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夫よ!殺しに行くから待ってろよ!~VRゲーム内にて夫をキルしに行く話~  作者:


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第14話 同じ噴水じゃなかった

「それって、ゆうがおる場所はミナクマじゃないってことだよな。そんなテーマパークの三倍もあるような大きな噴水、この街にはないし。あー……サーバーの負荷を分散するためかなんかで、プレイヤーの初期地点は沢山あるとは事前に聞いとったけど、まさかそこから分かれるとはな……」


 通信の向こうで、腕組みでもしながら考え込み始めたらしいゆうちゃんが、ぶつぶつとそんなことを呟いた。


 ……ん?

 今、絶対に聞き逃せない不穏な単語が耳に飛び込んできたぞ。


 自分は思考の海に沈みかけていたゆうちゃんの言葉を、思わず強引に遮るようにして問い詰めた。


 「ちょっと待って。ミナクマってなに?」


「……はっ?」


 受話器の向こうから、素っ頓狂な声が返ってくる。


 通話エフェクトである青い光の玉しか見えないので、当然ゆうちゃんの顔は直接見えない。けれど、長年一緒にいるだけあって、声のトーンだけで今どれほど目を見開いて唖然とした表情をしているのかが、手に取るようになんとなく伝わってくる。


 まあ、そんな反応になるのも無理はないよね。ゲームを始めるにあたって、超基本中の基本であるはずの前提知識すら、自分にはすっぽりと抜け落ちているのだから。


 しかし、チュートリアルをまともに受けさせてもらえなかった自分に、そんな専門用語が分かるはずもない。


 「ミナクマは、俺が今おるこの初期の街の名前。……まさかとは思うけど、ゆうは今、なんて名前の街におるんだ?」


「街の名前……? え?」


 思わず、間の抜けた声が出てしまった。言われてみれば、ここがどこの街なんて意識したこともなかったし、そんな情報どこを見れば書いてあるのかすら知らない。上空を見上げても、視界に飛び込んでくるのは激しい水の壁と、どこまでも青い空だけだ。


 完全に混乱して思考がフリーズしかけた自分は、しぶしぶといった様子で、とりあえず今できる唯一の解決策を口にした。


「……ごめん、ちょっと自分じゃよく分かんないから、その辺を歩いてるNPCに聞いてくるね。分かったらまた後でかけ直すから」


 そう言って一度通話を切ろうとした瞬間、ゆうちゃんが焦ったようにすぐさま声を返してきた。


「待て待て、わざわざ他人に聞く必要なんてないど!? というかゆう、チュートリアルのサポート精霊の話、本当に何一つまともに聞いとらんかったのか?」


 ……まじかよ。

 街の名前を確かめる方法なんて、わざわざ誰かに尋ねる以外にも、システム的にいくらでもやりようがあったのか。


「あぁ……チュートリアルね……」


 自分の不甲斐なさと、あの生意気な精霊の顔が脳裏をよぎり、声が一段と小さくなる。じわりと首筋に嫌な汗がにじむのを感じながら、自分は視線を泳がせて気まずそうに答えた。


 「……その、チュートリアルが途中でスキップされちゃったから、何も分かんないんだなー」


「スキップ!? あれって強制参加ど?」


 あぁ、案の定めちゃくちゃ驚いてる。スピーカーが割れんばかりの勢いだ。

 ゆうちゃんの反応を見る限り、どうやらこのゲーム、最初のチュートリアルは絶対に飛ばせない仕様になっているらしい。


「うーん……担当の精霊との相性が悪かったのかも」


 自分としては、クジ運の悪さでとんでもないハズレ枠でも引いちゃったのかな、というニュアンスのつもりでぼやいたのだけれど。


「ああ、ゆう持っとるもんな」


 通信の向こうで、ゆうちゃんが妙に深く納得したような声を漏らした。


 ゆうちゃんの言う持っとるは、普段ならトラブルを引き寄せるという意味じゃない。自分はスマホゲームとかでも、家族の中で一番ガチャのSSR入手率が高い、変なところで規格外のクジ運を発揮する。


「いや、持ってるって言っても、今回は完全にハズレじゃん」


「ハズレというか、逆に『超低確率のレア演出』を引き当ててバグらせとるんじゃないや」


 そんなところで謎の豪運を発揮しなくていい。普通にチュートリアルを受けさせてほしかった。


 とはいえ、あの生意気だったフィーを思い浮かべると、あながち間違ってもいない……というか、むしろレア枠だとしたら余計にタチが悪い気がして、少し複雑な気分になる。


 その後、ようやく驚きと納得から立ち直ったゆうちゃんに、視界の隅にあるメニュー画面の開き方や、現在地の街の名前を表示させる方法、そしてフルダイブ環境下での基本的なシステム操作の仕方を、一から丁寧に教えてもらう羽目になったのであった。

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