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戦いが終わりました
夜が明ける。淡い光が空の端から滲み始め、血と土と涙にまみれた戦場を静かに照らしていく。
ルークはノエルを抱いたまま動かなかった。腕の中の温もりを確かめるように、何度も、何度もその名を呼ぶ。
「……ノエル」
ノエルは微かに笑った。その表情はひどく穏やかで、まるですべてを守りきった者の顔だった。
朝日が二人を包む。金色の光がゆっくりと薄れていく。奇跡は終わった。だが、確かにそこに残っている。
命と。想いと。約束が。
レオニードは静かに剣を下ろし、深く息を吐く。
「……勝利だ」
誰に聞かせるでもなく、だが確かにそう告げた。
騎士たちは言葉を失ったまま、ただその光景を見ていた。災厄を打ち倒したのは騎士団ではない。たった一人の少女と、その少女を諦めなかった少年だった。
やがて、誰かが剣を地面に突き立てる。
――ガン。
それに続くように、一人、また一人と、剣が大地に突き立てられていく。それは敬意だった。命を賭けて守り抜いた者への、騎士としての最大の礼。
朝日が昇る。世界が色を取り戻していく。
その中心で、ルークはノエルを抱きしめたまま離さなかった。二度と失わないように、強く。
――それは、一つの戦いの終わりであり、新たな“物語”の始まりだった。




