こえるらしい。


 この至れり尽くせりな便利機能を、そのまま目覚まし時計代わりに利用することにした俺は、深く目を閉じて、静かに心地よい眠りへとついていった。


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