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夫よ!殺しに行くから待ってろよ!~VRゲーム内にて夫をキルしに行く話~  作者:


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第2話 午前6時の誤算

今日は土曜日。

 カレンダーのその日付には、一ヶ月前から真っ赤な二重丸が書き込まれていた。

 待ちに待った、本格VRMMORPG『エイドス』の配信当日である。


事前情報の通り、アプリの自動インストールは朝の8時から開始される。けれど、実際にサーバーの門が開かれ、プレイヤーがその大地に降り立てるのは正午の12時からだ。

 だから本来なら、昨夜の分を取り返して昼前まで泥のように眠っていても、何の問題もなかった。


……なかったのだが。


昨夜、というより、もはや朝方と言うべき時間まで、私たちはいつものようにオンライン対戦ゲームで競い合っていた。5対5のチームに分かれて敵の拠点を壊し合う、世界的に人気のMOBA系タイトルだ。普段の生活リズムなら、昼過ぎまで爆睡していてもおかしくない。

 しかし今日は、細胞のひとつひとつが勝手に浮き足立っている。


楽しみすぎて、逆にいつもより早く布団に潜り込んでしまった結果、思いがけずパチリと意識が浮上した。


カーテンの隙間から、まだ頼りない朝の光が差し込んでいる。

 リビングのテレビをつけてみたところで、画面の向こうでは眠たいニュースが流れているだけで、今の自分のテンションに見合うような面白い番組なんてやっていない。

 暇を持て余した自分は、枕元に置いたスマホを引き寄せ、時刻を確認した。


午前6時。


「まさかこんなに早く起きるとは……」


昨夜の睡眠時間を考えれば、最短でも9時くらいまでは起き上がれないはずだった。

 それが予定より3時間も早く、しかも驚くほどスッキリ目覚めてしまうとは、まったくの誤算だった。


未知の冒険に対する緊張なのか、それとも身体が勝手に「祭り」を察知したのか。

 とにかく、どうしようもなく早く起きすぎてしまったのだ。


隣の布団で同じようにモゾモゾと動き出していた勇ちゃんが、寝癖のついた頭をかきながらニカッと笑って言った。


「これは、神様がいつものゲームをやれって言っとるんだな! ほら起動、起動!」


彼の中に、二度寝という選択肢は一ミリも存在していないらしい。


勇ちゃんは、まだ半分夢の中にいるような足取りで洗面所へ向かい、歯を磨き終えるや否やPCの電源を入れた。ファンが回り出す低い音が、静かなリビングに響く。

 自分も「やっぱりそうなるよね」と苦笑しながら、弾かれたように起き上がった。


まずは自分のPCの電源を入れ、デスクトップが立ち上がるのを待つ。

 世界中のプレイヤーとマッチングする待機画面に滑り込ませてから、自分も慌ててトイレや歯磨き、顔洗いを済ませた。鏡に映った自分の目は、寝不足のはずなのに期待で少しギラついている。


配信開始の12時までの、あまりに長すぎるカウントダウン。

 その時間つぶしとして、自分たちはいつも通り、マウスをクリックする音を響かせ、画面越しに叫んだり笑ったりしながら、愛すべき戦場へと没頭することになった。


「あー! 今の逃げられた!」「もう一回、次こそ勝つぞ!」

 そんな賑やかな声が、静かな朝のマンションに響いていく。


まだこの時は、数時間後に訪れる運命の瞬間が、これほど平和な朝送れなくする引き金になるとは、微塵も思っていなかった。

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