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十五年後、伝説になっていました
――それから、十五年。
この村は大きく変わった。荒れ果てていた土地は豊かな畑となり、今では“じゃがいもの名産地”として名を知られている。
畑の中を、土の巨人がゆっくりと歩いていた。大きな手で土を耕し、崩れた畝を整え、まるで当たり前のように働いている。
それを見て、子供たちが笑う。
「ゴーレムだー!」
「今日もお仕事してる!」
誰も不思議には思わない。それが、この村の日常だからだ。
守られた命が、ここに根付いている。
だが――そのすべてを生み出したはずの二人の姿は、どこにもなかった。
「ねぇ知ってる?」
子供の一人が声を弾ませる。
「王都にね、すっごい人たちがいるんだって!」
「どんな人ー?」
「えっとね――」
「どんな怪我でも、ぜーんぶ治しちゃう人と!」
「一人でね、すっごいの倒しちゃう人!」
畑の端で、鍬を持った青年が手を止めた。
トアだった。
少しだけ背が伸び、あどけなさは薄れたが、その目は昔と変わらない。
「……ああ」
小さく、笑う。
空を見上げる。
「――あいつらのことか」
その声は、どこか確信めいていた。
その視線の先、ゴーレムが静かに空を見上げていた。まるで――帰りを、待つように。
風が吹く。畑の土がやわらかく揺れた。
――その物語は、まだ終わっていない。




