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夫よ!殺しに行くから待ってろよ!~VRゲーム内にて夫をキルしに行く話~  作者:


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第17話 チキンな自分の確認方法

 マップの確認を終え、自分は一度、目の前にあるザーザーと激しい音を立てる巨大な噴水へと視線を向けた。


 水面を鏡代わりにすれば、自分のアバターの顔くらい映るんじゃないか、と思いついたのだ。


 けれど、ちょうどゆうちゃんとの通話が終わったタイミングあたりから、噴水広場の周りにはプレイヤーやNPCらしき人影がどんどん多くなってきていた。


 この大勢の人が行き交う中、巨大な噴水の縁に一人でしゃがみ込み、水面をじっと覗き込んで自分の顔をチェックする……というのは、冷静に考えてめちゃくちゃ恥ずかしい。自撮り大好きな人みたいで、周りの視線が気になってしまう。


 「……うん、やっぱりやめよう。お店の窓ガラスとか探した方が絶対確実だしね」


 チキンな自分は早々に水面での確認を諦め、そそくさと噴水からとぼとぼと離れた。現在地である『ハチオウ』のマップを頼りに、まずは人通りの多そうな住宅街の方から、お店が並ぶ商店街エリアへ向かって、のんびりと歩いていく。


 道の両側には、異世界情緒あふれる同じような高さの家がずらりと並んでいた。

 温かみのある木造っぽい外見の家だったり、がっしりとしたアンティークな石造りっぽい家だったりと多少の違いはあるけれど、どこを見渡しても全体的に中世ヨーロッパ風のファンタジーっぽい街並みだ。


 石畳を踏みしめる感覚や、どこからか漂ってくる香ばしいパンのような匂い。こういう五感に響くリアルな光景を目の当たりにすると、本当にゲームの世界の中にいるんだなぁと、今更ながら少しずつ実感が湧いてくる。


 ……まぁ、今の自分にとっては、そんな感動よりも何百倍も大事な大問題があるんだけどね。


 そう、一刻も早く自分の本当のアバターの姿を確認することだ。


 そんなことを考えながら歩いている途中、ちょうど大人の目線の高さに、いい感じの大きさの窓がある家を見つけた。自分はしめたと思って、そそくさとその窓へと近づいてみたのだけれど……。


「ん? あれ……?」


 いざ窓ガラスの真ん前に立ってみても、期待していたようには自分の姿がちっとも画面に映らない。


 よく目を凝らしてガラスの表面を見てみると、なんだか全体的に細かく凸凹しているのだ。現実世界の普段の生活で見慣れている、あの平らで透明な最新の窓ガラスとは違って、向こう側の景色が少し波打って歪んで見えるタイプの、ちょっと古い製法のガラスのやつだ。


 諦めきれず、試しに限界までガラスに顔を近づけてみる。


 ……うん。

 見事にぼやけてるね。


 ガラスの表面にうっすらと反射した、なんとなく銀髪っぽい人影のような輪郭は見えるけれど、肝心の顔のパーツやつり目の二重、詳しい髪型なんてものはまったく判別がつかない。


「ダメだこりゃ」


 まるでコントのような見事な映らなさに、自分は早々とその場での確認するのを諦めた。


 ほかに自分の顔が鏡代わりに綺麗に映りそうな、いい感じの滑らかな窓はないかな~と、歩きながら周りの民家をキョロキョロと不審者のように探してみる。


 けれど、悲しいかな、どの家の窓を見てもさっき見た民家とまったく同じクオリティの窓ばかりだ。ガラスの表面が職人の手作り感満載に凸凹していて、光の反射がすこぶる弱い。


 ……ここにきて、なんだかもの凄く嫌な予感がしてきたぞ。


 いやいや、さすがに人がたくさん集まる商店街の建物まで、全部この仕様の窓ってことはないよね。


 お店なんだから、外から売り物の商品を綺麗に見せられるように、大きくて平らなショーウィンドウとかが絶対に設置してあるはずだよね。ほら、NPCの人たちがウインドウショッピングとかしやすいようにさ。


 たぶん。

 きっと。

 ……いや、何卒そうであってほしい。お願いします。


 内心で必死に神頼みをしながら、じわじわと募る不安を抱えつつも、自分は自然と歩く速度を少し早めて、お目当ての商店街の方へと言い知れぬ期待を胸に突き進んでいくのでありました。

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