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夫よ!殺しに行くから待ってろよ!~VRゲーム内にて夫をキルしに行く話~  作者:


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第24話 兄貴の頼み(4)女主人の正体

 足元でピカピカと主張する光の矢印に誘導されるがまましばらく街を歩くと、指定された目的地である装飾屋の前に辿り着いた。


 お洒落な木製の看板には上品なネックレスの絵と、店名らしき文字が刻まれている。


 マリアージュの店


 そう書かれた店の外から、あらかじめ中の様子を窺おうと窓を探してみたのだけれど、あいにく周囲にそれらしき窓は見当たらない。店内の様子は外からは一切分からない仕様のようだ。

 こうなったら、大人しく入るしかなさそうだな。


 意を決して年季の入った木製のドアを押し開けると、それと同時にチリンと小さな可愛らしい鈴の音が鳴った。


「いらっしゃいませ~」


 ドアが閉まる音とほぼ同時に、おっとりとした柔らかい女性の声が、店の奥にあるカウンターの方向から聞こえてくる。


 メッセージの主である兄貴はどこにいるんだ。

 先を促されるまま店内を鋭く見回してみるが、そこには俺の他にお客の姿は一人も見当たらない。貸切状態だ。


 人をわざわざ強制ナビで呼び出しておいて、自分は遅刻かよ。

 さすがに何もせずにこのまま入り口のドアの前に突っ立っているのも変だし不審者っぽいので、とりあえず兄貴が来るまでの時間を適当に潰すことにする。


 もし何かパラメーターが少しでも上がりそうな、手頃な初心者向けの装飾品でもあれば眺めながら待つか。そう当たりをつけて、指輪が綺麗に並ぶ棚のコーナーへとゆっくり歩いていった。


「遅すぎんだろ、修平」


「はぁ?」


 唐突に背後からかけられた声に、俺は思わず素っ頓狂な声を漏らしていた。

 今聞こえたのは、間違いなくさっき俺を迎え入れた、あの柔らかい女性の声だ。


 しかも、今こいつ、なんと言った。

 ゲームのキャラ名ではなく、現実の俺の本名を呼びやがったぞ。


 心臓がドクリと跳ね、反射的に勢いよく振り返る。

 そこには、薄黄緑色の、ゆるいウェーブがかかった肩先までの美しい髪。その髪色よりも少しだけ濃い緑色をした、優しげに垂れた目。年齢はだいたい二十代後半ほどに見える、一人の女性が立っていた。


 文句のつけようがない整った顔立ちで、大人の落ち着いた雰囲気を醸し出している。


「『はぁ?』じゃねぇよ。一応これでもお兄様に向かって、その態度はなんだ」


 その、ぶっきらぼうで乱暴な口調。

 その、完全に俺を舐めくさった言い回し。

 その、昔から見慣れている無駄に偉そうな態度。


 喋り方や声音の癖は、間違いなく実の兄貴のそれだった。

 でも、目の前にいる存在の見た目も、鼓膜に届く綺麗な声も、脳の認識としては完全に綺麗な大人の女性そのものなのだ。目の前の情報が渋滞を起こして、全く頭の処理が追いつかない。


 いや、待て。落ち着いて一度頭の中を整理しろ。


 兄貴はこのゲームの運営側の公式GMだ。GMという特権階級の立場なら、ログイン時に一般プレイヤーのように強制ランダムに縛られることなく、自分の意思で自由自在にアバターを選べる立場にある。


 つまり、そういうことだ。認めざるを得ない。

 目の前で腕を組んで仁王立ちしているこの美しいお姉さんは、間違いなく俺の兄貴だ。


 そして、我が実の兄貴は。

 仕事の公式アカウントを使ってまで、わざわざノリノリでネカマをやっていたのかよ。

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