表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/61

王都が動き出しました

重厚な扉が閉じられる。外界の音が完全に断たれた。円卓を囲むのは、この国の中枢にいる者たち。沈黙は重かった。


やがて、一人の男が苛立ちを隠さず口を開く。


「――納得がいかん」


低い声が室内に落ちた。


「第二騎士団長、レオニード・ヴァルカス公爵……あの男が、厄災を抑えた少女を独占しただと?」


拳が机を叩く。ざわり、と空気が揺れる。


別の男が静かに続けた。


「……しかも、その少女。ヴァルグレイス侯爵家の血筋。聖女の“姉”だという話だ」


一瞬、空気が凍る。


「……馬鹿な」「聖女が二人いるなど――」


「いや、違う」


首を振る。


「“選ばれなかった方”だ」


その言葉に、誰もが口を閉ざした。


だが、それ以上に問題は別にあった。


「……執事だ」


ぽつりと誰かが呟く。


「その少女に仕える男が――光魔法を使うという」


静寂。


次の瞬間。


「ありえん!」


椅子が軋む。


「光魔法は王と聖女のみに許された力だぞ!? なぜ執事などという立場の者が持っている!」


「即刻、王都へ――」


言いかけて、言葉が止まる。


一人の男が冷静に口を挟んだからだ。


「……それが、出来んのだ」


全員の視線が集まる。


「その男は――奴隷契約下にある」


空気が完全に止まった。


「……奴隷、だと?」


「そうだ」


淡々と事実だけが並べられる。


「ノエル・ヴァルグレイスが、父親に頼んで購入してもらったらしい」


「つまり」


ゆっくりと、言葉が落ちる。


「所有権は、あの少女にある」


誰も、すぐには言葉を発せなかった。


「……ふざけているのか」


誰かが吐き捨てるように言う。


「国の至宝になり得る力を――一個人が握っているだと?」


「ならば、その少女ごと管理すべきだ」


「当然だ」


頷きが連鎖する。


「で、そのノエル・ヴァルグレイスは今どこにいる」


短く問う。


返答は、すぐにあった。


「――数日前、ヴァルカス公爵邸へ入ったとのこと」


その瞬間、全員の顔色が変わった。


「……完全に囲われた、か」


誰かが低く呟く。


「レオニードめ……最初からそのつもりで……」


一拍。


別の男が、苦々しく口を開く。


「――何度も手は出した」


視線が揺れる。


「接触も、引き抜きも、圧もかけた」


低く、押し殺すように。


「だが――そのすべてを弾かれている」


静寂。


誰も、軽々しく言葉を発せない。


「……第二騎士団長は伊達ではない、ということか」


ぽつりと漏れた声に、否定はなかった。


沈黙が落ちる。だがその沈黙は、嵐の前のものだった。


「――動くぞ」


誰かが言った。


「これ以上、好きにはさせん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ